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ミュージック

アンビエント・ミュージックを代表するアーティスト 8選

エレクトロニック・ミュージックを代表するジャンルのひとつを語る際に欠かせない重要なアーティストをNick Höppnerなどがピックアップした。
Written by Josie Roberts
読み終わるまで:9分公開日:
近年、アンビエント音楽がある種の復活を遂げている。
2017年には、Kaitlyn Aurelia Smithの甘美なシンセアルバム『The Kid』や高田みどりが1983年にリリースしたクラシックアルバム『Through The Looking Glass』が様々なメディアから高い評価を得た。
また、Bandcampがまとめたベストアンビエントリストをチェックすれば、この曖昧な定義のジャンルで現在多種多様な音楽がリリースされていることが理解できる。
ヒーリング的な作品、不気味な作品、メランコリックな作品、瞑想的な作品、鎮静作用のある作品、精神を浄化させる作品 - 方向性を問わず、リスナーを周辺環境に引き込んで思考を促すこの音楽ジャンルに一定のニーズがあるのは明らかだ。
そして、クラブシーンでもアンビエントは復活を遂げている。1990年代のクラブシーンで人気があった “チルアウトルーム” がUKのクラブやフェスティバルで再び用意されるようになっているのだ。
8月末から9月頭にかけて開催されたField Maneuversでも、クッションやたき火が用意されたAmbient Caféという名前のスペースが展開され、DJたちが踊り疲れたレイバーたちに心が落ち着くサウンドトラックを提供した。
そのシンセサウンドと同じくらい茫洋としているこのジャンルをもう少し深く理解するために、今回はそのAmbient Caféに出演した、Nick Höppner12th IsleHigh Fashion TechniqueMiro sundayMusiq(ノースロンドンのラジオ局Netil Radioの創設メンバーで、日曜朝にアンビエント番組『Moring Transitions』をホストしている)の4組のアーティストとレーベルにアンビエントを語る際に避けては通れないアーティストを選んでもらった。
下に紹介しているMiro sundayMusiqの丁寧で繊細なアンビエントDJミックスを聴きながら、クラシックアンビエントアーティスト8組をチェックしてもらいたい。
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Mixmaster Morris

選出者:Miro sundayMusiq
Mixmaster Morrisはアンビエントシーンを長年牽引しているアーティストのひとりだ。
1990年代後半、共産主義崩壊後のスロヴァキアに住んでいた僕が彼を知るきっかけになった作品は、『Mixmag Live Volume 9』だね。このミックスは本当に衝撃的で、僕のDJへのイメージを完全に変えることになった。
Mixmaster Morrisは魔法使いだよ。彼はロングセットの最後に “光を示す” ことができる。Mixcloudの彼のミックスを聴いていけば、それぞれにストーリーが備わっていることが理解できるし、世界のバランスはまだ崩れていないんだと思える。
アンビエントは感情を目覚めさせたり、気持ちをリラックスさせたり、瞑想状態に入ったりするための音楽で、Mixmaster Morrisはその真の伝道師なんだ。

Alapastel

選出者:Miro sundayMusiq
Alapastelこと、スロヴァキア人アーティストLukáš Bulkoのデビューアルバム『Hidden For The Eyes』は、ネオクラシカルとエレクトロニック・ミュージックの美しいコラージュで、スロヴァキアの民謡の要素も含まれている。
僕はスロヴァキア出身だけど、これは自国の民謡を誇り高く取り入れていると思える初めてのアルバムだった。
クラシック音楽の作曲手法を取り入れているけれど、非常にモダンなアプローチで制作されている。デリケートなバランスが感じられるエモーショナルでパワフルな音楽だ。
Alapastelは注目のアーティストだよ。彼の旅は始まったばかりだという感触を得ているんだ。

Michael Turtle

選出者:Nick Höppner
Michael Turtleは狭義的にはアンビエント・アーティストではない。彼の音楽はリズムが重視されている。元々、正式な音楽教育を受けたパーカッショニストだしね。
だが、私はアンビエントを "制限の緩いジャンル" として捉えている。このジャンルの境界線は透過性が高く、他の多くのジャンルからの影響をスムーズに受け容れている。
1980年代初頭、当時20代だったMichael Turtleは、実家のリビングルームにありとあらゆる機材を持ち込んで、Tascam初の4トラックレコーダー、Portastudioにその色鮮やかでユニークな音楽を詰め込むと、その中のいくつかを非常に限られた枚数でリリースした。
それから約40年後、アムステルダムに拠点を置くレーベル、Music From Memoriesがその一部を再発し、さらには未発表トラックを組み合わせてアルバム『Phantoms Of Dreamland』と『Return To Jeka』をリリースした。2枚とも衝撃的だった。
4トラックレコーダーで非常に奥深いソニックユニバースを作り出せる彼の才能は信じられないほど素晴らしい。Michael Turtleの音楽はどれも非常に革新的で、説明が困難だ。
不思議な前衛的エナジーに溢れているんだが、上手く言葉にできない。奇妙でジャズ感もあり、ファンキーでトリッピーでもあるが、このような印象は、彼のユニークな空間の捉え方や、サウンドの配置、斬新なアレンジから来ている。
彼の音楽の大半は軽快で、ユーモアも感じられる。まさにインスピレーションの源と言える音楽だよ。

Nurse With Wound

選出者:Nick Höppner
私はNurse With Woundについて詳しいわけではない。実際、私が知っているのは今回紹介しているアルバム『Soliloquy For Lilith』だけだ。
Nurse With WoundことSteve Stapletonは、1988年に妻のDiana Rogertonとこのアルバムをレコーディングした。数台のエフェクターを接続して生まれるそのフィードバックループだけで構成されていて、外部からの信号はひとつも加えられていない。
レコーディング中にStapletonは、自分がエフェクターに近づくとノイズが変化することに気付いたため、このアルバムには彼がエフェクターの上で指を動かしている “演奏” も収録されている。
シンプルなセットアップと偶然の発見によって生み出されたこのアルバムは、私が知っている中で最も瞑想的なドローン作品のひとつだ。ヒプノティックでスケールも感じられる、圧倒されるようなアルバムだ。

X.Y.R.

選出者:12th Isle
12th Isleはアンビエントと深く結びついているレーベルと言ってしまって構わないと思う。2018年前半にはサンクトペテルブルク在住のアーティストVladimir Karpov(aka X.Y.R.)のアルバムをリリースした。
この作品は、彼が限定リリースしていたカセットテープ作品『El Dorado』に収録されていたトラックが含まれている。彼は、ソ連時代のヴィンテージシンセを使って、珍しいサウンドを備えたアルバムを作り出すことに成功している。
また、彼の作品は、1970年代のスペースミュージックから大きな影響を受けている。1980年代初頭のニューエイジ的な要素も多少感じられるね。
『El Dorado』では、木管楽器とオモチャの打楽器をルーパーで鳴らしながら、Tosya Chaikinaのヴォーカルを加えている。このサウンドが、X.Y.R.の作品をシンセサイザーだけで作られている他のモダンアンビエントとは違う存在にしているんだ。

Cucina Povera

選出者:12th Isle
Cucina Poveraのアルバム『Hilja』は、非常にミニマリスト&ローカルな作品で、2018年1月にNight Schoolからリリースされた。
彼女は「人間の声が世界初の楽器」という考えを持っていて、複数のディレイでヴォーカルをループさせながら、複数の言語を組み合わせたスポークンワードのマントラや、舌打ち、ヒスノイズなどを生み出している。
このアルバムはピュアでありながら、非常にエクスペリメンタルで、彼女のライブパフォーマンスはほぼ全てが即興だ。僅かなシンセパターンが粗いサウンドにフレッシュな次元を加えることもあるけれど、それがメインに来ることはない。
理論上はアンビエントではないけれど、彼女の音楽は徹底的に “サブフロア” だ。Night Schoolから次のアルバムがリリースされる予定だし、来年もリリースが続くはずだよ。

Chihei Hatakeyama

僕は日本のユニークなアンビエントに夢中なんだ。上手く説明できないけれど、ずっと聴いていたい特徴が備わっている。Chihei Hatakeyamaは、この独特の発展を遂げてきたシーンの新たな進化と言えるアーティストだ。
彼は5分のトラックで大海原への航海へ連れ出してくれるパワーを備えているアーティストで、彼の音楽には、他では見つけることが難しいある種の高揚感がある。

Helen Ripley-Marshall

Helen Ripley-Marshallは僕に言わせれば、アンビエントシーンで忘れられているアーティストのひとりだ。彼女はBrian Enoのようなアーティストの陰に隠れてしまっていたし、リリース数も少ないけれど、量より質を重視していた。
アンビエント・ミュージックの良さは、それまで感じたことがなかった感情を沸き起こさせるところにあると思うけれど、彼女のアルバム『Green Chaos』はまさにそういうアルバムだった。