31回目の開催を迎えたアブダビ・デザート・チャレンジでは、ダカール・ラリー優勝を重ねてきた強豪たちが無慈悲な砂丘でその強さをあらためて見せつけた。合計1,500kmに及ぶ5本の砂漠ステージが4輪 / 2輪 / SxS各部門のマシンたちを次々と限界へ追いやったため、勝利を手中に収めることができたのはごく数人だけだった。
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4輪部門
世界ラリーレイド選手権2022シーズン第2戦として開催されたアブダビ・デザート・チャレンジは、ダカール連続ウィナーのステファン・ペテランセルによって歴史が作られた。
フランス出身のペテランセルは、ラリーレイドのサステナブルエネルギーの推進を目的として2022年に創設されたばかりのT1-Eクラスマシンの初優勝ドライバーとなった。ライバル勢が脱落していく中、ペテランセルとコ・ドライバーを務めるエドアール・ブーランジェはAudi RS Q e-tronに搭載された電動ドライブトレインを快調に機能させた。
フィニッシュ後、ペテランセルは次のようにコメントした。
「電動マシンでのクロスカントリー・ラリーレイド優勝は、我々が短期間でどれだけ進化を遂げたのかを示している。Audi RS Q e-tronは新世代のマシンであり、ラリーレイド史に新たなページを記した」
オフロードレジェンドのセバスチャン・ローブは第1ステージでメカニカルトラブルに見舞われ、残り4ステージで厳しい戦いを強いられた。それでも、WRCタイトル9冠を誇るローブは自分の仕事に集中し、ナビゲーターのファビアン・ルルキンと乗り込んだBRXハンターで4戦連続表彰台フィニッシュを記録。
最終的に、ローブはMINI JCWバギーを駆るクバ・プリジゴンスキ / ティモ・ゴットシャルク組に次ぐ総合4位でラリーを終え、総獲得ポイント数で世界ラリーレイド選手権のポイントリーダーとなった。
ローブと同じく第1ステージでトラブルに遭遇したのは、1月にダカール・ラリー2022を制したばかりのナサール・アルアティヤだった。
砂丘で甚大なマシンダメージを負ったアルアティヤ / マチュー・ボーメル組は、トヨタ ハイラックスをオープニングステージのフィニッシュまで運ぶことができなかった。しかし、アルアティヤ / ボーメル組は翌日に戦列復帰し、残り4ステージすべてで優勝した。
世界ラリーレイド選手権2022シーズン 4輪部門ポイントランキング(第2戦アブダビ・デザート・チャレンジ終了時)
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2輪部門
“空虚な一角(エンプティ・クォーター)” とも呼ばれる魅惑的なルブアルハリ砂漠で2輪部門優勝を手にしたのはサム・サンダーランドだった。
サンダーランドはダカール・ラリー2022優勝に続く1勝を挙げて世界ラリーレイド選手権のポイントリードを広げることに成功。ガスガス・ファクトリーチームに所属するこの英国人ライダーは、2022年を望みうる最良の形でスタートさせている。
フィニッシュ後、サンダーランドは次のように語った。
「再び勝利を収め、選手権のリードを拡大できて素晴らしい気分です。この1週間、チーム全員が懸命に働いてきたので、このような形でチームに恩返しできたのも嬉しいですね。このようなリザルトはすべてが報われます」
アブダビではレッドブルKTMファクトリーレーシングも大量の選手権ポイントを稼いだ。トビー・プライスとマティアス・ウォークナーはそれぞれ総合4位・5位でラリーを完走。ケビン・ベナヴィデスはステージ4でテクニカルトラブルに見舞われてスローダウンを強いられ、総合13位に終わった。
世界ラリーレイド選手権2022シーズン 2輪部門ポイントランキング(第2戦 アブダビ・デザート・チャレンジ終了時)
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T3ライトウェイトビークル部門
T3ライトウェイトビークル部門は、フランシスコ・“チャレコ”・ロペスが再び見事なパフォーマンスを見せた。チリ出身のロペスは今年初頭のダカール・ラリー優勝に続く勝利で世界ラリーレイド選手権のポイントリードを伸ばした。サウス・レーシング・カンナムに所属するロペスは、アブダビではパオロ・セシ(イタリア)をコ・ドライバーに迎えてレースを戦った。
フィニッシュまで終始ロペスを追い続けたのは、昨年のクロスカントリーラリー・ワールドカップでT3部門ウィナーに輝いていたクリスティーナ・グティエレス / フランソワ・カザレ組だった。
OT3をドライブして総合2位で完走したグティエレスは、最終日のステージ優勝を含め全ステージで表彰台フィニッシュを飾ったため、選手権総合2位を維持した。
ヤス・マリーナ・サーキットでの表彰台セレモニーを終え、グティエレスは次のようにコメントした。
「チャレコを追いかけ、彼にプレッシャーをかけようとあらゆる手を尽くしたので、私たちにとって最終ステージは楽ではありませんでした。それでも最後は総合2位で終えることができました。全体的には良い内容のラリーでしたし、選手権のポジションも維持できました」
レッドブル・オフロード・ジュニアチームでグティエレスのチームメイトを務めるセス・キンテロは、初の世界ラリーレイド選手権総合トップ3入りを記録した。米国出身のティーンエイジャーとコ・ドライバーを務めるデニス・ツェンツは序盤の苦しい展開から盛り返してポイントを獲得し、選手権3位の座を獲得した。
レッドブル・オフロード・ジュニアチームに所属するギヨーム・ド・メビウス / トム・コルスル組とミッチ・ガスリーJr. / オラ・フローナ組はラリー序盤でリタイアを強いられた。彼らは次戦のために今回のラリーで得たポジティブな要素(特にラリー初日におけるデ・メビウスのステージ優勝)の検証を進めていくことになる。
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