中村輪夢
© Hikaru Funyu
BMX

中村輪夢 - 世界王者にも輝いたトップBMXライダー

BMX最高峰コンテストの一つ X Gamesで史上最年少メダリストという偉業も達成した若きBMXライダー、ナカムラ・リムの戦績と強みを紹介!
Written by Matsui Hiroki / Edited by Hisanori Kato
読み終わるまで:7分Updated on
近年、日本でBMXフリースタイル・パークがかつてない盛り上がりを見せている。2017年にはJFBF(全日本フリースタイルBMX連盟)主催の第1回全日本BMXフリースタイル・パーク選手権、2018年と2019年にはUCI(国際自転車競技連合)のUCIワールド杯、2019年にはFISE HIROSHIMAワールドカップなど数多くの大会が日本国内で開催された。
  
そんな中、数々の大会で活躍し、シーンから熱い視線を集める日本人BMXライダーがいる。
  
それが今回の主役、中村輪夢(なかむら りむ)だ。
  
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◆世界が注目するトップBMXライダーの幼少期に迫る!

京都でBMXショップ、HANGOUTを経営する父親のもとに生まれた中村輪夢は、車輪のパーツである“リム”の名を授けられたまさにBMXの申し子。
 
家庭環境もあるが、3歳から自然とBMXに乗りはじめ、大会に初出場したのは5歳というBMXの英才教育を受けて育った。
 
小学校高学年にもなると出場する大会という大会のキッズクラスで優勝するなど、才能を開花させていった。
 
BMXに魅せられた輪夢少年はさらなる高みを目指すため、中学生からプロクラスに転向し世界を舞台に戦い始める。
 
そして、2015年にアメリカで開催されたRecon Tourの13-15歳のクラスで見事優勝し、一躍同世代のBMXライダー達のトップに躍り出た。
 
さらに2016年、世界中のライダーが参戦したG-Shock Real Toughnessで優勝(※すぐ下の動画をチェック)を掻っ攫い、国内BMXシーンに大きな衝撃を与えた。
『 G-SHOCK REAL TOUGHNESS 2016 』
  • スケートボード、ブレイクダンス、BMXフラット、BMXストリートが一堂に会し、アスリート同士でスキルを競い合うG-SHOCK REAL TOUGHNESS。BMXストリートに出場した中村輪夢はアグレッシブなライディングで優勝を果たした。
  • 2:58〜 のAir(※1)は当時14歳とは思えない高さ。Airで高さが出せるからこそ可能な5:38〜 の余裕のあるTailwhip Air(※2)。6:31〜 にはランプのプラットフォーム柵へのBar Spin to Double Peg Stall(※3)で会場を盛り上げることを忘れないプロ意識を見せつけた。
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◆最大の武器(強み)とこれまでに達成した偉業の数々!

上の動画でもお伝えした通り、Airの高さこそが中村輪夢の強み。
 
BMXフリースタイル・パークは、制限時間内にパーク内に設置されているバンクやランプ、カーブなどのセクションを使ってトリックの難易度、完成度を競う競技のため、いかに高難易度のトリックをミスなくメイクできるかが鍵になってくる。
 
彼の持ち味である高いAirは長い滞空時間があるため、高難易度のトリックのメイク率が上がるというわけだ。
 
幼少期から磨き続けてきた安定して高いAirをメイクするスキルと「誰よりも高く、誰よりも目立つ」というライディングスタイルが中村輪夢を世界レベルに引き上げた。
 
その後の世界クラスのコンテストでの活躍がそれを証明している。
 
2017年の第1回全日本BMXフリースタイル・パーク選手権優勝で日本一の称号を手に入れたのを皮切りに、シニアイヤー初年度となる2018年にはFISE World Seriesに参戦。初参戦にも関わらずシリーズ中3大会で決勝進出し、年間ランキング世界6位という成績を残す。
 
そして2019年のFISE Hiroshima大会で日本人初表彰台となる準優勝を果たし、日本のBMX界に衝撃を与えた。周囲の期待が高まるFISE Chengdu大会(※すぐ下の動画をチェック)ではプレッシャーを跳ね除け、高難易度トリックのシークエンスのパーフェクトランで優勝をもぎ取った。
『FISE Chengdu 2019』
  • FISE Chengdu大会でのウィニングラン。悪天候のためファイナルは行われず、セミファイナルで最高点をキープしていた中村輪夢がそのまま優勝となった。
  • 0:06〜 のファーストトリックは、クウォーターパイプでのBarspin to No-hander(※4)。シンプルなトリックながら驚異の高さで会場を沸かせた。そして長い滞空時間を活かした0:17〜 のBack Flip Triple-Barspin(※5)。ラストトリックは完成度の高い720(※6)を決めるパーフェクトランで納得の最高得点をマークした。
極め付けは、BMX最高峰コンテストの一つであるX Games Minneapolis大会でのSilver Medal獲得。この大会で中村輪夢はX-Games24年の歴史においてBMXパーク史上最年少メダリストという偉業を達成した(※すぐ下の動画をチェック)。
『X Games Men's BMX Park 2019 』
  • 終始安定したライディングとトリックの完成度の高さでSilver Medalを獲得し、17歳による大番狂わせと言わしめた本大会。
  • 会場がどよめくほどのBig Airで《中村輪夢》の名前を強烈に印象付けた。
  • Windshield Wiper(※7)を完璧にメイクするなど、肝の据わったランで次世代トップライダーの一人として世界に認知された。
2019年にはUCI BMXフリースタイル・パーク ワールドカップ年間総合優勝を獲得し、名実ともに世界最強ライダーの称号を手に入れた中村輪夢。
 
その強さの秘訣は逆境を味方につけるメンタリティーだという。『集中力をアップさせてくれる緊張は悪ではなく善』というポジティブな姿勢には脱帽するばかりだ。
 
数多くのメディア露出も飄々とこなし、次から次へ限界を飛び越えていくの原動力となるのは『失敗すると痛い目も見るけど、成功すると言葉にできない快感を味わえる』というBMXを楽しむ気持ち。無限の可能性を秘めた若きトップアスリート中村輪夢からまだまだ目が離せそうにない。
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【追記】

この記事を制作したのは2020年1月。ここからわずか1ヶ月後の2月9日、彼の誕生日でもあるこの日に日本人初の快挙を成し遂げた!
Simple Session 2020でゴールドメダルを獲得し、世界最強のBMXライダーとなった瞬間は👇でチェック!
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(※1)ランプを使い空中に飛び出すトリックのこと。
(※2)空中で車体を一回転させるトリックのこと。
(※3)ハンドルバーを一回転させるBarspinと前後のペグをセクションにかけるストールを複合したトリック。
(※4)空中でハンドルバーを一回転させるBarspinから、ハンドルバーを離して両手を広げるトリックのこと。
(※5)空中で後方に一回転しながら、ハンドルバーを三回転させる複合トリックのこと。
(※6)横方向に720度回転するトリックのこと。
(※7)空中で車体を一回転させ、そのまま空中で車体を逆方向に回転させるトリックのこと。
  
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