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MFSインタビュー「“変わりつづけること”がラッパーとしてのこだわり」
シンプルなビートの上で64小節ものあいだひたすらスピットする【Red Bull 64 Bars】。このロングヴァースに挑んだMFSに、ヒップホップとの向き合い方などについてストレートに切り込んだショートインタビュー。
Written by Tasuku Amada
読み終わるまで:5分Published on
— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでしたか?
MFS「正直、今までのラッパーとしての5年間のなかでいちばんラップというものと向き合うことができたと思います。リリックを書いては“これじゃダメだ!”みたいなことを何度も繰り返して、いろんなフロウを試して…そういうのは普段もやるんですけど、今回はそのトライの回数が全然いつもと違ったっていう感じで。『64Bars』に参加できたことで、ラッパーとしてもう一歩成長できたかなという気がします。
BPM91で、ブーンバップで、しかも64小節、っていうのは私にとって新しい挑戦だったし、次の作品からはもっと自分が変わっていけそうだなという実感もありますね」
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— リリックのなかで気に入ってるラインはどのあたり?
MFS「序盤の“祐天寺”っていう地名とか、“隣の花奈はmy man”っていうのは地元の親友の名前だったり、そういうリアルな固有名詞をリリックに入れることっていままであまりなくて。そこは気に入ってます。“Abura Bar”っていうのも私がずっと通ってるバーの名前で、みんなに聴いてもらうのが楽しみだなって」
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— MFSさんがラッパーとして貫いていることは何ですか?
MFS「成長や進化は大切にしたいけど、貫いていることというのはあまりないかも。私はたぶん、一貫性っていうものがないんですよ。むしろ柔軟に変わっていくことを昔から大事にしてます。変わっていくという姿勢を“貫いている”ということなのかもしれないですね。そこに私のオリジナリティがある気がします」
— 今回はブーンバップでいこうという今の心境も、そういうポジティブな変化のひとつですね?
MFS「そうですね。すこし前まではダンスミュージック寄りの曲が多くて、それも楽しかったんですけど、“次はもっとヒップホップしたいな”っていう気持ちがあって。そんなときにこの『64Bars』のお話をいただいたので、じゃあ新しいことをやってみたいということでJJJさんと曲をつくっていきました」
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— 手応えとしてはどうですか?
MFS「楽しいけど超難しかったですね。いままではBPM135とか140くらいの速い曲が多かったから、まずリズムをうまく取ることから始まって。速い曲とちがってブーンバップには間(ま)や余白があって、リズムにガチガチにはめるよりも、ちょっと早く歌ったり、できるだけ後ろに乗せた方がかっこよかったり、一曲のなかでいろんなはめ方をしてそれがかっこよく決まったときは、いままでの曲とは全然違う気持ちよさがありますね。
余白があるぶんリリックもしっかり耳に入ってくるから、何を言うかってすごく大事で。でもなんかかっけえこと言いたいし、みたいな。だから本当にいままでにないアプローチで曲をつくったので、すごく難かしったけど、また私の新しい一面を出せたのが嬉しいです」
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— これからもジャンルにはこだわりなくやっていく?
MFS「全部乗りこなしたいというか、全部自分のものにしたいっていう気持ちがあります。どれかのジャンルにこだわるというよりも、私が乗ったらどのジャンルだとしても全部私だから。どのジャンルでも自分らしさにこだわっていればいいと思ってます。
同じことをやってても進化はできるけど、新しいアウトプットを習得していくと、自分自身がどんどん新しくなっていける気がします。それはもちろん簡単なことじゃないし、まだ自分が得意じゃないことを最後までやりきるのは精神的にも結構きつい。でもこれを超えたらラッパーとしてメンタル面でもスキルの面でももっと強くなれるだろうなって」
— 今後の展開の予定は?
MFS「マジでもっとラップが上手くなりたい(笑)。あとはシンプルに売れたいっていう気持ちも最近はあります。いまの自分の活動のフィールドやチーム体制をもっと大きくしていきたいという意味で。音楽をつづける上で関わってくれるみんなが、一緒にやっててよかったって思ってくれるようになったらいいなと思ってます」
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— 最後に、MFSさんが思う“ラッパーの理想像”とは?
MFS「やっぱりリアルってことに尽きると思います。リアルな人。リリックで想像を描いたり、夢を与えたりっていうのもいいと思うんですけど、自分が本当に思ってることとか体験してることをリアルに歌うのが私は好き。
パフォーマンスも、オケなしで自分の声一本でライブするとか、その人のリアルが感じられるのがいいと思う。だからこの『64Bars』ってリアルですよね。ごまかしが一切効かないから」
 

Red Bull 64 Bars - INTERVIEW

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