ロサンゼルス・ギャラクシー時代のベッカム。ビジネス面でもアメリカに目を向けていた
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サッカー

デイビッド・ベッカム もう一つの挑戦のはじまり

2013年にフットボーラーとしての人生に幕を下ろしたデイビッド・ベッカム。しかしそれは同時に、新たな挑戦の始まりでもあった。イングランドのスーパースターが見ていたものは……。
Written by 斉藤健仁
読み終わるまで:5分公開日:
ビジネスマンとしての挑戦を始めたベッカム。スーツ姿の露出も目立つようになった

ビジネスマンとしての挑戦を始めたベッカム。スーツ姿の露出も目立つようになった

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初めてアメリカへ渡った欧州サッカーのスーパースター
デイビッド・ベッカム。正確な右足から「インチパーフェクト」と呼ばれたイングランドを代表するMF。ピッチ内だけなく、ピッチ外でも、そのハリウッドスターばりの風貌から世界中のファンを魅了し続けた。
イングランド代表では2002年の日韓ワールドカップ出場を決めたフリーキックが伝説となり、マンチェスター・ユナイテッドでは1998-99シーズン、プレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグのトレブル(3冠)も達成した希代の名選手だった。そんなベッカムは2013年にサッカー選手としてのキャリアを終え、晩年に活躍したアメリカに留まっている。
少し話を戻そう。ベッカムはイングランドで活躍した後、スペインのレアル・マドリードへ移籍し、さらに2007年には、まだ盛り上がりに欠けていたMLS(メジャーリーグサッカー)のロサンゼルス・ギャラクシーへと移籍を決意、サッカーファンを驚かせた。当時のMLSは今ほど人気がなく、レベルもさほど高くなかったからだ。ただ、彼が移籍したことが、元フランス代表FWティエリ・アンリ、元イタリア代表DFアレッサンドロ・ネスタ、さらに現在では元イングランド代表MFスティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、元スペイン代表ダビド・ビジャなど大物選手が加入するきっかけを作ったといっても過言ではない。
ロサンゼルス・ギャラクシー時代のベッカム。ビジネス面でもアメリカに目を向けていた

ロサンゼルス・ギャラクシー時代のベッカム。ビジネス面でもアメリカに目を向けていた

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親善大使となったベッカム
どうして人気絶頂の中、かつて「サッカーにおける最後のフロンティア」と称されていたアメリカのリーグにベッカムは移籍したのか。自身の自伝「ディビッド・ベッカム(日之出出版)」で、彼は「今までとは、まったく違うレベルでの挑戦だった。サッカーをみんなが注目するような人気のあるスポーツにする役目があった。親善大使でもあった」と当時を振り返っている。
現在でもベッカムのビジネスパートナーの一人であるTVプロデューサーのサイモン・フュ-ラーによる「プレイをすること以上に、アメリカとのサッカーの関わり合いを持ったらどうか」というアドバイスも大きかったようだ。つまり、当時から、ベッカムは選手としてアメリカのサッカーの地位を向上させることだけでなく、MLSのクラブを所有することも視野に入れていた。「アメリカは地球上で最も豊かで、力を持っている国なのに、サッカーという競技をまだ享受していなかった」(ベッカム自伝より) 
実際、2007年、ベッカムがロサンゼルス・ギャラクシーに移籍したとき、MLSが新しいチームを作るときに2500万ドル(約25億円)でオーナーになれるオプション契約が含まれていたのだ。2013年の引退時にベッカムは「これ以上アメリカでプレイできないけど、クラブやリーグ、このスポーツをアメリカで成長することに関わっていきたい」と述べていたように、飽和状態であるイングランドではなく、ビジネス的にまだまだポテンシャルを秘めていたMLSへと興味を持ったというわけだ。
ユニフォームを脱ぎスーツに身を包んでも、“MLSの親善大使”という役割は変わらない

ユニフォームを脱ぎスーツに身を包んでも、“MLSの親善大使”という役割は変わらない

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ビジネスマンとして挑戦するアメリカンドリーム
MLSは2017年、20チームから22チームとなり、2020年までに24チームに増える予定で、将来的には28チームになることも視野に入れているという。そんな状況の中、2014年、ベッカムはMLSクラブのオーナーになることができるオプションを行使し、マイアミを本拠地とするMLSのエクスパンションクラブの共同オーナーとなった。フューラーと他の2人のビジネスマンを含む4人で「マイアミ・ベッカム・ユナイテッド」という会社を設立し、その会社がクラブのオーナーになるという形を取った。
ただホームスタジアムをマイアミのどこに作るのかということが障壁となった。最初はウォーターフロントにこだわって場所を探したが、周辺住民の反対などもあり挫折してしまった。結局、2016年に入ってマイアミのダウンタウンの西の郊外、オーバータウンにあるMLB(メジャリーグベースボール)のマイアミ・マーリンズの本拠地「マーリンズ・パーク」の隣に新スタジアムの用地を確保したことを発表した。
マーリンズの本拠地マーリンズ・パーク。ヤシの木が並ぶこのエリアに新スタジアムが建設される予定

マーリンズの本拠地マーリンズ・パーク。ヤシの木が並ぶこのエリアに新スタジアムが建設される予定

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25,000人収容の新しいスタジアムは早くても2018年に完成するという(完成前は主にアメリカンフットボールで使用されているFIUスタジアムを間借りする予定)。現在は建設に際して投資してくれる会社を探している段階とのこと。またスタジアムの場所が決まったことにより、段階的に今後クラブ名などが決まっていくことになろう(社名の「マイアミ・ベッカム・ユナイテッド」が通称になりつつあるが)。2018年からベッカムらが率いるクラブが23チーム目のクラブとしてMLSへと参入する可能性もあるという。
ベッカムは選手としての引退に際して、こうも述べていた。「ある意味、僕のアメリカンドリームは終わってしまうけど、もう一つの夢は、まだ始まったばかりさ」
クラブのオーナーとしてのベッカムの挑戦は、やっとスタートラインに立とうとしている。ビジネスマンとしてアメリカンドリームを達成できるだろうか。ベッカムほどのスーパースターが、大規模なクラブのオーナーになるというのは例がない。そういった意味でも、彼の挑戦は注目なのである。

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