Star Wars Han Solo's Millennium Falcon
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Motoring

SF映画ベストビークル 8選

DeLoreanからミレニアム・ファルコンまで、SF映画に登場する素晴らしい乗り物の数々を集めてみた。
Written by Bayo Olukotun
読み終わるまで:10分Published on
SF映画は宇宙やタイムトラベル、突飛なアイディアだけが魅力ではない。クールな装置や機械もその魅力のひとつだ。もちろん、SF映画に登場する全ての移動手段がクールなわけではなく、やや手抜きと思えるものもある。しかし、いくつかのビークルはSF映画の聖典にその名をしっかりと刻みつけており、他とは一線を画している。今回はSF映画史にその名を残すに相応しいと我々が判断したビークルをいくつかピックアップした。空を飛ぶものや歩くものなど形態は様々だが、いずれも秀逸だ。

ミレニアム・ファルコン(『スター・ウォーズ』シリーズ)

ミレニアム・ファルコン

ミレニアム・ファルコン

© starwars.ea.com

正直に言って、今回のリストは広大な『スター・ウォーズ』ユニバースに存在するビークルのみで構成しても良かった。なぜなら、『スター・ウォーズ』に登場する数々のビークルはSFデザインにパラダイムシフトを起こし、人々のSFに対するイメージを一変させたからだ。結局、最後はSF愛を満遍なく注ぐことにしたのだが、その中から突出したビークルを1台選ぶとするならば、やはりそれはミレニアム・ファルコンになるだろう。
ランド・カルリジアンとのカードゲーム勝負に勝ってハン・ソロがせしめたコレリアン・エンジニアリング社製のこの宇宙船は、特別美しいデザインではない。実際、(これは『スター・ウォーズ』とこのシリーズの生みの親、ジョージ・ルーカスの天才性が垣間見える部分でもあるのだが)このシリーズに登場する全キャラクター(ハン・ソロとランド、チューバッカとレイを除く)はミレニアム・ファルコンをクールなルックスの宇宙船として見ていないという設定も用意されている。シリーズの登場キャラクターの大半から「ガラクタ」として扱われている。この反帝国密輸チームが乗り込むビークルだが、「銀河最速」を誇っている。ケッセル・ランを12パーセルで飛行することができる(ちなみにこの文はナンセンスだ。というのも、パーセクは距離の単位で、時間の単位ではない)上に、銀河帝国軍のスター・デストロイヤーよりも速い。この気取らない宇宙船はSF映画史上に燦然と輝く、最もアイコニックで、最も意外な戦闘力と魅力を備えた宇宙船のひとつとして高く評価されている。

イェーガー:ジプシー・デンジャー MKIII(『パシフィック・リム』)

意外なチョイスだと思う人は多いだろう。イェーガーはギレルモ・デル・トロ監督が手がけた、面白いが疲れるモンスター映画『パシフィック・リム』に登場するロボットで、ただのビークルではなく、超ハイテクのサイバースーツだ。日本のアニメからヒントを得て生み出されたこの人型ロボットは、高層ビルほどの高さ(全長80m前後)で、プラズマ砲や巨大な剣など、様々な武器を備えている。また、空と海も問題なく行動できる。
主人公の2人、ローリー・ベケットと森マコが操縦するイェーガー:ジプシー・デンジャーは、原子力を動力源としているカイジュウ退治用メカだ。ローリーとマコは脳(ひとりひとつの脳半球を負担)を “ドリフト” という方法でイェーガーと接続することで、この人型ロボットの非常に複雑なシステムに指示を出している。次元を自由に行き来する巨大怪獣とのバトルにおいて、イェーガーは非常に役立つ存在なのだ。

アラテック・リパルサー製74-Zスピーダー・バイク(映画『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』)

今回のリストに『スター・ウォーズ』シリーズからもう1台選ばれることを予想していた人は多かったはずだが、X-ウィングかAT-ATを予想していたのではないだろうか? しかし、それでは芸がないというものだ。また、空飛ぶバイクにまたがる夢を見たことがないというのは、80年代を知らずに育ったか、電気羊の夢さえ見られないアンドロイドのどちらかだ。
The Speeder Bike from Star Wars is a flying motorcycle and who wouldn't want one of these?

スピーダー・バイク

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オタクと映画マニアの間で『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジーの中で最も詰まらない作品とされることが多い『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』だが、オリジナル・トリロジーの中で最もアクションシーンが多い作品だ。その中で最も印象的なシーンが、惑星エンドアの森(ロケ地:北カリフォルニアのチータム・グローブ)のスピーダー・バイクのチェイスシーンで、これは映画史に残る革新的なチェイスシーンとして知られている。
アラテック・リパルサー製74-Zスピーダー・バイクは、タービンパワーを動力とする、レーザー砲を備えた飛行可能なモーターサイクルで、高速・俊敏・静音の3拍子が揃っているこの空飛ぶバイクは、索敵や迷宮のように入り組んだ緑の惑星の移動に適している。尚、エンドアでライディングをすれば、この惑星に住むリアル・テディベアと仲良くなれるチャンスもある。

ガンスター(映画『スター・ファイター』)

The Last Starfighter was one of the first movies to use CGI.

ガンスター

© Universal Pictures

山間にある肉体労働者階級の町で育った少年は日々の生活に退屈しており、そこから逃げ出すことを夢見ていた。やがて、その少年はその町に置かれていた宇宙船を操作するアーケードゲームに夢中になっていく。だが、実はそのアーケードゲームは平和主義者の絶滅を目論む異星人の侵略から、自分たちを救ってくれるパイロット候補を見つけるために宇宙人が設置したものだった。そして、ゲームを通じて才能を見出されたその少年は、彼らと共に宇宙の果てに向かい、恐ろしい異星人との最終決戦に挑むのだった…。
映画『スター・ファイター』のストーリーはありふれているが、この映画の知名度は低い。『スター・ファイター』は初めてCGを映画に本格的に導入した映画として知られており、主人公アレックス・ローガンが駆る宇宙戦闘機ガンスターも、クールで美しいCGで描かれている。また、ガンスターはクレイジーな武器を数多く備えている。その代表と言えるのが、「デス・ブロッサム(Death Blossom)」で、これは宇宙船がジャイロのように回転するオールレンジ攻撃だ。地球が異星人に侵略された時のために、ガンスターを1機用意しておいても良いだろう。

キャタピラー製P-5000パワーローダー(映画『エイリアン2』)

Aliens better watch out when this futuristic forklift comes around.

パワーローダー

© Twentieth Century FOX

通常のゼノモーフでは恐ろしさが足りないだろうということで、エイリアン・クイーンとのタイマン勝負が用意される。しかも、銃火器系は全て使用不可能で、エイリアン・クイーンの酸性のキスを逃れるためには、未来感覚溢れる人型フォークリフトに乗り込むしかないというシチュエーションも追加される。
そのフォークリフトは当然ながら重量物運搬用だったが、我らがリプリーは、このキャタピラー製P-5000パワーローダーを最強のバトルロボットに変えることに成功した。追い込まれたリプリーが乗り込んだパワーローダーはまさに八面六臂の活躍で、エアロックからエイリアンを宇宙の闇へと放り出した。キャタピラー社はこのパワーローダーが対地球外生命体戦争に使用されることを予想していなかったかもしれないが、最も意外なものが最も有効な武器になることがあるのだ。

DeLorean DMC-12タイムマシン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)

DeLorean's time machine from Back to the Future. Flux capacitor fluxing? Good. Now just grab some plutonium and you're ready.

DeLorean DMC-12

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世の中には無数のタイムマシンが存在する。光り輝く巨大機械のようなルックスのものがあれば、バイオリンケースのようなルックスのものもある(映画『プリデスティネーション』参照)。しかし、エメット・ブラウン博士のDeLorean型ほどスタイリッシュなルックスのタイムマシンは他には存在しない。
誰もが知っている通り、このタイムマシンを動かすためにはプルトニウムと1.21ギガワットの電力、そして最低速度88mph(141.6km/h)が必要だが、このどこか頼りないタイムマシンは、物理法則の否定とは楽しいものなのだと思わせてくれる。また、未来へ向かってアップグレード(ミスター・フュージョンと反重力ホイールの追加)ができるようになれば、時限転移装置を簡単に作動させることができるようにもなる。自分の好きな時代にタイムトラベルできるなら、まずは1980年に向かうのが良いかも知れない。DeLoreanの生みの親ジョン・デロリアンに正しくビジネスをするように伝え、DMC-12の生産台数を増やすように仕向けるのだ。

ライトサイクル(『トロン:レガシー』)

A baton that turns into a motorcycle… Where do we sign?

『トロン:レガシー』のライトサイクル

© Disney Enterprises, Inc.

2010年に公開された『トロン』の続編に登場し、2輪マニアを呆然とさせた光り輝くモーターサイクルには2バージョンが存在する。1982年のオリジナルに登場したライトサイクルがファーストバージョンで、続編『トロン:レガシー』に登場したライトサイクルがセカンドバージョンだ。キャノピーで覆われているコックピットを備えているセカンドバージョンは80年代のファーストバージョンの意匠がそのまま引き継がれているが、劇中の設定では “第5世代” とされる。ダニエル・サイモンがデザインしたこのニューバージョンのブラックを基調とした流線型のボディと光り輝くハイライトは、我々の胸をさらに大きく高鳴らせる。
デジタル生成された自分の父親の姿をした敵に追われている時に、パンツのポケットに入れておいたバトンを出すだけで、最高にクールなモーターサイクルに乗れるのは非常に便利だ。
しかし、このSFマシンの素晴らしいところは、このマシンを現実に変えられるだけの熱心なファンがついているという事実だ。Parker Brothers Conceptsが数年前からNEUTRONという名前のライトサイクルを限定数生産しているので、約6万5,000ドル(約715万円)の予算があれば、SFドリームを叶えることができる。

スピナー(『ブレードランナー』)

『ブレードランナー』をまだ見ていないことを認めるべきだ。10年前からこの映画を「絶対に見たいSF映画」のリストに入れている人や、「部分的に見た」という人はいる。しかし、最後まで通して見た人はいないはずだ。そして、我々はその人を責めることはできない。
リドリー・スコット監督が手がけたこの映画は映画史に残る革新的な1本としての地位を確立しているが、この映画が公開された1982年頃のハリソン・フォードと同義だった「アクション満載のアドベンチャー」からは大きくかけ離れていた。近未来的ではあったが、『ブレードランナー』にアクション映画的な楽しさは一切存在しない。
その代わり、このSF映画はテクノロジーと完全への執着が人類を滅ぼす可能性があることを、現実的かつ残忍に描いている。その中で数少ないポジティブな未来のひとつに数えられるのが、スーパークールな空飛ぶクルマだ。
主人公デッカードとミステリアスなパートナー、ガフ(SFテレビ番組『GALACTICA/ギャラクティカ』で知られるエドワード・ジェームズ・オルモスが演じた)が乗り込んだ警察車両スピナーは、劇中では主にパトロール用として使用されているが、そのデザインはオリジナリティに溢れており、数多くの後発SF映画に大きな影響を与えている(例:『バック・トゥ・ザ・フューチャーII』や『フィフス・エレメント』の警察車両、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲』のクルマ型ビークルなど)。スピナーのような空飛ぶクルマが1台あれば、AIが進化しロボットと人間の境界線が完全に消えた時代の生活ストレスから、自分を解放する助けになるだろう。
『ブレードランナー2049』の公開が迫っているが、この映画が公開されれば、オリジナルのスピナーを再構築したニューマシンが確認できるはずだ。しかし、オリジナルの『ブレードランナー』同様、人間とレプリカントのどちらがそれを運転することになるのかは、SFマニアの永遠の議題になるはずだ。