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OMSBインタビュー『祈りのように繰り返し積み重ねる——今だから思うヒップホップの楽しさ』

シンプルなビートの上で64小節ものあいだひたすらスピットする【Red Bull 64 Bars】。このロングヴァースに挑んだOMSBに、ヒップホップとの向き合い方についてストレートに切り込んだショートインタビュー。

Written by Tasuku Amada

読み終わるまで：5分Published on 2023年9月13日 · 9時00分(UTC)

— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでした？

OMSB「作り始めてから録るまでに結構時間があったんですけど、その間、コレいけんのかな？って心配ではありましたね。リリック自体は、個人的な話ですけど書きたい事があったので、それが落とし込めると思ったら結構すぐにできました。 “こうあったらいいな”って思ってる事とか、全部乗せられたと思います」

— OMSBさんが音楽をつくる上で大事にしていることは何ですか？

OMSB「こういう事がしたい、ってその時思ったことをやってきただけって感じなんですけど。でも強いて言えば、まず自分がちゃんと食らってるかどうかは大事な事ですよね」

— ラッパーとしてキャリアを積み重ねていくなかで、長く続けることの大切さを意識することはありますか？

OMSB「それって、成長の記録だと思うんですよね。やっぱり続けてたら絶対に上達するものだし。良い意味でも悪い意味でも。

続けていくなかで、自分自身の変化に気付く事もできる。ある物事に対して昔はこういうふうにラップしてたけど、今なら少し違うニュアンスで言えるだろうな、とか、一つの曲を何回も繰り返しやってるうちに、自分は本当はこういうふうに思ってたのかも、とかって自分で発見する時があって。

そういう積み重ねに意味があったなと思える瞬間は、やっぱり気持ちが良いというか、幸せな瞬間なのかなって」

ーヒップホップは人生にとってどんな存在ですか？

OMSB「まあ、いつも普通にやってる事ではあるんですけど。

でも自分の曲の中でも言ってますが、「祈り」みたいなものに近いと思うこともあります。ただひたすら、その時の気持ちを込めて繰り返していく作業というか」

ーそういう感覚になってきたのは最近のことですか？

OMSB「ここ２〜３年くらいですかね。昔はもうとりあえずイケイケになってかっこいいフロウやりたいとか、これで金稼ぐんだとか、そういう漠然とした若いなりの動機だったんですけど、今はもうちょっと客観的に自分を見てて、祈りとか信仰心みたいなノリに近いなって感じがするんですよね」

ーたぶん、近作アルバム「Alone」も、だからこそみんなの心に刺さったんだと思います。ちょっと意地悪な質問ですが、OMSBさんは誰のためにラップをしていますか？

OMSB「「Think Good」を出した辺りは、かなり表面的に、人の為って思ってた時期がありました。でもそのあと、人とか関係ないでしょって思ってる時期が暫くあって。

でも最近はまた、自分の音楽に助けられたと言ってもらえる事が増えて嬉しいので、これで元気出してくれたら嬉しいなとかって普通に思うようになりました。だから今は人の為かもしれないです。しかも自分も楽しいし、みたいな」

ーどんなラッパーとして歳をとっていきたいですか？

OMSB「自分のやってる事は根本的に変わらないとしても、でも“遅れてる”っていう感じにはなりたくないですね。

前は逆に“今イケてるもの”に対して嫌悪感があったりしたんですよ。流行を追うことに対して、そういうのちょっと疲れたわ、って思って。流行りのものを頭ごなしに避けて、聞かず嫌いになってたんですけど、今は、それこそ人の為にも曲を作りたいなら、とりあえず楽しめることが大事で、自分が楽しめるものを見つけられるなら、流行を追っていてもなにも問題ないと思ってます。