— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでした?
ID「普段自分がレコーディングしてる感覚とはやっぱりちょっと違いましたね。できるだけギミカルなラップにしようとは思いながらも、64小節を一本で録るっていう制約もあるなかで、これ以上いくと逆に満足な歌唱表現ができないんじゃないかみたいなぎりぎりのラインを攻めたいと思ってのぞみました。
いい意味のプレッシャーがある現場で、自分でも結構挑戦したなって感じがします」
— リリックを書いてるときはどんなことを考えてましたか?
ジメサギさん(※今回ビートを提供したのはLEEYVNG名義)もラッパーなので、ふたりが交わるポイントみたいなものをつくれたらなと思って。ジメサギさんは映画とかゲームとかのトピックでラップすることが多いから、そのスタイルを部分的に引用させてもらって、自分なりに落とし込んだ感じです。ちょっと調べてもらうとピンとくるようなラインとかも多めに入れられたらなと思って書いてましたね。
— IDさんが音楽をつくるうえで貫いていることはありますか?
状況や環境は常に目まぐるしくて、翻弄されたりたぶらかされたりしつつも、最終的に自分の中に残る芯の部分が判断する表現が好きで。そんな自分が世の中と触れる時の摩擦が生む時間や現象が今日までの自分で、今日以降のやりがいに繋がってるんだなぁと感じてます。継続と共に届くものがあるっていう確信だけはあるんで。だから積み上げていくことに妥協しないってことですかね。
そのへんはなんか修行僧みたいなテンションでやってますね、楽しくやってますけど(笑)。
— 現段階でこれまでを振り返ってみるとどうですか?
いまちょうどラップを始めて10年なんですけど、まわりの仲間たちと一緒にラップを始めるってときに「10年はささげよう」って約束したんですよね。結局みんな10年残らなかったんですけど。だから残った側としては、孤独もあったけど、孤独っていうものと寄り添うことができたとも思ってて。それって自分に集中するって意味でもあるんですけど。ILL-BOSSTINO(現・tha BOSS)のリリックで「寂しさと寄り添い合えば寂しくない」っていうのがあって、それを大事にしてる感覚です。
だから、ほんとに超寂しくなるときもあるっすけど、その寂しさも噛み殺せば、噛み殺した男の言葉になるんで。そういう言葉が出るようになれば、ちっとはマシかなって思ってますけどね。
— IDさんが思う、理想のラッパー像とは?
ラップって人間性みたいなものがストレートに出るものですよね。だから、真人間になるって意味じゃないんですけど、筋が通っててかっこいい人間がやってる音楽は、絶対かっこよくなると思うんすよ。
あんまりおれは憧れとか尊敬とかって感覚で人を見ないですけど、筋が通ってる人を見たら背筋は伸びるし、最終的には自分がそういう理想に近づいていければいいなと思いますね。