海苔と寒天類
© Lukas Pilz
ウルトラ ランニング
ウルトラランナーがレース中に摂取する意外なもの
ウルトラランナーとはただでさえ奇特な人々だが、さらに理解不能なのは彼らがレース中にこれらの奇妙な食べ物を摂取しているという事実だ。
Written by Josh Sampiero
読み終わるまで:5分Published on
常識を遥かに超えた長距離を走るウルトラマラソンが万人に奨められるものではないことは、当のウルトラランナーたち自身も認めるところだ。たしかに、ウルトラランナーたちは少しばかり頭のネジが外れてしまっているところがある。肉体的・精神的に過酷さを強いる途方もない長距離をたった1人で走ることを自主的に楽しむというのは、やはり常軌を逸していると言わざるを得ない。さらに奇妙なのは、彼らがレース中に摂取しているその食料だ。著名なマラソンライターのクリス・マクダウガルはかつてこう語った ―「ウルトラマラソンの本質とは、運動そのものやその景色を楽しむというよりも、むしろレース中にどれだけの量を食べたり飲んだりできるかという点に尽きる」― この言葉の裏付けとなるのは、レースの優勝/完走を目指すウルトラランナーたちは、レース中に大量の栄養素を摂取しなければならないという事実だ。今回は、ウルトラランナーたちがレース中に摂取している奇妙な食料を紹介していこう。
肉の旨味が凝縮
肉の旨味が凝縮© Lukas Pilz

1:アフリカンスタイルのビーフジャーキー

奇妙度:3
メリット:軽量だが豊富なプロテインが摂取できる
食べ方:ひたすら噛み続ける
かつてドラケンスバーグ山脈での複数日にわたるウルトラマラソンに挑んだライアン・サンデスは、ビルトング(南アフリカ風のビーフジャーキー)や乾燥ソーセージ類を頻繁に摂取したそうだ。これらはウルトラランナーの間では定番の携行食で、塩漬けの乾燥肉は軽量でありながらプロテインと脂質を豊富に含み、肉体消耗時の栄養補給に適している。
まるでハロウィン
まるでハロウィン© Lukas Pilz

2:大量のキャンディ

奇妙度:9
メリット:糖分はエネルギーに転化するのが早く、脳も活性化させる
食べ方:包み紙をはがして、口の中に含み続ける。溶ける前にのみ込んでしまわないように!
米国人の女性ウルトラランナー、ジャックス・マリアシュ・コウデレは世界屈指の過酷なレースと呼ばれるAtacama Crossingを完走したばかりだ。エナジー・ゼリーやチョコレート・バーなどの現代的で効率の良い携行食をレース中に摂取していたのだろうと思いきや、実はそうではないようで、実際にレース中摂取していたのは、キャンディ・バーやグミ、タフィーといった糖分をたっぷり含んだ菓子類だった。彼女によると、ウルトラランナーたちの中にはPop-Tarts(=ポップタルト。フルーツを練り込んだビスケットの表面をたっぷりと砂糖でコーティングした米国のジャンクなお菓子)をレース中に食べるランナーさえいるそうだ。ウルトラマラソンのような過酷なスポーツとキャンディのような身近なお菓子は一見なかなか結びつきにくいが、走りながら糖分を補給するにはキャンディが最も適している。
粗食への回帰
粗食への回帰© Lukas Pilz

3:ウルトラランナー仕様のマッシュポテト

奇妙度:6
メリット:炭水化物と高カロリー、そして塩分
食べ方:原始人のように手づかみで。スプーンは重量増になる。
前出のライアン・サンデスがビーフジャーキー以外に携行する食料のひとつに、マッシュポテトが挙げられる。しかし、それはシンプルな塩コショウだけの味付けではなく、オリーブオイルとパルメザンチーズを加えてさらに高カロリーに仕立てたウルトラランナー仕様のものだ。これをジップロックに詰め込んで携行し、レース中に手づかみで食べる。
オイル漬けナッツのスムージー
オイル漬けナッツのスムージー© Lukas Pilz

4:喉ごしの悪いスムージー

奇妙度:9
メリット:簡単に作れて腐りにくく、カロリーも豊富
食べ方:不明
上の写真からスムージーを連想するのは荒唐無稽に思えるだろうか? しかし我々が今回の企画の着想を得たレシピこそ、この「ナッツ・スムージー」だ。砂漠での260kmもの距離をノンストップで走破したクリスチャン・シースターは「レースの際、オリーブオイルの瓶にナッツやコーン、デーツなどを入れて混ぜ合わせたものを携行した。1週間もするとさすがに風味はかなり落ちるけど、それでもカロリーを豊富に含んでいるんだ」と語る。このオイリーで粗いスムージーは、砂漠の民ベドウィンたちの食文化からヒントを得たものだ。喉ごしは相当に悪いはずだが、それでも砂を噛むよりは随分ましなはずだ。
海苔と寒天類
海苔と寒天類© Lukas Pilz

5:海苔

奇妙度:8
メリット:内臓に負荷をかけず塩分が摂取できる
食べ方:ポテトチップスのように手づかみして齧る
富士山の裾野を走るランナーたちの間では携行食として海苔や乾燥させた小魚類がしばしば用いられるそうだ。これらは軽量で、しかも内臓に負荷をかけずに塩分が摂取できるため、体温が上昇して大量の汗をかくウルトラマラソンの塩分補給には最適だ。ふだん海藻類を摂らない西洋人の胃がはたしてこれらをすんなり消化できるかどうかは不明だが、もちろん個人差はあるだろう。
寿司とスニーカー
寿司とスニーカー© Lukas Pilz

6:生魚/寿司

奇妙度:8
メリット:良質なプロテイン
食べ方:箸は必要なし。ゆっくり走りながら指でつまんで食べる
ウルトラマラソンのエイド・ステーション(補給ポイント兼救護所)に寿司が用意されていることがある。プロテイン豊富な生魚と炭水化物を組み合わせた寿司は、あなたが生魚に抵抗がない限りは理論的にもきわめて優れた栄養補給食品だ。もし箸が下手でもご心配なく。寿司は指でつまんで食べるのがオツだ。
素材の旨味をぎゅっと凝縮したスープ
素材の旨味をぎゅっと凝縮したスープ© Lukas Pilz

7:スープ

奇妙度:5
メリット:豊富なプロテイン
食べ方:ゆっくり走りながら素早くすする
おばあちゃんが作ってくれるチキンスープとは近からずも遠からず、といったところだろうか。近所の肉屋から鶏ガラなどを買ってきて、数種類の野菜類と一緒にひたすら煮込んで味付けするだけ。この栄養豊富なスープをレース中に摂取すれば、カルシウムや鉄分を筋肉と骨に補いつつ、水分と塩分も補給できる。唯一不便なのはかさばることだ。従って、このようなスープ類は携行する代わりにエイド・ステーションに用意されている場合が多い。
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