スケートボード

中年スケーターの ミッド・ライフ・クライシス

スケートボードに明け暮れた10代をおくり、大人になった今もスケートボードのある暮らしを楽しむ。そんなオトコがミッドライフ世代に贈る、人生がちょっと豊かになるお話。
Written by Akeem the Dream
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Akeem column ph 00
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「ニール・ブレンダーがデザインする新しいスケートボード」

70年代に一大ブームを巻きおきし、世間中にその存在が知れ渡ったスケートボード。以来、ラディカルなトリックやライディング、スピードなどがコンテストという形で競われてきたが、動きの難易度と同等に個々のスケーターが持つ“スタイル”や“ライディングの美しさ”も重要視されてきた。つまり、スケートボードにはフィジカルな動きを追求する側面と、自分を自由に表現するアートフォームとしての側面があり、そのスケーターが持つ想像力やパーソナリティを、自分のトリックや服装、シグネチャーデッキの形やグラフィックなどを通して表現することができる。70年代から独自のライディングスタイルとトリックを持ち、優雅にスケートをするクリエイティヴでアーティスティックなプロスケーター達が特に僕を魅了してきてくれた。Tony Alva、Steve Olson、Duane Peters、Salba、Lance Mountain、Steve Caballero、Tommy Guerrero、Jason Jesse、Chris Miller、Neil Blender、Mark Gonzalesなどなど、クリエイティヴさが際立つスケーターを挙げると枚挙に暇がない。
彼らは今でもその自由な表現を続け、スケートボードの外の世界へと羽ばたき活躍し続けているが、個人的に最近気になるのはNeil Blenderの活動だ。Neilは80~90年代に活躍したG&S SkateboardsとTracker Trucksの人気ライダーで、フィジカルで難易度の高いスケーティングを得意としながらも、スケートボードを使って自由に遊ぶことの楽しさを色々な形で教示してくれたスケーターの一人だ。
自分で描いたシュールでローブローなドローイングをシグネチャーデッキに使い続けバブルを迎えていた80年代後半のスケートシーンにおいても、その初期衝動とDIY精神を忘れなかったことも特筆したい。当時、G&S Skateboardsからリリースされた「コーヒーブレーク」のドローイングが印刷されたデッキは、今でもカルト的な人気を誇りオークションなどで高額取引されている。
「コーヒーブレイク」のドローイングが採用されたTシャツ
「コーヒーブレイク」のドローイングが採用されたTシャツ
プロスケーターとしてのキャリアを終えた90年代後半はAlien Workshopを立ち上げてディレクションを行い、その後はしばらく公の場に姿を見せなくなっていたのだが、最近の彼のインスタグラムを見ていると、どうやら新しいスタイルのスケートボードとスケートスタイルを開発している様なのだ……。70年代のスラローム用っぽい弾丸型で細長い形にデッキを切り出し、ビンテージのローラースケートトラックを半分に切って前後に取り付けている様に見えるこのクルーザーらしき物体には「 Heated Wheel」とマーキングされている。どうやら、NeilとNeilの古いスケート仲間でスケートボード界のレジェンド、Steve Claarによる物らしい。
“Polarizer”と呼ばれているこのミステリアスなスケートボードは、二人による手作りでまだ数十名の手にしか渡っていないという。この二人からこれを手に入れるには、まず汝のスケートボード魂の純粋さを確認する必要が有り、このスケートボードを手に入れたら必ず実際に乗らないといけないとのこと。もし乗らずに家の壁に飾ろうものなら、それはその生産者とスケートボードへの冒涜行為とみなされる。
Neilを中心とするクルーがこのカスタム“Polarizer”に乗って現代のスケートパークを責める映像などを見ると、既にクルーザーの域を超えた楽しそうな技やライディングがどんどん発明されていく模様がうかがえる。またしても新たなスケートボードの楽しみ方をNeilが開発してくれたんだなと思わず涙…。しかし、この板一体どうやって作れば良いんだ?? オーーイ!!
Akeem the dream(アキーム・ザ・ドリーム)
東京を代表するスケートボード集団、T19の一員としてゼロ年代から活躍。またそれと並行して、様々なストリートウェア・ブランドのグラフィックやプロダクトデザインを手がける。ガタが来ている肉体に鞭を打って現在もライディングを続けるスケートボーダー。