アート&デザイン

まだまだ眠れる獅子?シャキーン、もしもし!の森翔太さんとは何者?

今回ご紹介するのは、YouTubeに公開された動画「仕込みiPhone」が280万回再生されたという凄い記録をおもちの森翔太さんです。
Written by 宮越 裕生
読み終わるまで:7分公開日:
森翔太さん

森翔太さん

© [unknown]

YouTubeなどで既にご存知の方もいらっしゃると思いますが「一体普段は何をしている人なの?」と思っている方も多いと思います。
今日は、そんな森さんのさまざまな顔をご紹介したいと思います。

その1 俳優 2010~

「悪魔のしるし」俳優時代

「悪魔のしるし」俳優時代

© [unknown]

1983年、鳥取県生まれの森さんは、静岡文化芸術大学の芸術文化学科を卒業後、商社の営業マン、舞台制作会社「precog」アルバイトを経て、パフォーマンス集団「悪魔のしるし」の正式メンバーとして活動をはじめました。同集団では、主に俳優として活躍。2012年に脱退していますが、その後、俳優、映像監督、演出など、さまざまな方面で活躍することになる森さんのルーツを感じる前身です。

その2「仕込みiPhone」制作者 2010~

まだ「悪魔のしるし」に所属していた頃、森さんは映画「タクシードライバー」に出てくる「スリーブガン」にヒントを得て仕込みiPhoneを制作しました。その後しばらくはそのままになっていたそうですが、ある日知り合いが開催しているという「 iimio杯」(2010)に応募するために仕込みiPhoneの動画を制作し、見事「iimio杯 特別賞」を受賞しました。その動画が翌年、GIZMODEに紹介されてブレイクすることに。「iimio杯」とは「とにかくグッとくる動画やら画像」を募り面白さを競うコンテストだそうですが、今ふりかえると森さんブレイクの前夜ともいうべき出来事。仕込みiPhoneが世に出るきっかけになった出来事だと思うと、凄いコンテストです。現在仕込みiPhoneは4号機まで制作されており、森さんはアメリカ発のテクノロジー系DIY工作フェスティバル「Maker Faire」にも出展。仕込みiPhone Makerとしても知られるようになりました。

その3 ミュージックビデオ監督 2013~

2013年、GIZMODEによって「仕込みiPhone」3号機の映像がふたたびブレイク。そんな森さんに、 ボストークの伊藤ガビンさんの抜擢によってミュージックビデオ制作のオファーが来ました。アーティストは三浦康嗣さん、村田シゲさん、いとうせいこうさんの3名からなるユニット□□□(クチロロ)。ミュージックビデオをはじめて手掛けたという森さんは、監督、主演、撮影、編集を一人で担当。いつもの森ワールドに □□□の音楽が合わさり、ちょっと切ない恋愛ムービーに仕上がりました。

その4 プロモーションムービー監督 2013~

つづいて森さんは、福岡・佐賀県境にある「脊振(せふり)山地」が建設候補地となっている素粒子実験施設「ILC」のプロモーションムービー「 脊振ILCハイスクール!」の制作に参加。チームラボ企画・制作、編集者・デザイナーの古屋蔵人さんとの共同監督によって、超難解な理系話を「陽電子」と「電子」に扮した女子高生の演技や、森さんのラップ、アニメーションで説明するムービーをつくりました。この動画には作曲家のとくさしけんごさんや、アニメーターのらっパルさんなどさまざまなクリエイターが参加しており、撮影されたカット数は200カットにものぼるそう。さすがのチームプレイが生きているムービーです。
森さん直筆の「脊振ILCハイスクール!」絵コンテ

森さん直筆の「脊振ILCハイスクール!」絵コンテ

© [unknown]

このほか、最近は環ROYさんのミュージックビデオ「 ワンダフル」やGAINAX企画による「 SF百景」に参加したり、CMにも出演したりしています。
今回はそんな多忙な森さんにショートインタビューをお願いしました。
最近の森さんの思いのたけをお届けします。
- 多方面で活動されている森さんですが「これからはここに力を入れていきたい!」というところなどありましたら教えてください。
森 ありがとうございます。僕自身、24歳でサラリーマンを辞め、職のないまま上京し、うだつのあがらない生活を続け続けた結果、「僕はこれをやりたいんだ!」という明確な思いよりも、「目の前に降りてきたことは、何でもやる!」みたいな、頂いたお話や自分が想像してなかったご依頼に、楽しさやモチベーションを見出してる部分があります。
前置きが長くなってしまいましたし、この前置きはあまり関係ないのですが、これからは、ちゃんとコミュニケーションに力を入れ、色んな方と接していきたい(出会い系的な意味ではなくて、仕事的な意味です)。そのためには、ちゃんと相手の目をみて会話しないといけない!と強く思っています。
周囲を巻き込んでの仕事と、まったく社会から孤立したものづくりの両立を、今以上にしていきたいです。巻き込み型にはディレクションの部分や、トータル的な部分での視野が必要ではあるのですが、意図しないものが生まれるのがすごく面白いなと最近感じています。
工作的な部分では、自分はまったく不器用ではありますが、いかに大失敗できるかという部分を忘れずにいきたいです。仕込みiPhoneの5号機も、早く作りたいです。先日、ジャンプ傘の、傘を出す反動を応用して仕込みiPhoneのとびだし部分を作ったのですが、ほぼ凶器になってしまい頓挫しました。他にもいろいろ試したいです。
そしてプライベートでは、恋愛に力を入れたいです。結婚したい!
- 最近はまっていらっしゃることは何ですか?
森 一時期やめてはいたのですが、最近また人の会話やお話をメモすることを再開しました。それは仕事的な意味ではなく、電車で知らない人が会話している内容だったり、身近な人が話している内容だったりします。自分は2012年くらいから、テレビや本や映画や新聞などを一切見なくなってしまい、その反動がきたのか、日常で人が話す情報が唯一の手がかりだったりします。
あ!そしてその流れからだと思うのですが、Twitterを見るのが、日々の楽しみです。まったく知らない人もよく分からずフォローしたりしているのですが、そういう方が「ねみー」「テレビおもしれー」とかつぶやいた後に、どなたかの高尚な人生訓のようなツイートが流れたりして、またすぐ後に「学校だりー」とか流れてきたりして、全部をひっくるめたTLの流れに感動します。
- 今進行中のプロジェクトや、今後の予定について教えてください。
森 あくまで予定なのですが、MV、テレビ制作、長編監督、ガジェットのコンテンツサイト立ち上げ、仕込みiPhoneワークショップなどのお話をいただいています。またそのつど・・、という感じではありますが、どうか冷たい目で暖かく見守っていただけたら幸いと思います・・
Maker Faire 2013にて

Maker Faire 2013にて

© [unknown]

以上、森さんからのコメントでした。
テレビよりも街の人の会話やTwitterが気になる、というのは確かに共感してしまうところ。
そして、そんな森さんがつくるコンテンツはどうしても気になってしまいます。
今後も縦横無尽な活動が楽しみです。森さん、ご協力ありがとうございました。
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森翔太

1983年、鳥取県生まれ。俳優、パフォーマー、映像監督。YouTubeに公開された動画「仕込みiPhone」のヒットにより、国内外のメディアで取り上げられる。近作に映像監督を手掛けた□□□のミュージックビデオ「ふたりは恋人」、素粒子実験施設「ILC」のプロモーションムービー「脊振ILCハイスクール!」など。
twitter: @morisatoh
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宮越 裕生(Yu Miyakoshi)
ライター。執筆範囲はメディアアート、ファインアート、写真、旅、猫。大学時代に絵画を勉強し、近ごろ境界領域の表現可能性、メディアアートと写真に出会いまた新たにアートに目覚める。CBCNET、HITSPAPER、greenzなどのHPを中心に執筆しています。今ここを伝える文体を研究中。