“42歳のいまが人生の中で一番真面目に練習してます”
「10代、20代は、そりゃも~生意気盛りでしたよ(笑)。ファッション誌に出て、スケートメディアに出て、大会に出て、どこへ行ってもチヤホヤされてましたから。まだ、20代そこそこのガキがそんな環境にいたら、誰だって調子にも乗っちゃいますよ(笑)」と、30代以前を振り返ったLEE氏。そんな彼は現在、42歳になる。本当の意味でのターニングポイントは、この40代に突入してからだと話す。
彼のマインドを大きく突き動かしたファクターのひとつが、去年、VANS JAPANのチームマネージャーに就任したこと。「今までは自分自身がプレイヤーで、自分のことだけを考えるだけで良かったけど、若い子を育成するというか、彼らのことも考えなくちゃいけない。もちろんスポンサーのこともね。いわば、中間管理職ですよ(笑)。それは自分にとって大きい出来事でしたよ」
そしてもうひとつ、LEE氏のマインドを突き動かした出来事がお子さんの誕生だ。「2年くらい前に男の子が生まれたんです。毎朝、子供を保育園に送って行くのが楽しくてね」
そんな保育園への送りの中でこういった出来事があったそうだ。
「会社に行くまでに2時間くらい時間が空いちゃうんです。“この空いた時間で何しょうかな?”って。“だったら、少しでも早く会社に行って働けよ”って話なんですけどね(笑)。丁度そんなことを考えてる時に後輩から“世田谷公園で朝に滑ってるから来ません?”って誘われたんです。行って滑ってみると、10年くらいまともに滑ってなかったので、びっくりするくらい下手で。当然といえば当然の結果なんですが、それがなんだかすごくショックだったんですよ。そこから、ほぼ毎日、朝練に行くようになりました」
そうすると、少しづつ昔の感覚が戻ってきて、より楽しくなっていったそう。「何か目標があった方が励みになると思って、いままでしたことが無かったんですが、自分のスケートボードをiPhoneで自撮りするようになったんです。何か凄いトリックを撮る訳ではなく、その日の自分の目標をただただ記録していただけなんですけど……。それを何気なくInstagramにアップしたら、以外と評判が良くて、色々なところから“インスタ見たよ! LEEくん、最近すごく滑ってるらしいじゃん!”なんて言われちゃったりしてね(笑)。そんなこんなで、少し疎遠だったスケーターとまた連絡をとるようになって一緒に滑りに行ったりとか。そうするとまたどんどんと楽しくなってきて。ほんと、ポジティブの連鎖ですよね。つくづく“やっぱり俺はスケボーしてないとダメなんだな”って思いました」
「今は、スケボーを始めてから一番真面目に練習してますよ(笑)。あと、詳細はまだ言えないんですが、この2年間でスケートビデオを撮りためてるんですよ。今年の10月を目処にリリースしたいなって考えてます。いまはその準備がすごく楽しいですね」と嬉しそうにニッコリ微笑んだ。
“1日1日をしっかり考えながら生きてく方が建設的だと思う”
現在は、充実した大人のスケートライフを満喫しているLEE氏。今後はどういったオヤジになりたいのかを尋ねてみると「よく世間的には“10年後、20年後の先を見据えて生きなきゃいけない”とか言われてるじゃないですか? でも僕は、そういった考え方が全く出来ないんですよ。いままで本当に行き当たりばったりでしか生きてこなかったですから(笑)。それに、“何かを変えたい”とか、“スケートボードのシーンを変えたい”だとかっていう、大それたことや壮大な夢を考えたことは全くない」としみじみ。
続けて「それよりも、もっと身近で小さな目標をこなしていきたいですね。毎日のことをしっかりと考えながら生きてく方が、ずっと建設的だと思うから。例えば、“常に余裕をもって決断できる人間になっていきたい”とかね。そうするとみんなに優しくできる気がするんですよ。わがままでもいいけど、みんなが嫌な気持ちにならないわがままというか。ものすごく単純なことかもしれないけど、真面目に何かをやってれば、きっと誰かが見てくれるんじゃないのかな。それが自然と未来の自分に繋がっていけばいいですよね」
その上で「結局、僕がスケートボードを通して学んだことは、“僕は仲間がいないと何もできない”ってこと。とにかく、ウチのスタッフや家族がニコニコしていける環境をキープし続けたいですね」
▼LEE氏がiPhoneで撮影したスケート動画「2015 aug~2016 spr #削lee節」
『風に身を任せスタイル』。これは、90年代に注目を集めたスケートビデオマガジン、CandyのインタビューでLEE氏が自身のスタイルについて語った言葉。“いろいろな状況の中で常に対応できる自分でありたい”、そんな意味合いが込められているそうだ。今回のインタビューでは、“無理をせず、流れに身を任せて生きる”そんな思いが強かった様に感じた。いろいろな経験を積み、大人へと成長したLEE氏だが、もしかすると、本質にある大切なアイデンティティは、今も昔も変わっていないのかもしれない。至極当然のことだけれど、人生とは想像通りに行くはずもない。
腐敗し閉塞しているこの日本社会において、目標を決めすぎず、自由に生きることも、また必要なのかもしれない。



