フリーライディングとはスノーボードのすべて

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.101
Nicolas Muller © Scott Serfas/Red Bull Content Pool
By DAISUKE NOGAMI

プロスノーボーダーたちは、ターンの一つひとつにとてもこだわりを持っている。滑る地形や雪質によってターンを変えているほどだ。

僕たちが楽しんでいるスノーボードはフリースタイル。そう認識している人は多いだろう。この言葉を耳にすると、トリックなどのアクションが重視されるように思われがちだが、すべてはターンの延長線上にあるということを忘れてはならない。

シーズンを目前に控えた今だからこそ、改めて考えてみたい。そこで、美しいラインを刻みながら縦横無尽にバックカントリーを駆け巡り、あらゆる地形をヒットしながらトリックを織り交ぜるフリーライディングの達人、ニコラス・ミューラーが以前に語ってくれた話をお届けしたい。

彼はフリーライディングにルールはないという持論を展開しており、思い描いたように滑ることでルールは自分たちで作るものだと考えている。自分自身の存在をしっかり感じながら、仲間たちと一緒に滑り、ボードと一体化させるような気持ちで、自分のスタイルとスノーボードを愛すること。こうした気持ちが必要になると、精神的な面からもフリーライディングの在り方を考察している。

この“ボードと一体化させる”というのは技術的な話になるが、いわゆる“板に乗れている”と表現されるライディングを指すのだろう。これについて、ニコラスは次のように語っていた。

「ほとんどの動きを上半身がリードするから、いつでも柔軟に動ける状態をキープしている。ライディング中、ボディバランスが自然にとれている場合とそうじゃないときがあると思うけど、もし後者だとしたらもっと滑り込むべき。自分のライディングをイメージしたとき、頭の中で視覚化した動きに自信を持てるかどうかが大事なんだ」

当然だが、トリックうんぬんの前に、滑り込むことが重要だ。シーズン序盤であればなおさらだが、フリースタイルスノーボーディングを楽しむためには、その下準備が必要となる。

「フリーライディングしながらトリックをマスターしようと考えるんじゃなくて、フリーライディングは滑り自体の質を高めるもの。トリックを覚えるのは二の次で、時間があるときに練習すればいい。まずは、意のままにボードを操れるようにすることが先決なんだ」

トリック単体の動きを習得するために躍起となっているスノーボーダーが多いのかもしれないが、前述したように、すべてはターンの延長線上にある。それは、キッカーでのスピンだろうが、自然地形へヒットするときだろうが同じこと。アプローチラインを活かしてトリックを繰り出すのだから、ターンの精度を高めることが、トリックを習得する近道とも言い換えられる。

その結果として、思い描いたように滑れるようになるのだから。ニコラスが言っていた「ルールは自分で作るもの」というフリーライディング理論は、自在にボードをコントロールできなければ不可能であり、本当の自由を手に入れるためには、やはり基本となるターンが大切というわけだ。

そしてニコラスは、フリーライディングの醍醐味についてこのように語ってくれた。この言葉を持って、本コラムの結びとさせていただく。

「オレにとってのフリーライディングとはスノーボードのすべて。魂が感じるまま自由に滑ることができる、最高の遊びなんだよ」

 

野上大介(Daisuke Nogami)
スノーボード・ジャーナリスト。1974年生まれ。千葉県松戸市出身。スノーボード歴24年。専修大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社でスノーボード・エディターとしての道を歩み出し、2004年から世界最大手スノーボード専門誌の日本版「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に従事。編集長として10年3ヶ月に渡り職務を遂行し、2016年3月に退社。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員を務める。また、X GAMESのほか各種スノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。2016年8月18日、スノーボードメディア「BACKSIDE」をローンチ。フリースタイルスノーボーディングを再構築することで、シーンのさらなる活性化を目指す。

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