ACE COOL
© Suguru Saito
ミュージック

ACE COOLインタビュー『まず理想を描き、辿り着くまでスキルをみがく』

2023年4月。シンプルなビートの上で64小節ひたすらスピットする【Red Bull 64 Bars】に登場したACE COOL。彼のヒップホップとの向き合い方について語ってもらったショートインタビュー。
Written by Tasuku Amada
読み終わるまで:5分公開日:
——Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでした?
ACE COOL「自分にオファーをもらう前からYouTubeで見てたんですけど、大変そうだなという印象はありました。
64小節をぶっ通しでラップしたことがなかったし、サビも無いので、どうなるかなと思ったんですけど、リリックを書いて練習していくうちに楽しくなりました。
撮影はもう本当に楽しくやらせていただいたって感じですね」
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——リリックは一気に書き上げた?
ACE COOL「いや、ちょっとずつ何日かかけて。結局2週間くらいかかったかもしれないです。
そもそも自分は普段から、書けても1日に4小節とか8小節くらいしか書けないんで。だからそれを2週間ずっと積み重ねてくって感じでした」
——その64小節で伝えたかったことは?
ACE COOL「ラップをつくって、それをどうやって売り出すかとか、どんなふうに受け取ってもらうか、っていうよりも、その<つくる>という行為自体に重きを置く、ということについていろんな角度から歌詞にしました。
具体的なリリックでいうと『行為を重んじる』とか『本質に正直にまっすぐに向き合う』って歌詞があるんですけど、そういうのは最近自分が常日頃から思ってることですね。
ACE COOL

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自分より売れてる人とか、数字的な部分で自分より上とされてる人を見ると、つらくなったりとかもするわけですよ、人間なんで。そういう劣等感みたいなものに悩んだ時期もあって。そこに陥らないようにするためにも、ラップをつくるっていうその行為自体に意義を見出してきました。
だから自分の曲がどう評価されるかよりも、それをつくることに意味があるというふうに考えています」
ACE COOL

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——ラッパーとしての理想像を一言で言うと?
ACE COOL「作品で唸らせられるような人が自分は好きですね。
近年だと、自分の思いとかもすぐにSNSで共有できるんで、それはたしかに楽なんですけど。それを自分の中にどんどんためて、ラップで消化していくっていうのがラッパーの本質なんじゃないかと、自分はやっぱり思ってます」
——ラップとの向き合い方でこだわってることは?
ACE COOL「『こういうフロウでラップしたい』と思って、頭の中ではできるけど、実際やってみると難しいっていうことがあると思うんです。たとえばRed Bull 64 Barsなら、バースが長くて息が続かないから別のフロウに変える、とか。でもそれをもうちょっとがんばってできるまでやってみるとか。
ACE COOL

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一番いいビジョンができたら、それを完遂できるような実力というか技術をまずみがいてみる、って感じですかね。できることの範囲内で何かするんじゃなくて、まず一番の理想を想像してそこに自分を近づけてくみたいな。
だからなんかわざと難しいことをしてるのかもしれないですね。でもそういうのは練習量で補えるような気が自分はするんで」
——なんというかアスリートっぽい発想にも思えます
ACE COOL「自分は辰吉丈一郎とかが好きなんで。ああいう人を見るとすごい胸が熱くなるし、自分もこんなんじゃまだまだ駄目だな、って思わされますね」
ACE COOL

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——キャリアとしてはそろそろ若手から中堅に差し掛かる頃だとは思いますが、そうすると自分ではまだまだ、日々あらたな発見や成長を感じている?
ACE COOL「そうですね。ラップをはじめて今10年で、それなりにこだわってやってきて『もうこれ以上やることはないだろう』って思ってた時期もあったんですけど、逆に今はもう課題ばかりですね。Recしてスタジオからの帰り道に、『自分はラップ下手だなあ』って。そういうのは2〜3年前よりも最近のほうが思います」
——求めるものがより高くなっているということでしょうけど。まだまだラッパーとして、この先の道のりは長い?
ACE COOL「長いですね。だから面白いのかもしれないです。あるゴールを迎えたら、その先のゴールがまた見えてくるし、それはずっと続くんでしょうね。
その先のゴールが見えなくなったら、もう止まるしかない、っていうことだと思います」
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