Gaming
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『Project L』がやってくる
ゲーミングファンは2021年に情報が公開されるまで『Project L』に何を期待すれば良いのか分かっていなかったが、このゲームが2v2のタッグ制格闘ゲームになるというニュースは実に納得がいくものだった。
なぜなら、『リーグ・オブ・レジェンド』はチームゲームだからだ。同じチームのプレイヤー同士のシナジーが “Worlds” こと世界一決定戦の行方を決めることになる。そして、タッグ制格闘ゲームはキャラクター同士の組み合わせで何ができるのかを深く理解するゲームだ。
よって、突如発生するチームファイトをはじめとする『リーグ・オブ・レジェンド』のエネルギッシュな瞬間は、このジャンルへスムーズに活かせるだろう。『リーグ・オブ・レジェンド』では両チームにアクション、技、そしてシナジーが求められるが、『Project L』でもこれらが見られるはずだ。
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『Project L』のシステム
Riot Gamesが最新動画で『Project L』の中核となるシステムを発表したとき、開発チームはそれまでコンセプトアートとしてしか存在していなかったチャンピオン【イラオイ】のプレイアブルバージョンを公開し、その動きやタッグシステム、ガードシステムなどについても解説した。
アシストキャラクターと即座に交代できる “ハンドシェイクタッグ / Handshake Tag” システムは、対戦相手の足を止め、強烈な択攻めを仕掛けられるようになる。動画内では合わせて “ダイナミックセーブ” のようなシステムの解説もされたため、このゲームの内容がこれまで以上に見えてきている。
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『Project L』の効果
『Project L』はタッグ制格闘ゲームに新規プレイヤーを呼び込むためにかなりの努力をしている。『VALORANT』のリリースによってRiot Gamesがヒーローシュータープレイヤーとタクティカルシュータープレイヤーの溝を埋めたことを思い出してもらいたい。
シューターに関しては、先行していた『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』と『レインボーシックスシージ』がこのジャンルの人気が続くことをすでに保証していたが、格闘ゲームがRiot Gamesの参入によって得られるブースト効果を想像してもらいたい。Riot Gamesは複数ジャンルの基本プレイ無料ゲームで成功を収めてきたが、このビジネスモデルは格闘ゲームではあまり試されてこなかった。
『Project L』は他の基本プレイ無料の格闘ゲームよりも伝統的な格闘ゲームに近いため、コミュニティ内のプレイヤーを引きつけられるチャンスはかなり大きい。また、『VALORANT』と『リーグ・オブ・レジェンド』における彼らのeスポーツ方面における成功とリーチ力にも注目したい。
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『Project L』の難易度
シンプルなアプローチで必殺技が出せる『Project L』は格闘ゲームの複雑な部分を簡単に始められるようにまとめている。しかし、だからと言って、奥深さを犠牲にしているわけではない。最新動画では、プレイヤー間に大量の読み合いを生じさせることになる様々なシステムや動きが紹介されていた。
『Marvel vs. Capcom』シリーズにインスパイアされた動き、コンボ、アシスト、択攻め、リジェクトガード、バースト、そして強烈なタッグシステムなどが、このゲームをマスターするためにはハードワークが必要なことを教えてくれている。
『Marvel vs. Capcom 2』と『Marvel vs. Capcom 3』、『ドラゴンボール ファイターズ』など、チーム制格闘ゲームはこれまでも存在していた。タッグ制格闘ゲームは、キャラクターが1体少ないがゆえにキャラクターとシステムへのフォーカスがこれらとは異なる。アクティブチェンジのような連携感がより強まるシステムが備わっているため、シナジー効果はチーム制よりもさらに深まる。
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1v1との差
大半の格闘ゲームはキャラクター1体とキャラクター1体の対戦で、基本的に選択されたキャラクター2体の他にアシストやチームバトルは存在しない。『スマブラ』シリーズ、『ストリートファイター』シリーズ、『鉄拳』シリーズ、『GUILTY GEAR』シリーズのような人気IPは、この1v1のコンセプトを保つことで巨大なコミュニティと視聴者を得てきた。
『Marvel vs. Capcom』シリーズは格闘ゲームの歴史と人気に大きく貢献してきたが、チーム制格闘ゲームは格闘ゲーム全体においては支持を得られていない。『ドラゴンボール ファイターズ』は最新の3v3を求めていたプレイヤーたちの溜飲を下げたが、リリース前、リリース後のどちらにおいても『Project L』レベルの話題を生み出した2v2の格闘ゲームは存在しない。
歴史的に、タッグ制格闘ゲームでは知名度の高いIPを使用してその登場キャラクターたちを戦わせるというゲームデザインが採用されてきた。Marvel、カプコン、ストリートファイター、鉄拳、BLAZBLUEなどのユニバースの規模を考えれば、この判断は当然と言える。
リュウ&風間仁組と豪鬼&三島一八組のどちらが勝つのかについて考えたことがない格闘ゲームファンはいない。そしてこのような作品でファンタジーがリアルになる感覚はネクストレベルだ。プレイヤーたちはそれまでの公式タイトルやメディアでは実現してこなかったチームやマッチアップを楽しめる。
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タッグマッチの戦略性
タッグ制格闘ゲームは、キャラクターが交代できることから戦略性も備わっている。他のキャラクターに切り替えることで、コンボや択攻め、そしてガードにクリエイティビティを加えられる。
全体的なゲームプランは、対戦相手のチーム編成によって変わってくる。チーム編成はシナジー効果とマッチアップが重視され、各プレイヤーのスキルがユニークな戦略を創出する。両プレイヤーが同じキャラクター2体を使用していてもスキルの差が戦略の差になるのだ。
タッグ制格闘ゲームのもうひとつの特徴は、それぞれの体力ゲージと2キャラクターで共有することも少なくないリソースゲージを管理しなければならないことだ。キャラクターが1体増えることで、リソースをどのタイミングで誰が使用するかという難しい判断が生まれる。
そして、タッグ制格闘ゲームの大半にはアシスト機能が備わっている。画面外のアシストキャラクターが画面に現れて攻撃や必殺技を繰り出すことで、対戦の読み合い、攻撃、ガードを助けてくれるのだ。アシストの行動を指定できるタイトルも存在する。
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3v3との違い
3v3のチーム制では、2v2のタッグ制ほど明確な “交代” システムが存在しないときがある。3v3ではクイックなアシスト機能だけにフォーカスしがちで、ポイントキャラクター(画面上の操作キャラクター)の狙いを実現するためにアシストキャラクターが少し力を貸す程度にまとめられている。
もちろん、『Power Rangers: Battle for the Grid』のような例外や別バージョンも存在するが、基本的にはこれが大きな違いだ。『ドラゴンボール ファイターズ』の “Zチェンジ” も最初は制限があり、のちのアップデートで必殺技からも発動できるように調整されている。
アシスト機能はタッグ制の大半で採用されているが、タッグ制はキャラクターが2体だけなので、 “交代” 機能の方が充実している。タッグ制タイトルを特徴づけているのは、ポイントキャラクターが行動中にアシストキャラクターとシームレスに交代できる仕様だ。
この特徴が対戦の基本プレイに影響を及ぼしている。タッグ制の攻撃は1v1よりも分厚く、3v3を凌ぐときさえある。瞬時に交代できるアクティブスイッチにより、ポイントキャラクターが相手を押し込み、交代で入ったアシストキャラクター(新ポイントキャラクター)が好きなようにそのあとを引き継げる。押し込まれたあと択攻めを切り抜けようとするのは、タッグ制タイトルで最も難しいプレイのひとつだ。
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おすすめの2v2タイトル
2v2に挑戦してみたいなら、過去数年でリリースされたいくつかのタッグ制格闘ゲームがその役に立つだろう。というわけで、今回は『Project L』のリリース前にタッグ制格闘ゲームに慣れておきたいプレイヤーのために、クラシックタイトルをいくつかピックアップして紹介する。
『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』
2018年にリリースされた『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』は『BLAZBLUE』シリーズのキャラクターを主にフィーチャーしているが、『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』や『UNDER NIGHT IN-BIRTH』、さらには『RWBY』のキャラクターも参戦している。
アニメファイター特有のエアダッシュが可能で、派手なコンボや択攻めも備えている。また、アシストを不用意に呼び出せば厳しく咎められてしまうのも特徴で、先を読み、さらには相手ができることを知識として備えていなければ高いツケを払わせられることになる。瞬時に流れが変わるゲームなのだ。
タイトルに “タッグ” が含まれているのは伊達ではない。タッグ制タイトルの中で最も自由にアシストできるタイトルのひとつだろう。『Project L』と同じく各キャラクターに複数のアシスト機能が備わっており、方向キーと組み合わせることで異なるアシストを発動できるので、プレイヤーたちは状況に合わせてアシストを選択することになる。
タッグ制タイトルのプレイは瞬時の判断の連続になることで知られているが、そのような瞬間が盛り沢山の『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』は、タッグ制タイトルを求めているプレイヤーを満足させるはずだ。
『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』のアクティブスイッチは、プレイヤーたちが心ゆくまでプレイを楽しめるように調整されている。プレイヤーはアシストキャラクターを呼び出したあともポイントキャラクターでプレッシャーをかけ続けて、任意のタイミングでアシストキャラクターへ切り替えることができる。
このシステムが備わっているこのゲームでは、格闘ゲーム屈指の強烈な択攻めを仕掛けることができる。プレイヤーがアシストとポイントで相手を挟撃すれば、相手はどちらを攻めれば良いのか分からなくなり混乱してしまう。
このゲームで択攻めを読み切るのは非常に難しい。リジェクトガードはゲージを消費するので、強力だが使用に関しては慎重に考える必要がある。基本的には攻撃重視だが、アシストとその他のシステムを組み合わせることで奥深さもある『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』は、強烈な択攻めを攻守で体験したいプレイヤーのためのゲームだ。
また、『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』では、キャラクターがそれぞれのオリジナル作品よりも簡単にプレイできるようになっているのも特徴だ。全キャラクターが無敵リバーサルと打ち下ろしを備えている他、コンボもシンプルになっているため、誰もがすぐに『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』をユニークな格闘ゲームにしている部分に触れることができる。
ロールバック・ネットコードも追加された今、タッグ制タイトルを探している人全員にとってマストな作品と言えるだろう。
『Marvel vs. Capcom Infinite』
『Marvel vs. Capcom Infinite』もこのジャンルのソリッドな作品のひとつで、アイコニックなキャラクターリストには同シリーズの人気キャラクターが数多く含まれている。チームの人数を3から2へ減らしたこの作品は、交代システムの簡易化と、インフィニティ・ストーンシステムによるコンボと択攻めの選択肢の増加が高く評価された。
インフィニティ・ストーンは完全なゲームチェンジャーだった。6種類のストーンは基本性能を高めつつ、ストーンの必殺技の “インフィニティ・ストーム” を強力にする。飛び道具を投げたり、新しいコマンド投げができるようになったりと、これらの能力は各プレイヤーのキャラクターの立ち回りを完全に変えることができる。
自分のチームにどのストーンを用意するかがチーム編成と同じくらい重要だが、最終的にはチーム編成によってその選択が決まってくる。相手との距離を詰める必要があるなら、 “スペース” か “タイム” ストーンが良いだろう。相手と何回も対戦したことがあっても、“スペース” の引き寄せや “タイム” の瞬間移動は相手を驚かせることができる。
ストーン(6種類)は両プレイヤーの読みにもう1枚レイヤーを重ねるためかなり奥が深くなっており、対戦毎に完全に異なるゲームに感じられる。
また、『Marvel vs. Capcom Infinite』は2018年のリリースからロールバック・ネットコードを採用している。これは当時の大半の格闘ゲームの先を行く判断だった。『Marvel vs. Capcom Infinite』のようなスピーディーな格闘ゲームには、ローカル対戦を忠実に再現するオンライン対戦が用意されている必要がある。
『Marvel vs. Capcom Infinite』はリリース時にいくつかの問題を抱えており、しかも『ドラゴンボール ファイターズ』のリリースと時期が重なったため、成功を収めることはできなかった。しかし、ファンたちは信じることを辞めなかった。熱心なファンベースはプレイできるという理由からこのゲームを支え続けた。
パンデミック下でもコミュニティが廃れなかったのは、ロールバックが理由のひとつだった。また、シーンのトーナメントは元々大半がオンラインのウィークリー開催だったので、オフラインイベントがなくなったところでコミュニティに大きな影響はなかった。
『Marvel vs. Capcom Infinite』のトップトーナメントの主催者のひとりは、プレイヤー数とトーナメントのエントリー数が増えたことから2020年を “良かった1年” として扱っている。この作品もおすすめの1本だ。
『鉄拳タッグトーナメント2』
『鉄拳タッグトーナメント2』は『鉄拳タッグトーナメント』の続編で、クラシックな『鉄拳』にタッグマッチの要素を加えた作品だ。
シリーズ2作ともに参戦キャラクターが多く、『鉄拳タッグトーナメント』は39体、『鉄拳タッグトーナメント2』は61体参戦。バンダイナムコエンターテインメントはドリームマッチを用意することで『鉄拳』シリーズの歴史を讃えている。
プレイヤーは2キャラクターを選んでチームを編成するが、かなり慎重に考える必要がある。まず、キャラクター同士の相性が存在し、相性が良ければ、ポイントキャラクターがダメージを受け続けるとアシストキャラクターがレイジモードに突入して攻撃力が上がるようになっている。
『鉄拳タッグトーナメント』シリーズでは “タッグコンボ” というシステムが用意されており、アシストキャラクターが任意のタイミングで交代してコンボを仕掛けることができる。何回でも仕掛けられるのが特徴だ。また、投げのタイミングで交代する “タッグスロー” も存在する。
『鉄拳』シリーズではポジショニングが非常に重要で、相手を壁に追い詰めれば強力な攻撃を仕掛けたり、壁を使ったコンボで大ダメージを与えたりできるキャラクターがいる。ニュートラルに強いキャラクターを別に用意すれば、相手を上手く動かし、相手が理想的な位置に来たときに壁際に強いキャラクターと交代して一気に勝負に出る戦い方ができるようになる。
また、『鉄拳』シリーズでは対戦相手を知ることが重要だ。この作品では、連続技、予想される動きのパターン、起き攻めの選択肢などが交代と同時に変化する。プレイヤーは交代で入ってきた相手のキャラクターにフレキシブルに対応できる必要がある。
『鉄拳タッグトーナメント2』は『鉄拳』シリーズのキャラクターたちを新たに用意したタッグシステムで戦わせるだけのシンプルな作品だが、ゲームプレイはかなり新鮮だ。キャラクターの組み合わせで強烈なコンボを生み出すのが好きな『鉄拳』プレイヤーなら気に入るだろう。
その他の名作
タッグ制格闘ゲームには上記の他にもいくつかの名作が存在する。
『ストリートファイター x 鉄拳』
このゲームも評価は割れたが、素晴らしいゲームプレイと興味深い交代システムが備わっている。また、格闘ゲームの2つの人気シリーズを組み合わせたこの作品には “ジェム” と呼ばれるアイテムがあり、これを装備することでキャラクターの能力を変化させられるようになっている。
『X-MEN vs. STREET FIGHTER』
格闘ゲームコミュニティに愛されてきた『Marvel vs. Capcom』シリーズの先駆けとなったこの作品は、『ストリートファイター』シリーズと『X-MEN』シリーズのキャラクターがフィーチャーされている。交代システムは最近のものほど充実していないが、現在も続く “高速チームバトル” はすでに実現できていた。時代を先取りしていたゲームだった。
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