『ソーシャル・ネットワーク』、『ドライヴ』、『イット・フォローズ』など、昨今の映画界ではシンセサイザー・サウンドが大々的にメインストリームへ返り咲いており、このトレンドはNetflixのホラードラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(厳密には映画ではないが)によってひとつのピークを迎えたとも言える。
陰鬱なシンセ・サウンドトラックが再び脚光を浴びる中、今回は時計の針を1980年代まで巻き戻してシンセ・サウンドトラックの黄金時代を振り返ってみよう。
『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(1981年 / Tangerine Dream)
“クラウトロック” の発展に重要な役割を果たしたドイツのエレクトロニック・バンドTangerine Dreamはそのキャリアを通じて60作を超えるフィルムスコアを手がけたが、そのうち20作は1980年代に残された。
Tangerine Dreamが初めて担当したフィルムスコアはマイケル・マンが監督したネオノワール・スリラー『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』だ。この中で最も際立っていたのは「Beach Scene」と題されたインストゥルメンタルで、作品屈指の印象的なシーンに使用されている。
上の動画で、主演のジェームズ・カーン、チューズデイ・ウェルド、デビュー当時の初々しいジェームズ・ベルーシ(かのジョン・ベルーシの実弟)による名演をチェックしよう。
『ニューヨーク1997』(1981年 / John Carpenter & Alan Howarth)
ジョン・カーペンターは1980年代で最も成功したSF / ホラー監督だが、彼が手がけたフィルムスコアもGiorgio Moroder、Tangerine Dream、Vangelisを含む同時代のアーティストたちの作品と並んで無数のプロデューサーやDJに刺激と影響を与えてきた。
カーペンターがAlan Howarthとの共同プロデュースでシンセマニアの心をくすぐるダークでエッジの効いたサウンドトラックを用意した『ニューヨーク 1997』は1980年代を代表するカルトクラシックとなった。
『炎のランナー』(1981年 / Vangelis)
このオスカー受賞サウンドトラックでギリシャ出身の巨匠Vangelisはネクストレベルのスターダムを獲得した。1924年が舞台に設定された映画にエレクトロニックなスコアを組み合わせるギャンブルが大当たりしたのだ。
「The Chariots Of Fire Theme」は映画史上屈指の成功を収めたテーマ曲になったばかりか、20世紀を代表する「すぐに曲名が分かる名曲のひとつ」になった。Vangelisが映画のイメージに合わせてピアノを演奏するミュージックビデオも必見だ。
『ブレードランナー』(1982年 / Vangelis)
『炎のランナー』のスコアでアカデミー賞を手にした直後、Vangelisはリドリー・スコット監督のSFクラシック『ブレードランナー』のサウンドトラックに着手した。
数多のエレクトロニック・ミュージシャンたちが制作のインスピレーション源としてこのサウンドトラックを挙げているこのサウンドトラックはまごうことなきクラシックであり、シンセサイザー・ミュージックにおけるひとつの金字塔だ。
『卒業白書』(1983年 / Tangerine Dream)
The Police、Prince、Muddy Waters、Jeff Beckといった当時の非シンセ系ポップソングもフィーチャーされているが、トム・クルーズの出世作『卒業白書』のサウンドトラックの大半はTangerine Dreamの既発曲をシーンに合わせて編集・改題した楽曲で構成されている。
特に有名になったのは「Love On A Real Train」で、若き日のトム・クルーズと色気たっぷりのレベッカ・デモーネイが演じるラブシーンに挿入されていた。また、このサウンドトラックにはPhil Collinsの大ヒット「In The Air Tonight」もフィーチャーされている。
『スカーフェイス』(1983年 / Giorgio Moroder)
『ミッドナイト・エクスプレス』、『アメリカン・ジゴロ』、『フラッシュダンス』などのスコアを手がけてきたイタロディスコのパイオニア、Giorgio Moroderはブライアン・デ・パルマ監督のギャングスター・クラシック『スカーフェイス』のサウンドトラックを一任され、Debbie Harry、Amy Holland、Paul Engemannなど当時最大のポップスターたちと手を組んだ。
Moroderがこの映画のために制作したスコアはゴールデングローブ賞でもノミネートされた。
『ヴィデオドローム』(1983年 / Howard Shore)
監督を務めたデヴィッド・クローネンバーグと親交のあるHoward Shoreが手がけた『ヴィデオドローム』のスコアは超現実的かつ不気味で、トラディショナルなオーケストラとデジタルシンセSynclavier IIでプログラムされた電子音による組み合わせは当時革新的だった。
『ゴーストバスターズ』(1984年 / Ray Parker Jr.)
ディスコ! Ray Parker Jr.が手がけた説明不要のテーマソングは『ゴーストバスターズ』劇場公開の数カ月前にリリースされ、絶大な成功を収めると同時にディスコの商業的成功のピークを作り上げた(ディスコの陳腐化のピークという意見もある)。
この曲の大ヒットを足がかりに映画本編も大成功を狙い、実際その通りとなった。『ゴーストバスターズ』は当時歴代興行収入ベスト10入りを果たしたのだ。
この大ヒットテーマ曲をチェックしたあとは、このサントラに収録されたもうひとつのディスコヒットAlessi「Savin' The Day」をThe Revengeが2008年にリエディットしたバージョンもチェックしてみよう。
『ターミネーター』(1984年 / Brad Fiedel)
Brad Fiedelは1970年代を通じて映画やTV番組の作曲家として活動してきたが、メジャーレベルの成功を収めるきっかけとなったのが1984年にジェームズ・キャメロン監督から依頼されたSFスリラー『ターミネーター』のサウンドトラックだった。
Fiedelはこの作品以降も高評価のサウンドトラックを数多く手がけていくが、彼のキャリアを決定づけたのはやはりこの金属的で重厚なテーマ曲だろう。
『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年 / Harold Faltermeyer)
多くの人がドイツ人作曲家Harold Faltermeyerの名前を数年前にバイラルヒットしたCrazy Frog版「Axel F」(エディ・マーフィーの役名)経由で思い出しているという事実は非常に残念だ。
なぜなら、オリジナルの「Axel F」はキャッチーでクールな1980年代シンセポップの最高の手本で、今もその輝きは失われていないからだ。
Faltermeyerが手がけたこのテーマ曲あってこその『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズと考えているファンは多い。
『ロストボーイ』(1987年 / Gerard McMann)
1980年代最大のカルトヒットのひとつで、“ヴァンパイア・フリック(ヴァンパイア物)” のマストして知られる『ロストボーイ』のサウンドトラックは、INXSやJimmy Barnes、Echo & The Bunnymenなどのパワーポップ系ロックバラードが満載だった。
しかしその中心に置かれていたのは、Gerard McMannによるシンセ・メインディッシュ「Cry Little Sister(Theme From The Lost Boys)」だった。
『ニア・ダーク/月夜の出来事』(1987年 / Tangerine Dream)
またもTangerine Dreamが手がけた1980年代映画スコアだが、こちらはキャスリン・ビグロー(『ハートブルー』や『ハートロッカー』で知られる)が監督したヴァンパイア / ウエスタンホラー作品『ニア・ダーク/月夜の出来事』で、デビュー間もない頃の故ビル・パクストンも出演している。
当時公開された数多のホラー映画と同様、この映画も興行的には大失敗に終わったが、批評家たちからは好意的に受け入れられ、のちにカルト的な支持を得た。Tangerine Dreamはこの映画のためにお得意の幽玄で美しいスコアを提供した。
『摩天楼はバラ色に』(1987年 / Yello)
Yelloによる奇抜で馬鹿馬鹿しいほどにグルーヴィーなトラック「Oh Yeah」をどうして忘れられるだろうか?
この曲は『フェリスはある朝突然に』をはじめ1980年代コメディ映画に幾度となくフィーチャーされたが、最も有名なのは『摩天楼はバラ色に』のリムジンシーンだ。