とある受験生のエナジー・ドラマ

By 中三川大地

そのエナジーは
知識を詰め込むだけじゃない。
新たな発見を見出すためのものだ。
   

時計の針はまもなくてっぺんを指そうとしていた。
勉強が何もかも中途半端のまま、ベッドの誘惑に負けようとしている。

さしたる夢や目標なんてないまま、だけど妙に学校の勉強だけはデキる子だったヒカリは、両親からの勧めにしたがって某国立大学を受験しようとしていた。昔から本を読むのが好きだっただけに国語や社会は得意だけれど、数学や物理は大の苦手だ。今でもスマホの中には魔法使いの小人が入っていると、かたくなに信じている。
今夜もまた、生きていくにあたってはおそらく役に立たないだろう、数字と記号がワルツでも踊っているかのような羅列をぼんやりと眺めていた。

「でも、しょうがない。あとひと踏ん張り」

眠気を覚ますために、近所のドラッグストアで調達したレッドブルを手に取る。発売されたばかりだという、330mlのでっかいやつだ。キリリと冷えたそれを飲みながら、数字と記号の羅列と格闘する覚悟を決めていた。ふと、購入した際に店頭で知ったキャンペーンが気になってネットで検索する。

「究極のアクティビティプラン――? うわぁ、海コースって楽しそう」

どうやら石垣島にまで行って、ジェットスキーに引っ張られる体験ができるらしい。海上をバナナボートやウェイクボードで引っ張られるのは見たことあるけれど、海中を潜りながら引っ張られるサブウイングなんて、ヒカリは初めて知った。しかも今回は、全部が全部、一般的なものよりも倍速で引っ張られて、スリリングな体験ができるそうだ。特に水上は地上に比べて、体感速度が格段に上がるんだって。ヒカリは物理と同じくらいスポーツが苦手だったけれど、昔からなぜか泳ぐのだけは大好きだった。小学校時代は、身体がふやけるくらい市民プールで泳いでいたっけ。

「そうなのよ。水の中ってなんかテンション、アガるのよね。なんでだろ……? 浮くような沈むような妙な感覚。あれがいいのかなぁ?」

それがアルキメデスの原理で説明される「流体の浮力」に起因するものだと知ったのは、たまたま机の上に広げっぱなしだった物理の教科書があったからだった。物理の勉強と好きなコトなんて、全然交わらないと思っていただけに、ヒカリは昔から好きだった遊びを理論的に証明してくれたアルキメデスに感謝したい気持ちになった。

「へーえ。ブツリって意外と面白いじゃん」

その日、数字と記号の羅列との格闘は、無我夢中で夜明けにまで及んだ。ワルツだと思っていた数字と記号は、気が付けば、アルキメデスの信頼できる言葉になっていた。


ヒカリは念願だった国立大学に無事入学した。しかも消去法で決めようとしていた教育学部ではなくて、さんざん毛嫌いしていた理工学部に挑み、見事、合格したのだ。今では、いくらアルキメデスを紐解いてみても決して回答が得られなかった「水の魅力」を解明したくて、物理学を専攻している。

苦手を克服できたばかりか、むしろそれが好きなものになった。そう考えると、あの晩のレッドブル・エナジードリンク 330mlは、ヒカリの人生を変えてくれた運命の1本だったと思っている。

「これがエキストラエナジーってヤツなのかな」

入学と同時に駆け込んだマリンアクティビティ・サークルの活動でやってきた南の島。照りつける日差しと白い砂浜に囲まれながら、ヒカリは思う。

「水上での速度が倍になると、地上での倍速と比べて興奮度は何倍になるのか。今日は研究してみよう」

日常生活で“研究”なんて言葉が自然と出てしまうくらい理数系が染みついてきたヒカリは、全身、ウエットスーツに身を包み、レッドブル・エナジードリンク 330mlを手に取って海を見た。それは寝不足で受験勉強をしていたときに想像していた海よりも、ずっと青かった。


究極のアクティビティプランの「海コース」が気になった人はこちら:www.redbull.com/extraenergy

 

■エキストラエナジーと人間ドラマ三部作
第1話:とある受験生のエナジー・ドラマ
第2話:とある営業マンのエナジー・ドラマ
第3話:とある会社員のエナジー・ドラマ

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