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『アルトのオデッセイ』:iPhoneの外へ

© Snowman
Written by Jamie Stevenson
美しいデザインと直感的なゲームプレイが世界的に評価されているスノーボードゲームアプリのデベロッパーがAndroid版と今後について語った。
Snowmanの『Alto’sシリーズの開発チームは忙しい日々を送っている。
ゲームアプリ『Alto’s Adventure』で世界的に有名になったカナダのデベロッパーは、2018年春に最新作アルトのオデッセイ / Alto’s Odyssey』をiOSでリリースしたが、Android版のリリースを目前に控えているのだ。
Apple Design Awardも受賞した大人気スノーボードゲームアプリのAndroidへの移植で苦労した部分はあったのだろうか? また、家庭用ゲーム機へ進出する予定はあるのだろうか?
Snowman創設者のRyan Cash、リードアーティスト / デベロッパーのHarry Nesbitt、Android版を共同開発したNoodlecake StudiosのCOO、Ryan Holowatyの3人に話を聞いてみることにした。
『Alto’s Odyssey』に対するメディアとユーザーからの評価はいかがでしたか?
Cash:今までの評価には大興奮していますよ。
今作では、オリジナル(Alto’s Adventure)の路線から離れすぎず、シリーズのファンが新しい方法でプレイできる新しい世界を作ろうという、非常にデリケートなバランスを狙っていました。
今のところファンからの評価は素晴らしいですね。突き詰めれば、彼らからの評価が何よりも重要です。
今年6月にApple Design Awardを受賞したことも、僕たちにとっては非常に大きかったですね。自分たちのゲームデザインが世界最高のデザイン力を持つ企業によって評価されたというのは、本当にスペシャルな瞬間でした。
ファンアートも数多く存在する
ファンアートも数多く存在する
オリジナルから今作までは随分時間がかかりましたが、この次の作品までもまたしばらく時間がかかるのでしょうか? 次は何を予定しているのでしょうか?
Nesbitt:正しい作品を生み出すためには時間が必要だと考えています。僕たちは小規模なデベロッパーなので特にそうですね。
自分たちが最も重要だと考えているリソース、つまり、クリエイティブなエナジーを上手く管理しながら、自分たちにできる最高の作品を作っていきたいと思っています。
ですので、取捨選択を厳しく行う必要がありますし、正しいアイディアを正しいタイミングで実行するためにじっくりと待つ必要もあります。
『Alto’s』シリーズは永遠に僕たちのハートの近くに居続けると思いますが、新しいゲーミングエクスペリエンスを提供するための新しいアイディアや実験をすることが、僕たちにとっても、シリーズにとっても大事だと思っています。
言い換えれば、ドローイングボードに戻り、自分のアイディアを見直して、本当に作りたいゲームは何なのか自問する必要があるということですね。
Cash:Snowmanは、現在いくつかの他のゲームの開発にも取り組んでいます。具体的には『Skate City』、『Where Cards Fall』、『DISTANT』の3タイトルです。
僕たちにとっては、世間が "Snowmanのゲーム" に求めているクオリティまで自分たちのゲームを磨き上げることが何よりも重要です。そのためには長い時間が必要になることもあります。
ゲーム開発は、最後の10%が魔法を生み出せるかどうかを決めますが、その10%に開発期間の90%が割かれることもあります。
引き続きゲームアプリのみの開発に注力するのでしょうか? それとも家庭用ゲーム機の世界にも進出する予定なのでしょうか?
Cash:Snowmanを立ち上げた2012年からゲームアプリの開発にフォーカスしていますが、最近は “違う池” にも目を向けるようになっています。
Apple TV版が僕たちのリビングルーム初進出だったわけですが、この進出によって、僕たちの中に新たな興味が生まれたのは確かです。
僕たちは、ゲームアプリ特有の機能上の制限やデザイン上のチャレンジを大いに楽しんでいますが、他のプラットフォームも試してみたいという興味が生まれています。
『DISTANT』に関しては、すでに家庭用ゲーム機に進出することを発表していますが、現時点ではこれ以上お話できる情報はありません。 
『アルトのオデッセイ』のアンドロイド版のリリースが近づいていますが、iOS版より遅れた理由を教えてください。
Cash:僕たちは少人数のデベロッパーなので、ひとつのプラットフォームに絞って開発を進めていく必要があります。さもなければ、リリース日が遅れてしまいます。
また、SnowmanはAppleのエコシステムに頼ってきましたし、開発チームもApple関係の経験が豊富です(Mac用ビジネスソフトウェア出身のチームメンバーが数人います)。ですので、“まずはiOS” というのがごく自然な選択なのです。
さらに言えば、iOSはゲーム開発が最も簡単なプラットフォームです。ハードとソフトのフラグメンテーション(断片化)が少なく、有料ゲームを購入する層も厚いです。 
    
今作もNoodlecake Studiosと組んでAndroid版の開発を進めましたが、彼らとのコラボレーションはいかがでしたか? 前作よりもスムーズに進みましたか? どんな問題に直面したのでしょう?
Cash:Noodlecake Studiosとのコラボレーションは良好ですね。僕たちは共にカナダ出身ですし、しかもゲームデザインの哲学も共有できています。
前作に関しては、Android版のリリースまで長い時間がかかってしまいました。なぜなら、2015年2月のiOS版のリリース後、想定外の忙しさに振り回されてしまったからです。
今作は開発チームの規模も拡大していましたし、準備もできていました。iOS版のリリースよりも前の段階で、Noodlecake StudiosとAndroid版についての計画をまとめることができていました。前作ではその作業に半年くらいかかってしまいました。 
    
前作のAndroid版からは何を学びましたか? 前作のAndroid版は無料でしたが、今作も同じアプローチなのでしょうか?
Cash:前作のAndroid版の無料リリースからは、多くを学ぶことができたので、リリース後にいくつかの変更を加えました。プレイヤーのフィードバックと自分たちがリリース後に学んだことを元に、いくつかの細かな調整を加えたんです。
ですので、『アルトのオデッセイ』のAndroid版には前作の2年半で学んだ部分を全て反映させます。デイワンから対応する予定です。
インディーゲームコミュニティの友人たちからもらったデータでは、Androidは、有料ゲームアプリよりも基本プレイ無料のゲームアプリ向きのプラットフォームという結果が出ています。
基本プレイ無料には、より幅広いプレイヤー層にリーチできるというメリットがあります。現時点では、前作のAndroid版のダウンロード数は3500万を超えています。
   
Androidには多種多様なディスプレイサイズやフォームファクタが存在します。Android版の開発の足かせになりませんでしたか?
Holowaty:正直に言えば、そこがAndroid版最大の問題のひとつですね。ディスプレイサイズだけではなく、RAMやCPU、そしてタッチスクリーンの感度のような細部も機種ごとに大きく異なります。
小規模なデベロッパーの多くがAndroid版を用意していないのはこれが理由です。彼らにとっては、Android版はQAテストの規模が大きすぎるのです。
僕たちはAndroid版の開発をある程度続けてきたので、安価な低パフォーマンスモデルから、最新モデルまで、数々の機種のデータを集めることができています。
また、Androidの特性にも慣れているので、市場に出回っている機種の95%に問題なく対応できています。
    
Androidの特性に合わせるためにどこか調整した部分はあるのでしょうか?
Holowaty:Google Playのバックエンドシステムを活用して、長期間の社内外ベータテストを行いました。
ですので、プレイヤーのゲーミングエクスペリエンスがどうなるかをリリース前にしっかりと理解することができました。バグをリリース前に修正しつつ、ゲーミングエクスペリエンスをAndroid版に合わせることもできました。
前作からひとつ例を挙げます。前作ではAndroid版のプレイヤーの多くがチュートリアル内の亀裂ジャンプに問題があると言っていました。これはiOSではそこまで大きな問題にはなっていなかった部分でした。なぜなら、有料なので、じっくりと腰を据えてプレイするプレイヤーが多いからです。
ですが、基本プレイ無料では、自分が上手くプレイできない部分があれば、すぐに削除してしまうプレイヤーが多いんです。ですので、なるべく多くのプレイヤーに継続的にプレイしてもらうために、Android版の亀裂ジャンプは少し簡単にしました。
この結果、サポート部門に届くメールの数が大幅に減りましたし、星の評価も大きく高まりました。
また今作では、Google Playの事前登録システムを活用して、リリース後すぐにプレイヤーにお知らせが届くようにしてあります。
『アルトのオデッセイ』のAndroid版は近日リリース予定
『アルトのオデッセイ』のAndroid版は近日リリース予定
基本プレイ無料でリリースしようと思った理由について教えてください。海賊版の心配はしませんでしたか?
Cash:当然しましたよ。ですが、業界内の人たちから、Android版の有料ゲームアプリから得られる収入は、iOS版の5~25%だという話を聞いていたので、有料にするのはグッドアイディアには思えませんでした。
ですが、基本プレイ無料には、海賊版、そして “無料でない限りプレイしない悪質な顧客” 以外にも考慮すべき部分があると思っています。
まず、iPhoneは “中上級” のラインアップだけですが、Androidは全クラスの機種をカバーしています。
僕たちの手元に公式データはありませんし、専門的なリサーチを行ったわけでもありませんが、Androidは “全員のための” プラットフォームという実感があります。iPhoneは基本的には中上流層のためのプラットフォームです。価格が高いというのがそうなっている理由です。
基本プレイ無料タイトルを開発すれば(特にAndroidでは)、一部の層だけではなくあらゆる層に届けることができます。
ゲームを購入できる余裕がある人たちだけではなく、余裕がない人たちにもゲームを提供できるというのは素晴らしいことだと考えています。Android版のダウンロード元の多くは発展途上国です。そのような国に住む人たちにもゲームを提供できているのは本当にクールだと思っています。
ですので、基本プレイ無料のタイトルに関しては、海賊版や “無料でない限りプレイしない悪質な顧客” だけではなく、経済格差平均収入も考慮する必要があります。
CEICデータの調べでは、インドネシアの平均月収は183ドル(約20,400円)ですので、彼らにとって、5ドルの有料ゲームを購入するのは非常に難しいですよね。インドネシアの多くの人は有料ゲームを買える経済的余裕がないのです。
彼らは “無料でない限りプレイしない悪質な顧客” ではありません。彼らは僕たちとは違う経済状況に直面しているだけなのです。
ゲームを購入できる余裕がない人たちが無料でゲームを楽しめるようになるのは素晴らしいことだと思います。
 “遊ぶ” というのは人間の基本的な部分ですし、僕たちはできる限り多くの人に自分たちのゲームを体験してもらいたいと思っています。
    
『アルトのオデッセイ』はiOSでリリース中。Android版は近日リリース予定。