【J1大阪決戦】ダービーが “特別な試合”である理由

サッカーの世界において、単に“勝ちを重ねる以上に価値を持つ試合”がある。それがダービー戦だ。Jリーグでも来る4月16日(日)、大阪を舞台した大一番が、いよいよキックオフする。
© illustration by 山本ノラ
By Masaki Asada

そもそも「ダービー戦」とは何なのか?

ごく簡単に説明すれば、同じ都市(あるいは近隣都市)に活動拠点を置くクラブ同士が対戦する試合のこと。互いのホームタウンが重複(あるいは隣接)するからこそ、積年の強い対抗意識から激しい試合になることも多く、応援するサポーターも含め、当該クラブにとっては特別な一戦として位置づけられる。

グラスゴー、イスタンブール、ブエノスアイレスなど、具体例を挙げればキリがないほど、世界中にダービーマッチは存在する。ともに日本人選手が在籍しているイタリア・ミラノの2クラブ、ACミラン(本田圭佑)とインテル(長友佑都)が対戦する「ミラノ・ダービー」などは、日本でもよく知られるところだろう。

だが、言葉にすれば「強い対抗意識」でしかないダービーを彩る感情も、その過激さは日本人の感覚からすると、想像を絶すると表現してもさほど大袈裟ではない。

さかのぼること10数年。アテネオリンピックの取材で、ギリシャの首都アテネを訪れたときのことだ。

私はそのとき、街のスポーツ店で見つけて買ったパナシナイコスのTシャツを着て、バス停でバスの時間を確認していた。パナシナイコスとは、アテネをホームタウンとするギリシャ屈指の強豪クラブ。その年のギリシャリーグで優勝していたため、トロフィーが描かれた記念Tシャツが売られていたのだ。

すると、私が立つバス停の脇に1台の車が(たまたま赤信号で、ではなく、わざわざ)止まった。そして、時刻表を見ている私に向かって、運転手の男は大声で叫んだのだ。

「おい、そこの中国人!(私のことだ)」

何事かと私が視線を向けると、彼は車のなかからこう言い放った。

「お前のTシャツはクソだ!」

彼が恐らくオリンピアコスのサポーターだったことは、容易に想像がつく。

アテネの近隣都市ピレウスをホームタウンとするオリンピアコスは、ギリシャ国内での人気をパナシナイコスと二分すると言っていいほどの強豪クラブ。この2クラブのライバル意識は生半可なものではなく、ダービーマッチとなれば、過去には暴力事件などの騒動も少なくなかったほどである。

だが、それにしても、だ。観光客とおぼしき東洋人にまで悪態をつかなければいけないほど、互いの間には「対抗意識」というより「憎悪」に近い感情が、しかも日常的に渦巻いている。そんなことを実感し、大いに驚いたものだ。

その後もTシャツ姿のまま、あちこち散策していると、パナシナイコスのサポーターからは度々記念撮影を頼まれ、その一方でオリンピアコスのサポーターからは(罵られることこそなかったが)疎まれた。

 

3年ぶりの大阪ダービー、かけるのはプライドのみ

もちろん、日本のJリーグにもダービーマッチは存在する。というより、ダービーが氾濫している。同じ都市をホームタウンとするクラブ同士でなくとも、九州勢同士であれば、九州ダービー。栃木と群馬であれば、北関東ダービーといった具合だ。

歴史的(どこの国の移民がクラブを創設したかとか)、あるいは社会的(クラブごとに宗教や階級の違いがあるとか)な背景に基づく対抗意識が強い海外の例に比べれば、やや重みに欠ける印象は否めないが、Jリーグにより多くの注目を集め、さらに盛り上がる材料のひとつとなるなら、日本のあちこちでダービーが行われるのも決して悪いことではないだろう。

そんな日本のダービーマッチのひとつに、「大阪ダービー」がある。言うまでもなく、セレッソ大阪とガンバ大阪が対戦する試合のことだ。

現在Jリーグには1部のJ1から3部のJ3まで、53クラブが所属しているが、複数のクラブが同一都市名を名乗っている都市は、東京(FC東京、東京ヴェルディ)、横浜(横浜F・マリノス、横浜FC、YSCC横浜)、大阪の3つだけ。もちろん、歴史的、社会的に遺恨が生まれるような背景はどこにも存在しないが、3都市のなかで、それぞれのクラブの棲み分けが最もはっきりしているのが、大阪ではないだろうか。

例えば、東京をホームタウンとするFC東京と東京ヴェルディの場合、ともに調布市にある味の素スタジアムを本拠としている。練習グラウンドがある場所も、FC東京は小平市、ヴェルディは稲城市と、ともに東京西部の多摩地域に位置する。

しかし、大阪の場合、ガンバは吹田サッカースタジアムを本拠とし、練習場も同じく吹田市にある。クラブ名こそ大阪を冠しているものの、活動拠点は大阪北部の北摂エリア。単に大阪の、というよりは、北摂のクラブという意識が強い。対するセレッソはスタジアム、練習場とも大阪市にある、文字通りの大阪のクラブ。つまり大阪の2クラブは、地理的に南北で分かれているのである。

しかも(これがある意味、最も重要なことかもしれないが)、東京、横浜、大阪のなかで、日本のトップリーグであるJ1に2クラブが所属しているのは大阪だけ。その意味でも大阪ダービーの価値は高い。

セレッソが3年ぶりにJ2からJ1に復帰し、久々に実現する大阪ダービー。注目の一戦は4月16日(日)、セレッソのホーム、ヤンマースタジアム長居で行われる。

現在、ガンバが4位、セレッソが6位(4月7、8日に行われたJ1第6節終了時点)と、ともに好位置につける。優勝争いに加わるべく、さらに上位をうかがう両クラブの直接対決は激戦必至である。

 

■Information

3年ぶりの開催を記念して、Twitter上で得点予想を実施。
両チームが上位を狙う白熱の大阪ダービーを #大阪ダービー得点予想 を使って、みんなでさらに盛り上げよう。

 

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