トラヴィス・ライスが語る、The Fourth Phase誕生秘話(パート1)

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.96
Travis Rice © Jason Halayko/Red Bull Content Pool
By DAISUKE NOGAMI/Translated by KENJI KATO(Scratch Paper Works)

トラヴィス・ライスが日本にやって来る。最後に会ったのが2011年の秋だから、およそ5年前。アクションスポーツ映画の代表作『The Art of Flight』のプレミア上映会のときだった。スノーボードという枠組みを越えた超大作は世界中で話題を呼び、誰もが次回作を待ち焦がれていたに違いない。毎年のように「今年は出るのか」と噂になり、「白馬で撮影しているらしい」という話を耳にするものの完全シャットアウトのため皆目見当がつかない。トラヴィスのSNSをチェックするも、具体性に欠け核心には触れられていない。むしろ、自らの足跡を掻き消しているようにさえ感じる。

しかし昨年11月、ついにそのベールが脱がされた。最新作のティザー映像が公開されたのだ。タイトルは『The Fourth Phase』。山に降り積もった雪が解けて水となり、川を流れて海へ還る。そして、海水が蒸発して雲となり、再び雪を降らす。この自然の循環プロセスに乗る───、壮大なスケール感だということは理解できたはずだ。

前作同様に映像プロダクションはBrain FarmRed Bull Media Houseよりリリースされ、出演ライダーはトラヴィス、マーク・ランドビック、エリック・ジャクソン、パット・ムーア、ブライアン・イグチ、キャム・フィッツパトリック、ボード・メリル、ミッケル・バング、そして、我らが美谷島 慎。4K解像度の映像で撮影されており、2016年10月2日(日)にグローバルプレミアが行われるという告知でティザー映像は締められていた。

毎日のようにネットから情報を押しつけられている現代人にとって、この4年は長すぎたはずだが、その時間を取り返して余るほど、期待感は一気に高まった。およそ9ヶ月後、今年8月に第2弾となる予告編が公開されると、そこでは『The Fourth Phase』のテーマについて細かく説明されていた。

トラヴィスのホームマウンテンである、米ワイオミング州ジャクソンホールのバックカントリーを大先輩のブライアン・イグチと攻めていたとき、彼は地球が自分をスノーボーダーとして存在させてくれる理由を見つけるために、先述した水の循環を自ら追いかける全長16,000マイル(約25,700km)の太平洋沿岸を巡るトリップを思いついたというのだ。

ここまでのストーリーは、トラヴィスに造詣が深いスノーボーダーであれば周知のことだろう。

そして、さる9月15日。関係者対象のプレミア上映会のために来日していたトラヴィスと、約5年ぶりに再会した。僕のことを覚えてくれていたようで、新たにメディアを立ち上げた説明を含めて挨拶を済ませると、早速インタビューに移った。

 

━━4年以上の歳月を費やした最新作『The Fourth Phase』だけど、今回のプロジェクトはこれまでとどう違い、どんなやりがいを感じた?

 

「今の時代、メディアはまさに“使い捨て”と言ってもいいだろう。今日存在しても、明日には消えている。オレ自身も、このペースが速すぎるメディアの消費者のひとりだよ。ウェビソード、インスタグラム、ソーシャルネットワーク……何でもそうさ。でも、何も間違っていることなんてない。正しく扱うことができれば、それらは実に効果的なコミュニケーションの方法でもあるんだ。

でも、オレたちの作品に関しては、もっと深く自分たちを浸らせる必要があった。世界中の山々に冬と雪をもたらせてくれる水文(地球上の水循環)システムに、オレ自身もどっぷりと浸る必要があったんだ。自称・水文学者のオレとしては(笑)、水とエネルギーがサイクルの中でどう繋がっているのかを、もっとよく知りたかったからね。ある意味、オレたちはこれらすべてと繋がっていると言ってもいいかもしれない。水が循環するという人生は、オレたちの多くが共通して持っているものなんだ。

15年前の話になるんだけど、子供の頃からずっと背中を見てきたブライアン・イグチとの会話の中で印象的なポエムがあったんだ。それは、“This process we follow, and this cycle we ride”(オレたちが追いかけるこのプロセス。オレたちが滑るこのサイクル)という言葉。この言葉がずっと頭の中に引っかかってたんだと思う。

前2作(2008年リリース『That’s It, That’s All』と2011年リリース『The Art of Flight』)を成功させると、後にThe Fourth Phaseとなる映画の制作にすぐにでも取りかかりたかったんだ。作品を観てもらえれば、オレたちがどれほどの努力をこの作品に注ぎ込んだのかがわかると思う。1年という期間では短すぎると誰もが知っていたし、2年の歳月をかけてもギリギリだった。だから十分な時間をかけて、この作品を仕上げたんだ。新しいことに挑戦する必要があったし、自分たちもそれを望んでいた。ある意味、実験でもあったよ。

だから、キミの質問の答えとしては、そうだな……。

今日ここにキミがいることは、オレたちが好きでしょうがないというプロセスの一部だ。今夜、ここ東京でプレミアを開催する。オレたちにとっては本当に特別なことだし、作品の完成を祝うには最高の舞台だ。

じゃあ、なぜ作品を作り続けるのか? プレミアのためじゃない。そこで観客に見せるためだけでもない。ただ作品を作るうえでのひとつのアクションでしかないんだよ。それが、モチベーションってやつさ」

 

重厚すぎる回答に、質問を考えた際の自分を恥じた。想定を遥かに超える答えに固唾をのみながらも『The Fourth Phase』の中身について切り込むべく、質問を続けた。

その模様は、次回の当コラムVol.97でお届けする。

 


野上大介(Daisuke Nogami)
スノーボード・ジャーナリスト。1974年生まれ。千葉県松戸市出身。スノーボード歴24年。専修大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社でスノーボード・エディターとしての道を歩み出し、2004年から世界最大手スノーボード専門誌の日本版「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に従事。編集長として10年3ヶ月に渡り職務を遂行し、2016年3月に退社。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員を務める。また、X GAMESのほか各種スノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。2016年8月18日、スノーボードメディア「BACKSIDE」をローンチ。フリースタイルスノーボーディングを再構築することで、シーンのさらなる活性化を目指す。 

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