— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでしたか?
柊人「めちゃくちゃ光栄でした。一発に思い込めて、ってことを意識してのぞんだんですけど、いろんな学びがありました。本当にありがとうございました。
リリックは、自分が常に考えている本当に伝えたいことを本気で書きました。自分は元々沖縄の漁師で、そこから音楽で食べさせてもらえるようになった今までのことも振り返りながら、身内や大切な人たちのことを歌っています。今、アーティストとして自分自身の環境は良くなっていますけど、大切な仲間のことを考えると、一緒に良くなっている人もいるし、なにかの理由で落ちちゃったりみたいな人もいる。でもこの曲を聴いてみんなでバイブスを上げられたらいいなと思いながら書きました」
— 64Barsにはいろんなスタイルがありますが、64小節をつかって自分の話ではなく仲間のことを歌おうと考えたのは、柊人さんらしいとも言えるのでは?
柊人「そうですね。でもそのマインドは、CHOUJIさんからもらったものでもあるんです。あるときCHOUJIさんのぶちかましてたワンマンを見て、ちょうど誕生日も近かったので、次にイベントで会ったときにシャンパンを持って『飲みましょう!CHOUJIさん!』って行ったんですけど、CHOUJIさんが『なんか喜びきれない』って話してくれたことがあって。『だって見てみー、地元はトラブルだらけだし、ストリートは問題だらけだし、病むやつは病むし、俺らだけで喜びきれないよ』って。その言葉にめちゃくちゃくらったんですよね」
— ではリリックのなかで気に入ってるラインを挙げるとしたら?
柊人「フレックスするチェーンはないけれど/自慢したい仲間がいる
ってところ。ブリンブリンを纏うのもかっこいいんですけど自分は持ってなくて、でもその代わりに、人に恵まれてるってことを誇りに思ってて。先輩も後輩も、成功してる人もそうじゃない人も含めて、めちゃくちゃ恵まれてると思います」
— 柊人さんが音楽をつくる上で貫いていることは何ですか?
柊人「自分はめちゃくちゃ歌が上手いとは自分でも思ってなくて、まだまだ修行してるんですけど、目指したいのは、自分の音楽がいろんな人に脳内再生されるようにまでなること。たとえば誰かが、やばい状況とか、がんばらなきゃいけない状況になったときに、自分のつくった音楽が頭のなかで聞こえてるみたいな状態になれたら一番すごいと思うんですよね。そこまでいけたらいいなと思ってます」
— では柊人さんが、生きる上で貫いていることは何ですか?
柊人「いまカッコつけたこと言おうと思って考えてみたんですけど、正直音楽以外はまだまだで、なにも貫けてないですね(笑)」
— こうありたい、と思うことは?
柊人「自分自身のそのまま、ありのままでありたいです。二面性がないというか。自分に嘘をつかずに生きていたいですね」
— 前回レッドブルスタジオに来てもらったのは2023年6月のRed Bull RASEN。この2年のあいだでどんな変化がありましたか?
柊人「この2年で、いろんなところにライブで呼んでもらえるようになったりとか、皆さんのおかげでそれまでは想像もしてなかったような状況に連れてきてもらいました。でもいま2年って聞いて、その間にもっともっと作品出せたなって正直思います…今もアルバムつくってて、ほぼ毎日スタジオに入ってます」
— 今の日本のヒップホップシーンに対して思うことは?
柊人「シーンのなかで、唯一無二でありたいですね。いろんな人と縁があって一緒に曲をやらせてもらうことも多いんですけど、自分と一緒にやればその人のいいところとか、今までなかった部分が出てくるような、そんなふうに寄り添える存在になりたいです」
— では最後に、柊人さんが思う「ラッパーの理想像」とは?
柊人「ほんとにかっこいいラッパーだらけでいっぱいいますけど、みんな自分のやってることに対して、自分の言葉に対して、自信があるんですよね。自信といっても、独りよがりじゃなくて、まわりのためを思いながら努力を重ねている、だからこそ自信が現れているような人が、かっこいいなと思いますね」
Red Bull 64 Bars - INTERVIEW