These sports could make you a great racing driver
© Red Bull Content Pool
Motoring

ドライビングスキル向上に役立つスポーツ 6選

偉大なレーサーになりたい? スキーやスカッシュ、射撃などがカート同様にドライビングスキル向上に役立つ理由を説明しよう。
Written by Greg Stuart
読み終わるまで:8分最終更新日:
レーシングドライバーたちがレース以外のスポーツも得意なことに気付いている人はいるだろうか? どうやらこれはただの偶然ではないようだ。
レーシングカーのドライビングを学ぶにあたり、子供の頃にたしなんだ様々なスポーツで得たスキルは非常に重要だ。体力、バランス感覚、競争心、自制心、視覚と手の協調… これらのスキルを獲得し、自分のものにするタイミングが早ければ早いほど、スタードライバーになれる可能性は高くなる。
そこで、今回は成功を収めているレーシングドライバーたちが子供の頃に取り組んでいたスポーツを調べ、その中から6つを紹介することにした(現代のレーシングドライバーの必修科目カートは除く)。ひとつでもトライしておけば、F1ワールドチャンピオンになれるかもしれない!
01

スカッシュ

効果あり:集中力 / 高温対策 / 競争心
スカッシュは熱対策に効果あり

スカッシュは熱対策に効果あり

© Red Bull Content Pool

ジェームス・ハントはF1史上最もクールな男として知られているが、少年期の彼は、英国南部でスカッシュというさほどクールとは思われていないスポーツに熱中していた。
ハントの元ガールフレンド、タオルミーナ・リエックは、かつてF1ドライバー伝記作家のジェラルド・ドナルドソンに次のように語った。「スカッシュはジェームスの強い競争心を引き出したと思う。体力的なプラスにもなったけれど、自分をより深く追い込み、自分の全てを出すためには競争心が必要だったんだと思うわ」
ラリードライバーにもスカッシュ愛好者は多い。カルロス・サインツは1978年にスカッシュのスペインチャンピオンに輝いており、アンドレアス・ミケルセンやティエリー・ヌービルなど、モナコに住む現役ラリードライバーたちもスカッシュコートで実力を競い合っている。室内スポーツであるために非常に暑く、汗をたくさんかき、しかも激しい競争が繰り広げられるスカッシュはモータースポーツとの共通点を見出しやすい。また、心肺系にも効果的だ。
02

射撃

効果あり:メンタルマネージメント / 手と視覚の協調性(ハンド・アイ・コーディネーション)
ジャッキー・スチュワートは射撃の名手だった

ジャッキー・スチュワートは射撃の名手だった

© Getty Images

F1ワールドチャンピオンに3回輝いたサー・ジャッキー・スチュワートは、若い頃に取り組んでいた射撃が冷静なメンタルを作り上げ、自分のF1キャリアにおいて大きな助けになったと断言する。
Petroliciousのインタビューで「目標物を狙う直前に緊張して神経質になっていれば、高い確率で目標物を撃ちそこなってしまうはずだ」と語っていたスチュワートは、1960年ローマオリンピックの射撃英国代表候補になったこともある。
スチュワートは次のように続けている。「レーシングカーを運転し始めた頃、射撃を通じて緊張状態は経験済みだった。だから、私はキャリアを通して自分のメンタルをコントロールできたし、大半のレースで、スタートから5周以内で勝利を確定させることができた。なぜなら、すでに自分のメンタルをコントロールする術を知っていたので、スタート直前の緊張感に影響されなかったからだ」
03

スキー

効果あり:バランス感覚
スキーはスライドのコントロールを学べる

スキーはスライドのコントロールを学べる

© Red Bull Content Pool

F1で優勝した経験を持つゲルハルト・ベルガー、そしてラリードライバーのアンドレアス・ミケルセンセバスチャン・オジェなどは幼少時のスキーでバランス感覚を身につけており、それを活かしてモータースポーツ界で成功を収めている。
過去にオルシエール・マーレットやセレ・シュバリエなどのスキーリゾートでインストラクターとして働いていた経験を持つオジェは、2013年のRedBull.comのインタビューで「スキーには、ラリーカーのドライビングに役立つ部分が沢山ある」と語っている。
「グリップを直感的に感じ取る方法が学べる。行ける場所と行けない場所が理解できるようになる。当然、スキーではスライドを学ぶ必要があるが、スライド量をコントロールする方法が学べる。さらに大事なのはスライドの止め方が学べることだ。ラリーと全く変わらないのさ」
「また、滑りやすい路面でストレスを感じなくなる。あと、スキーはとても楽しい。楽しみながらスピードに慣れることができる」
また、オジェはペタンクの大会、ブール・リヨネーズ(リヨンカップ)のチャンピオンを獲得した経験も持つ。とはいえ、これがラリーに役立っているかどうかは不明だ…。
04

体操

効果あり:バランス感覚 / 自制心
Sebastien Loeb Career retrospective gymnast

青年期に体操選手として活躍したローブ

© DPPI

セバスチャン・ローブはいかにして2004~2012シーズンのWRC9連覇を成し遂げたのか? 計り知れないほどのドライビングスキル、無尽蔵のスタミナ… これらのバックグラウンドにあるのが体操だ。フルタイムのラリードライバーになる以前のローブが電気技師として職業訓練を受けていたことは良く知られているが、彼が最初に夢中になったのは体操だった。彼は地元アルザス地方の体操チャンピオンに4回も輝いており、フランス選手権でも5位を1回記録している。
彼は今でも見事な後方宙返りができる…。
ラリーで変化し続ける路面のコンディションを読み取れるローブの希有な才能(この才能で彼はラリー・モンテカルロ通算7勝を記録した)は、彼が体操選手時代に培ったバランス感覚によるものだということは多くの人々が認めている。また、この時代が彼の強いメンタルを形成したとさえ考えている人もいる。
2014年、メンタルコーチのクリストファー・テレイエルはRedBull.comの取材に対して「(ローブのメンタルの強さは)彼の体操選手としての経験に深く関係していると確信している。体操は筋肉の協調性と脳の働きを高められる」とコメントしている。
05

2輪スポーツ(自転車 / バイク)

効果あり:バランス感覚 / レースを組み立てる力 / 競争心
モトクロスも4輪レースのトレーニングに大いに役立つ

モトクロスも4輪レースのトレーニングに大いに役立つ

© Red Bull Content Pool

元F1ドライバーのアレックス・ヴルツはシングルシーターに乗る以前からある競技のワールドチャンピオンだった。ヴルツは1986年にBMXのワールドチャンピオンに輝き、同年のヨーロッパBMX選手権でも総合2位を記録していた。当時12歳だったヴルツ少年は、BMXでの経験を通してプロアスリートになるための方法を学んだのだ。
2011年、ヴルツはMotor Sport Magazineの取材に対して「かなりシリアスに取り組んでいたよ。専属トレーナーもいたし、金銭面で全てをサポートしてくれるスポンサーもついていた。通っていた学校もすごく協力的で、時間的な余裕を与えてくれた。その結果、僕は優勝できたし、ワールドチャンピオンにもなれた」とコメントしている。
一方、ドリフトレーサーのマッド・マイク・ウィデットや、ラリーとラリークロスのスター、トラビス・パストラーナ、トロフィートラック・ドライバーのリッキー・ジョンソンなどは、モトクロスの経験を4輪レースのスキルに活かしている。また、アンドレアス・ミケルセン(今回のリストでは3度目の登場だ)も地元ノルウェーでモトクロスのナショナルジュニアチームの一員として活躍していた。Red Bull Racingのダニエル・リカルド、ルイス・ハミルトンやキミ・ライコネンなどのF1スターたちも、トレーニングのツールとしてモトクロスを活用している(ちなみに、ハミルトンはジャスティン・ビーバーと一緒にモトクロスを楽しんでいる場面を目撃されている)。ライコネンに至っては、ICE1Racing International NVというモトクロスチームを所有しているほどだ。
4輪転向以前のジョン・サーティースは2輪GPタイトルを7度獲得

4輪転向以前のジョン・サーティースは2輪GPタイトルを7度獲得

© Autosport Show

ジョン・サーティース、デイモン・ヒル、マイク・ヘイルウッドも、4輪レースへ転向する前に2輪レースで成功を味わっている。現役時代のヒルはウエットコンディションを得意としていたが、バイクメッセンジャーとしてロンドンのベルグレイブ・スクエアの周りをスライドしながら走っていた経験をF1マシンのコントロールスキルに応用していたそうだ。
06

ラリークロス

効果あり:レースを組み立てる能力 / マシンコントロール / 競争心
アンドリュー・ジョーダンはラリークロスからキャリアを開始した

アンドリュー・ジョーダンはラリークロスからキャリアを開始した

© British Rallycross Championship

「カートでは、ターマック(アスファルト)のドライビングしか学べないが、ラリークロスなら、ダートとターマックのレーススキルを学べる。ラリークロスは路面をわざと濡らすこともあるから、ウエット状態のグラベルでのドライビングも学べるのさ。さらにレースの組み立て方も学べるし、マシンに乗れる時間も多い」と語るのは、英国ツーリングカー選手権(BTCC)と世界ラリークロス選手権の両方で活躍するアンドリュー・ジョーダン。ラリークロスが若手ドライバーにもたらす利点について、RedBull.comから訊ねられた際の回答だ。
彼の意見は的を射ている。マティアス・エクストロームは地元スウェーデンで早くにラリークロスで経験を積んだあとサーキットレースへ転向し、スウェーデンツーリングカー選手権(STCC)でチャンピオンを獲得。その後もDTMでチャンピオンに輝いている。また、前出のジョーダンも英国ラリークロス選手権でチャンピオンを獲得したあと、BTCCへ活躍の場を移して2013シーズンにタイトルを獲得した。
マティアス・エクストロームもラリークロス出身

マティアス・エクストロームもラリークロス出身

© FIA World Rallycross Championship

もっと分かりやすい例を挙げれば、ラリークロスは数多くのラリードライバーに必要なスキルを与えてきた。ミッコ・ヒルボネン、ペター&ヘニングのソルベルグ兄弟もラリークロス経験者だ。
ジョーダンはRedBull.comに対して次のように続けている。「ラリークロスを続けても悪くないし、ラリーに転向しても、ターマックとグラベルのドライビングスキルを活かせる。また、サーキットレーシングに転向したとしても、レースを作る力や、グリップの低い路面でのドライビングスキルが活かせる。要するに、ラリークロスはレースを学ぶための素晴らしい場所なのさ」