【RED BULL YUKI ITA 2017】 自分で作った板で雪山とダイレクトに繋がる

バインディングの無い一枚の板で雪山を滑走する「雪板」。この新しいウインタースポーツのカルチャーを3日間通して体感するセッションイベントが、今年も行われた。
By Die Go (DIGGIN' MAGAZINE)
Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

会場となるニセコ中央倉庫へ踏み入ると、壁一面に並ぶあらゆる形状の雪板たちに圧倒された。長さやシェイプ、ロッカーは板それぞれで、チャンネル(溝)の入れ方などボトムの形状に至ってはひとつとして同じものが無い。これでもかと個性を主張するように騒然と並ぶ姿に、誰もが立ち止まった。

その中央には長さ160センチ、幅30センチのブランクボードが30本以上も重ねて立てかけてある。3日間で相棒となり、おそらく今後もお世話になるであろう「自分の雪板」の原石。最初の2日間は、このブランクをカットして削って、自分好みの色に磨き上げる。そして最終日に「自分の雪板」でパウダーを滑る。

昨年に続き2度目の開催となるRED BULL YUKI ITAは、2月後半の3日間、30名の参加者と5名の雪板ファウンダーのみという、とっても贅沢な空間でおこなわれた。

雪板はブランクボードと呼ばれる集合材や合板をカットしただけの至極シンプルな乗りもの。パウダーにフォーカスして作られることが多い。スノーボードのようでもあるが、バインディングが付いていないことが決定的な違いだ。おおかた“滑り手 = 作り手”のため、その人の求めるライディングスタイルや、ローカルエリアの地形・雪に適した板が出来上がる。作り手が増えればそれだけ多様な板が生まれるわけだ。

会場の壁に並んだ様々な雪板は、今回のイベントに集ったファウンダーたちのモノ。彼らは雪板を作るスペシャリストで、同時に熟達した滑り手。最初に雪板を作り、これに「ゆきいた」と命名したプロスノーボーダーの五明 淳も参加していた。「MAKE雪板」を主宰する彼は、2005年ごろから制作を始めたパイオニアで、今回のイベント用のブランクボードも彼のハンドメイド。それを手にした参加者たちはみな、一貫して「乗りやすそうな板」という感想を抱いていた。

Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

同じ長野から参加した松浦 将(たすく)は、無垢の木から1本の雪板を削り出す独特な手法をとる。手間のかかる制作のため、他のファウンダーとは違い自分の乗る板だけを制作し続けている。ローカルエリアである白馬の斜度にフィットする、ハイスピードなガンボードが多いのも特徴だ。

岩手・八幡平エリアをベースに活動する「FANTASTICK」の玉川千善と「伽羅スノートイ」の中村 雄は短めのボードが多い。スティープな斜面への対応でもあり、同じ板でパウダーから春雪まで楽しめむために。玉川が作りあげた“下駄”と呼ばれるボトム形状はエッジの役割も果たすため、柔らかいグルーミングコースでも楽しめるようだ。

青森・八戸市にあるショップ「SCRAMBLE U.S.A」のオーナー、堀内ケンの作る板はとても独特。ソフトフレックスのフルロッカーで前を踏めばフラットになる仕様。だから後ろ足下のフィンはルースにもグリップにもコントロールできる。サーフボードやスケートボード、スノーボードまでをDIYする氏の発想と経験ならではの形状だ。

上記5名のファウンダーに加え、今回はもうひとりのゲストが参加した。ユタ州で「GRASSROOTS POWDERSURFING」を主宰するジェレミー・ジェンセン。彼のボードは雪板と少々異なるが、バインディングが無いのは同じ。「ストラップレス」「バインディングレス」「フリーフット」など、今のところ決まった名称はないが、現在、世界中で熱を帯びているのは確かだ。

Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

ちなみに、今回のイベント・ハイライトのひとつはこの豪華なファウンダー陣の集いにある。それぞれフィーリングも乗り方すらも違う、個性に富んだ板を作る者同士の交差は、過去に無かったミーティングだから。

いっぽうで、参加者の大半がプロのスノーボーダー、サーファー、スキーヤーであることも面白い。滑り手のスペシャリストがこれだけ集まれば、ぶっ飛んだ発想のカタチも生まれかねない。これは面白い化学反応が起こるんじゃないかな、とイベント前から期待していた。

Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool
Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool


アメイジングな3日間の話に戻そう。

ファウンダーたちのアドバイスのもと自分の雪板を作り上げた参加者は、最終日のライディングセッションのフィールドであるニセコワイスに集合した。早速パーキング裏の地形でセッションが始まった。別の意味で沸かせたのは、雪板にスノースケートのデッキを打ち付ける、という遊び心を出してしまったダウンチル天海 洋だった。デッキと繋がる一点にプレッシャーが集中するから脆くなるのは想定内。でも始まる前に折れるのは想定外だったようで、悔しがっていた。雪板はあくまでも木、ってことを改めて知らせる天海案件となった。

イベントのコースは、ワイスのキャットサービスで向かう貸し切りのノートラック。珍しく雪が少ないとローカルから聞いていたが、ちょうど板作りの2日間に降雪、最終日に天候が落ち着くという奇跡的な巡り合わせ。素晴らしいイベントには素晴らしいコンディションが付きものだ。パウダーを約束されたパラダイスへ向け、足早にキャットへと乗り込んだ。

自分の板を雪の上に浮かべ、乗り出してみる。いったいどんな挙動をするのか? 乗り物はこの瞬間がたまらない。とくに雪板は、作りながらそれをイメージしているだけに答え合わせへ向かうような側面もある。あれこれと頭の中を渦巻く思考だったが、スピードに乗った浮遊感でターンした頃にはシャットダウンしていた。

驚くほど雪の深さと質感が足下から身体全体へ伝わってくる。スノーボードではキャッチしきれない繊細な情報が板を通して届くたび、自分が雪山とダイレクトに繋がっているのだと実感した。どうしようもなく原始的な高揚感からニヤつくことしかできない。他の参加者もみな同様。1本のランを終えても、キャットにピックされるまでハイクで滑り続ける人しかいない。沢地形に吸い込まれたり、大きなバンクへ突っ込だり、小ぶりなピローを飛んでみたりと、いつもの調子でセッションを繰り返していると、ファウンダー陣からひとつの提案があった。

「最後の1本はみんなで同時にドロップしませんか!」

……3日間の締めくくりとして最高じゃないか。

Red Bull Yuki-Ita 2017
© Jason Halayko/Red Bull Content Pool

「それではラストラン、みんなで楽しみましょう! ドローップ!」

この日いちばんワイドでロングな斜面へ一斉に飛び出すと、あの高揚感に抱かれた大勢の雪板乗りが、視界の前にも横にも後ろにもずっと見えている。何とも形容しがたい、温かくて素晴らしい空間の中にいたことは間違いない。永遠に続くかのような幸せな瞬間を共有したファウンダーと参加者は、滑り終えると同時に、穏やかな笑顔で全員とハイファイブを交わした。

RED BULL YUKI ITAはセッションイベントだ。けれどこれは、まだまだ小さいカルチャーにとって重要なコミュニティ・ミーティングだった。各地に点在していた雪板への熱量が、あのラストランを終えた時、確かに繋がっていくのを感じたんだ。

 

【Red Bull Yuki-Ita 2017 Photoギャラリー】

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