ミュージック
5 MINUTES WITH TOWA TEI
TOWA TEIのニューアルバム「EMO」。その一部はレッドブル・スタジオ東京でRecが行なわれた。限定公開となるトラック「TG pt.2 (Twice version)」と共にインタビューをお届け。
Written by 小野島 大
読み終わるまで:15分Published on
水原希子, TOWA TEI, 水原佑果
水原希子, TOWA TEI, 水原佑果© [unknown]
——今日はレッドブル・スタジオ東京から質問をいくつか託されているので、それを元に話を広げていければと思います。最初の質問です。
<最近「かっこいい」と思ったものは何ですか?>
吉岡里帆ちゃんかな(笑)
——テイさんが出演したNHK-FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』で女優の吉岡里帆さんがナビゲーターをつとめたんですね。
なんでこんなにテキトーなオヤジをうまくかわすのかと(笑)。かわし方がツボなんですよ。まだ24歳なのになんでこんなにオトナな間合いなのか。声のトーンとか顔の表情とか。情報豊かな受け答えが素晴らしい。久々に感動に近い感激を味わいましたね。彼女がいいと希望を出して叶って良かったです(笑)。
『カルテット』(吉岡里帆が出演したドラマ)も慌てて見ましたよ。彼女のお父さんは太秦で映画の撮影に関わってたんですって。なので彼女はただ可愛いとか賢いとかじゃなく、間合いとかはんなりした感じとか、そういう豊かな情報は家庭環境から来てるんだろうなと思うんです、きっと愛情を一杯受けて育ったんだろうなと。まだ若いんだけど、人として確立してるという印象を受けました。
——テイさんが24歳の時は…
まったく敵わんですわ(笑)。まだデビューもしてないですからね。ニューヨークでDJはやってましたけど。もうレコードのことしか頭になかった。
それを思うと里帆ちゃんは素晴らしい。だからマジメな話、最近かっこいいと思った人は吉岡里帆ちゃんですね。人が真似できない個性を持っている。なんていうのかな……自分に必要な情報以外を遮断する術を知っている、という気がしました。
そこらのケイタイいじってる若者よりは圧倒的に忙しいし情報量の多い生活をしてるわけじゃないですか。そこで迫り来るつまらん情報には目もくれず、今自分の目の前にある仕事をこなしている感じが、かっこいいなと。
towa tei
TOWA TEI© [unknown]
——テイさんがその境地に至るまではそれなりの経験と試行錯誤があったけど……
そうですねえ……50年ぐらいかかってますね(笑)。ただ僕は食えない時代をわりとすぐに卒業できたのが大きかった気がします。食えないというよりは食わなかったし。食うことよりも音楽が大事だったんで。寝食忘れて音楽聴いたり作ったりしてましたから。
——それも糧になっているということですね。次の質問です。
<今思えば、若いころからこれがずっと好きだな、と思うもの(こと)は何ですか?>
これは今のお話とちょっと繋がってきそうですね。
繋がりますかね。可愛い女の子は好きですね。手足が長くて顔の小さい子。
水原希子・水原佑果 姉妹とMETAFIVEのメンバーが参加。レコーディングの一部はRed Bull Studios Tokyoで行なわれた。
「Brand Nu Emo」
TOWA TEI as METAFIVE with MIZUHARA SISTERS
——テイさんは女性ヴォーカルを起用することが多いですよね。男性ヴォーカルを使うよりも圧倒的に多い。
そうですね。僕の場合、楽曲ごとに疑似恋愛をやってるような感覚があるんです。共同作業で楽曲を生むというか。曲を作ることで恋をしていたい。それはインストであっても、男性ヴォーカルであってもね。そういう意味ではバイセクシャルなんです(笑)
——はははは! なるほど。
あとは、ピコピコしたものはずっと好きですね。
——エレクトロニックなもの。
子供の頃はずっと音楽が嫌いだったんです。周りが聴いてたのが湿っぽいニューミュージックみたいなものばかりで、全然ピンとこなかった。
でもYMOを聴いたら全然違ってた。メンバーでもないのにサビで女性ヴォーカルが歌ってたり、曲の合間にギャグを入れたり。いろんなことがフリーで、それまで巷に流れていたような音楽とはまったく違っていた。
僕はYMOにハマる前はインベーダーゲームをやってたんですよ。アーケイドで有り金全部注ぎ込んでピコピコと。もしかしたらお金を払ってピコピコする音を聴きたかったのかもしれない。YMOを聴いてからは、高校に入ってシンセを買って、自分で鍵盤を押せばいつでもピコピコ音を出せる。気持ちのいい音をひたすら出して、出しているだけじゃ物足りたくなって録音するようになって。今と変わってないですよ。
小山田圭吾, 高橋幸宏
小山田圭吾, 高橋幸宏© [unknown]
——歌とか曲っていうよりは「音」だった。。
そうですね最初は。最初は歌ものはやってなくて、ディー・ライトに入ってからですね。
——歌が邪魔だと思うことはありますか。
ありますよ。そういう時はインストにしてます。そこも自由というか。(固定した)ヴォーカルになっちゃうとなかなか……福山雅治君のアルバムで1曲しか歌ものがないと怒られますよね(笑)。
歌えたり楽器が弾ければなあとは思いますけど、それも隣の芝生はなんとやらでね。そうだったらたぶん(今みたいな音楽は)やってない。今回の人生では絶対ないと思うんで。憧れはありますよ。楽器ひとつで食べるような生活。僕は打ち込まないといけないでしょ。インターフェイスが良くなってほしいですね。
小山田圭吾
小山田圭吾© [unknown]
——楽器を弾く人は思ったことをすぐ音にできる。その速度は打ち込みよりも全然速い。
そうなんですよ。思った通りの音を出そうと思ったら、モニターを見ながらマウスを細かく動かさなきゃいけない。木彫に近いですよね。僕のやってることはSonic Sculptureだと思ってますよ。メロディや詞だけつければ形になるわけじゃない。最後に耳に入ってくる音まで作り上げて初めて成り立つわけですから。限りなく木から掘り出していく感覚に近いですよね。
——自分の頭の中にある音楽を、今は自分一人で作り上げることができる。でもブライアン・ウィルソンが『ペット・サウンズ』を作っていた時代は、自分の理想とする音楽を具現化するために、どれだけの手間と時間と費用がかかったことか。
ですよね。多数の人をオーケストレイトしないとできなかったことが、今はクリックひとつでできる。でも僕はシミュレーショニズムって興味がないんです。あくまでも打ち込みは打ち込みであって、生楽器の代用じゃない。
打ち込みというジャンルのゲームをやってる感覚に近いですね。でもそのゲームは仮想ヴァーチャルではなくて、ここで教授(坂本龍一)のピアノが欲しいと思ったら教授に頼めばいい。第二希望を考えないという。断られたらその時考える。吉岡里帆ちゃんの時もそうですよ。スケジュール合わなかったらどうしますって訊かれて、答えないようにしたんですよ。そうしたら通るもんですね。さすがNHK(笑)。
——次の質問です。
<最近怒っていること(不満に思うこと)はありますか?>
いっぱいありすぎて、というか。ニュースを見ていると、どうなってるんだ世の中って思うことばかりで。見ないようにしてるかなあ。
——テイさんは怒りを元に音楽を作ることってあるんですか。
うーん、ないすねえ。
怒ってますよ、結構。でも怒りと恐れは一番クリエイションに不要なEMOだと思ってるんで、僕は。
——なぜです?
なんとなく、ですけど……自分が元々根暗だからじゃないですか(笑)。
18、19の頃とか、何も自分がなかったんですよ。ヴィジョンがなくて。だから……怒り倒しちゃったんじゃないですか、若いうちに。
——現状に不満があって。
不満……というよりはFearですよ。恐れ。自分の将来への恐れ。自分がないから。なんとなく公務員になるよりはクリエイティヴな方向に行こうと思ったけど、ファイン・アーティストとしてやっていくほどの勇気はなくて、商業デザイナーを目指してデザイン事務所に入るか、電通かなんかに入ってクライアント仕事をしようと思ってたわけですよ。食いっぱぐれたくないから。
小心者なところもあるんですけど、でも結果的には限りなくファイン・アートに近い世界を選んだんですけどね。結局美大に行って音楽やることになりました。一回も就職はしたことなかったけど、それから食うに困ったことはないかもなあ……。
周りにはいましたけどね、パンの真ん中はデッサンの消しゴムにして、パンの耳しか食べてなくて栄養失調で倒れちゃったりとか。
TOWA TEI, あの(ゆるめるモ!)
TOWA TEI, あの(ゆるめるモ!)© [unknown]
——テイさんに一番似合わないのがハングリー精神とか成り上がりとか……
はははは!ガッツとかないですもんね(笑)。
僕は人の二倍できてようやく一人前なんだから勉強頑張りなさいと、そういうバイアスをずっとかけられてきた。でも結局学歴が関係ない世界に行くことになって。だから最初は落ちこぼれですよ、親から見たら。
でも(ディー・ライトの)日本公演に来て、ゴールド・ディスクとか獲って、一杯税金払ってるのを見て、大丈夫なんだなコイツは、と思ったみたいです(笑)。
——なるほど。
怒り、恐れ……若いうちはしょうがないですよね。お金はないけど時間だけあって、不安だから考えなくていいこと考えて。でも若いうちにそうやって悩める時期があったのは良かったのかな。
——悩んだり迷ったりするのが若さの特権ですから。
そうですね。ヒマさえあれば悩んでましたから。これは20代で禿げ上がるなと思ってましたから(笑)。そもそも怒り(anger)とか恐れ(fear)は、僕のキャラには合ってない。だからangerとかfearがあったら切り替えてアップになったりリラックスできるように、温泉行ったり旅行行ったり映画見たりする。なんか今日は乗らないな、という時は無理してやらないですね。
——なるほど。
あと、最近ちょいちょい頭にくることは、ホテルの朝飯のBGMです。クラシックかジャズでも流してれば良いと思ってるんでしょうかw 朝飯に全然合ってない煩いクラシックやフリーキー過ぎるジャズだったり、音量デカすぎだったり。せっかくのリゾート・ホテルだったりが台無しです。
音で、そういった空間や時間をもっと丁寧に演出して欲しいです。
——次の質問です。
<最近した「いいこと」はなんですか?>
全然思い浮かばないですけど……深いですよね質問が。
——音楽と結びつけなくてもいい気がしますが。
いいことは内緒でするものだと思うんですけど……近年、神社とか気持ち良いから好きなんですよ。
——神社? お寺とか?
お寺とか。(願いが)叶うとか叶わないじゃなくてね。
昔はね、ニュー・アルバムが1枚でも多く売れますように、なんて祈ってましたけど、近年は自分のことじゃないですよ。“ありがとうございます”という感謝と、“ちょっとでもマシな世の中になりますように”という。
——それが最近したいいこと?
いいことっていうか……。
——自分のことは願わなくなる、というのはわかる気がします。
うん。いつのまにか。あのう、ヤなことがないと、いいことがいいことと、わからなくなったりするじゃないですか。
イヤなこと……は起きてほしくないですけど、イヤなことがあると、自分にとって嬉しいことが理解できる。日々嬉しいことがあっても、続いているとわからなくなっちゃう。
——テイさんでもイヤなことってあるんですか。
ありますよ、いっぱい!(笑) あるある。
——なんかストレスがなさそうな気がしますけど。
いやあ……じゃあブランディングが成功してるんだな(爆笑)。
水原佑果
水原佑果© [unknown]
——あまりストレスとか苦労とかなさそうに見せるのが「テイ・トウワ」のブランディング。
うん。こうやって言っちゃってますけどね(笑)。でもみんな言ってくれるんですよ。実際会うと違うって。もっと怖い人だと思ったとか。もっとデジタルな人だと思ったとか。それはブランディングが確立してるってことですね(笑)。
——デジタルな人ってどういう人ですか(笑)。
ピコ太郎みたいな(笑)。動きがカクカクしてるとかね。トイレ行かないとか。
——では次の質問。
<最近見ておもしろかったお気に入りの動画はありますか?
見ないんですよね……最初の質問に戻っちゃうけど、『カルテット』かな。久しぶりに僕がマジョリティとシンクロしてるという。脚本を書いてる人は有名な方なんですよね。
——坂元裕二。『東京ラブストーリー』など、ドラマの脚本家としては大御所ですね。
ダイアローグがヤバい。いちいち哲学的で。よくこんなセリフを次から次へと思いつくなと。
検索したら作詞もなさるんですね。今の音楽って言葉が耳に引っかかってこない。メールが返ってこないとか、そんな歌詞ばっかりじゃないですか。そんなのとは対極にあるような鋭いセリフの応酬で。
水原佑果
水原佑果© [unknown]
——テイさんは言葉(リリックも含め)ってどれぐらい重視してるんですか。
細野(晴臣)さんとも話したんですけど、ふだん音楽を聴くときに言葉で聴くことはまずないですね。ヘタしたら自分の作ってる曲ですら、ちゃんと意味を咀嚼してヴィジョンを浮かべてない。自分の関わってる曲も、最後まで考えないことがある。音で聴いてるんでしょうね、基本的に。
CHARAと3曲やった時も、ラフな段階から一緒にやったんですけど、歌詞に関しては語感と響き優先ですね。ここは“う”じゃないな“あ”だなとか、“いー”って伸ばした方がいいなとか、パズルのように組み合わせていって。意味で考えない。
映画でもあるじゃないですか。大したストーリーがなくても、なんとなく映像がいいとか、雰囲気がキレイとか。そういう作り方でいいと思ってるから。響きさえ良ければそれでいい。
『LUCKY』というアルバムで初めて全曲作詞したんですけど、あくまでも(高橋)幸宏さんがこの歌詞を歌ったらどうかとか、(椎名)林檎ちゃんが歌ったらどうか考えて作ったんです。自分の言葉に変えてもいいですよって渡したら、いいじゃんこれでって言われて。
昨日幸宏さんと飲んだんですけど、最近テイ君の歌詞はイケてるよって。
TOWA TEI, LEO今井, 高橋幸宏
TOWA TEI, LEO今井, 高橋幸宏© [unknown]
——ほう。
メタ(METAFIVE)の次(のアルバム)はLEO(今井)君とテイ君がもっと……とかなんとか言われて、帰りたくなりましたけど(笑)。
——では最後の質問です。
<今回Red Bull Studios Tokyoのサイトで限定公開する「TG pt.2 (Twice version)」。これはどんなVersionですか?>※音源はページ上部のSoundcloudでお聞きください
原曲のドラムとベースだけ抜き出して2回コピペして2回目は原曲のドラムとベースだけ抜き出してロング・ヴァージョンにしたものですね。
今回ジャケットのイラストを描いてくれて、この曲にもトランペットで参加してくれている五木田智央君から、トランペットが入る前のパートだけ繰り返し聞いてる、もっと長いヴァージョンを聴かせてくれと言われたので、じゃあ2回コピペしようと。2回目の方はドラムだけにして。だからそもそも五木田君のためのヴァージョンですね。Strippedというか、アカペラを聴く感覚に近いですね。
<RELEASE PARTY & RELEASE TOUR>
【東京】
records "EMO SPECIAL"
日時:3/24/2017 (Fri) START 21:00 (26:00CLOSE)
会場:montoak(表参道)
selector :
TOWA TEI
水原佑果
山本宇一
オカモトレイジ
INO hidefumi
【東京】
TOWA TEI "EMO" Release Party
日時: 4/01/2017 (Sat) OPEN 22:00
会場:SOUND MUSEUM VISION
DJ :
TOWA TEI
砂原良徳
SEKITOVA
Licaxxx
水原佑果
and more...
LIVE:
DOTAMA
and more...
【京都】
dj colaboy presents HOMESICK 32
TOWA TEI ~New Album 『EMO』 Release Party in KYOTO~
日時:4/21/2017 (Fri)OPEN/START 10:00pm 
会場:METRO
DJ:
TOWA TEI
tofubeats
HALFBY
AFR
カロリーカット
dj colaboy
Dorian
【和歌山】
TOWA TEI "EMO" Release Paty in WAKAYAMA
日時:4/22/2017(Sat)OPEN 19:00-
会場:Riche(ダイワロイネットホテル 1F)
DJ:
TOWA TEI
Shuichiro Horiuchi
kj-s
CO2
DAIAN
FUYURI
VJ:JOE
【広島】
TOWA TEI "EMO" Release Paty in HIROSHIMA
日時:5/02/2017 (Fri)START 20:00
会場:SUPER SUPPERCLUB
DJ:
TOWA TEI
and more...
【福岡】
TOWA TEI "EMO" Release Party in FUKUOKA
日時:5/04/2017(Thu) OPEN/START 21:00
会場:KIETH FLACK
DJ:
TOWA TEI
and more...
【フェス出演情報】
★GREENROOM FESTIVAL'17
日時:2017年5月20日(土)
会場:横浜赤レンガ地区野外特設会場
★森、道、市場
日時:2017年5月13日(土)
会場:愛知・蒲郡の大塚海浜緑地
テイ・トウワ
『EMO』特設サイト
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