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エンドレスなランニングゲームアプリは世の中にごまんとあるが、Snowmanがスノーボードを題材に開発した『Alto's Adventure』は、シンプルだが中毒的なゲームプレイ、美しいサウンドトラック、魅力的なヴィジュアルによって頭ひとつ抜き出ていた。そして、このヒットタイトルのリリースから3年が経った2018年、Team Alto(Snowman+Harry Nesbitt)は続編『Alto's Odyssey / アルトのオデッセイ』(以下『Alto's Odyssey』)をリリースした。今作は、舞台が雪山から砂漠に変わっており、新しいトリックやアイテムも加えられている。
そこで我々は、この世界待望のゲームアプリを生み出した開発チームの元を訪れ、開発経緯やNintendo Switch版の可能性、砂漠でのライディングを最大限楽しむためのヒントなどを話してもらうことにした。
『Alto's Odyssey』のトレーラーをチェック!
『Alto's Odyssey』のリリース直前は、どのような作業をしていたのでしょう?
Ryan Cash(Snowman創設者):リリース直前のタイミングでは、『Alto's Odyssey』の世界がプレイヤーにとってマジカルなものになるように細心の注意を払ってきました。天候、稲妻、自然、ステージなどにできる限り多くのサプライズやデコレーションを盛り込み、プレイヤーに楽しんでもらえるように努力しました。もちろん、正直に言えば、いくつかのバグに対応する必要がありましたし、プロモーションも徹底的に行いました。あらゆる意味で "よくあるリリース前" でしたね。
リリースまでの数ヶ月間はどんな気持ちでしたか?
Eli Cymet(リードプロデューサー):ひと言にまとめれば "つかみ所がない" 感覚でした。ローンチトレーラーが発表された直後にTwitterで「何かを作っていて、そのことについてまだ誰にも話してない時のあの感覚を味わっている」とつぶやいたのですが、あるようでないような、でもやっぱりあるという、とても不思議な感覚を得ていました。ここ数ヶ月はずっとその不思議な感覚の中で仕事をしていました。
自分たちで考えて、情熱を注ぎながら作ってきたものが形になり、プレイヤーの手に渡るイメージが見えてくると興奮を覚えますが、同時にナーバスになります。また、不安になりますが、集中力が高まります。これらが全て混ぜ合わさっている感じでした。
『Alto's Adventure』がリリースされたのは2015年でした。『Alto's Odyssey』の開発期間は?
RC:これは個人的な意見ですが、『Alto's Adventure』は、同じキャラクター陣が登場する長大なストーリーのはじまりにしたいと思っていたので、アルトたちを次にどこへ連れて行くのかについては、かなり前から考えていました。
ですので、『Alto's Odyssey』は『Alto's Adventure』から3年ちょっとでリリースされましたが、ベースのアイディアが用意できていたので、実際の開発期間は約1年半でした。
『Alto's Odyssey』の続編としての特徴は? 前作とはどこが違うのでしょう?
Harry Nesbitt(リードアーティスト / プログラマー):個人的な意見を言わせてもらうと、今作は続編ではありません。今作の開発中、僕たちは一度も "続きのゲーム" を意識しませんでしたし、前作を上回ることは考えていません。前作と同じユニバースですが、前作とは違ったフィーリングが得られる "別のゲーム" を作ろうとしました。
RC:このアイディアが『Alto's Odyssey』の開発アプローチの根底にあります。これから何年も先まで、『Alto's Adventure』と『Alto's Odyssey』を並列で扱いたいと思っています。どちらを先にプレイしても、『Alto's』シリーズ特有のクオリティを感じてもらえるようにしたい。スムーズなアクション、独特のフロウ、自宅から遠く離れた美しいロケーションへの逃避感覚を楽しんでもらいたいと思っています。
EC:ですので、『Alto's Odyssey』でわたしたちが提供しようとしているフィーリングやロケーションは、前作を知っているプレイヤーでも新しくてエキサイティングなものに感じるはずです。生物群系、シームレスに変化していくバラエティ豊かな自然は、このゲームのスケール感を『Alto's Adventure』より大きくしています。また、ウォールライドや気球のグラインドレール、多層のグラインド、竜巻、小川など、新しいシステムも大量に用意しています。
このような新機能は高揚感を高めてくれますし、プレイヤーはビッグコンボをメイクしたい気持ちになるはずです。ですが、新しい操作方法を一切追加しないで、基本的なゲームプレイとエクスペリエンスのアクセシビリティを可能な限り高めることに注意しました。
前作は、雪山の平和なムードを上手く捉えていたと思いますし、サウンドトラックもそれに似合った非常に柔らかいものでした。老人に追われている間もそのムードは変わりませんでした。今回も同じようなムードを生み出そうとしたのでしょうか? それとも少し違うムードにしようとしたのでしょうか?
EC:前作と同じで、今作でも特定のフィーリングを捉えることが非常に重要でした。ですので、開発チームは、実際の開発作業に入る前に多くの時間を費やして、プレイヤーに得てもらいたいフィーリングについて考えました。前作がヒットしたからという理由で、今作を "簡単に予想できるもの" にはしたくなかったんです。
開発チーム全体で、『Alto's Adventure』のリリースから自分たちの生活がどれだけ変化したのかについて考えた瞬間に、全てが上手く噛み合い始めました。前作のおかげで開発チームは大きくなりましたし、住み慣れた街を離れたメンバーもいました。全員が異なる形で人生の大きな変化を体験していたんです。わたしたちが出した結論は、コンフォートゾーンの外側に踏み出す感覚を捉えたいということでした。未知の世界を探索することの素晴らしさと、"ホーム" というコンセプトはあくまで "感覚" で、"特定の場所" を指すものではないことを伝えようと思ったんです。このアイディアが、『Alto's Odyssey』の広大な世界観に繋がっていきました。
前作の大ヒットを受けて、「基礎は仕上がっている」という前提で『Alto's Odyssey』の開発をスタートさせたのでしょうか? それとも、試行錯誤を繰り返しながら開発したのでしょうか?
HN:前作に盛り込まれている要素の多くは非常に自然に生まれたものか、特定の問題の解決策として生まれたものでした。ですので、前作に含まれている様々な "ルール" が他のタイトルに当てはめられる可能性については全く考えていませんでした。前作のアートスタイルも、アイディアを何回も練り直してできたものです。最初から何が機能して何が機能しないのかを理解していたわけではありません。
ですので、今作も少しずつ取り組んでいく必要がありました。前作のルールを新作に持ち込んでも、それが機能するかどうかは分かりません。前作の成功はある意味奇跡でした。今作でも同レベルの成功を目指しているというのは、大きなチャレンジですね。
『Alto's Odyssey』では舞台が雪山から砂漠に変わりましたが、砂漠を選んだ理由は?
RC:僕たちの中では、設定やシステムは最優先事項ではありませんでした。プレイヤーにどんなフィーリングを与えるのかが何よりも大事でした。これは個人的な意見ですが、僕は昔から砂漠の景色や広大さが好きだったんです。『Alto's Adventure』をリリースする前から好きでした。ですので、その頃から、砂漠を舞台にしたら楽しいのではと考えていました。
とても幸運なことに、僕たちが自分たちの人生で体験していたことと、突き詰めてみたいフィーリングが、『Alto's Adventure』の平穏な雪山とは正反対の舞台にもピタリと当てはまったんです。
操作方法の変更は考えましたか? アルトに新しい能力を与えることについて考えませんでしたか?
RC:砂漠を舞台に設定したあと色々試していく中で、約1ヶ月を使って "アルト・ジャム" と名付けたセッションワークをしました。アルトにグラップリングフックを与えるなど、新しいシステムや機能を試してみたんです。このようなアイディアの大半はボツになりましたが、探索感を高めてくれるいくつかのアイディアには好感触を得られました。ウォールライド、複数の生物群系、インタラクトできる自然などです。そして、最終的に「操作方法を追加しないで自然に感じられる要素は、できる限り数多く盛り込んでみよう」というルールを決めました。
開発中に遭遇したバグの中で最も奇妙だったものは?
Joe Grainger(デザイナー / プログラマー):当然、『Alto's Odyssey』の開発を通じていくつかの笑えるバグに遭遇しましたよ。タイトル画面でキャラクターを変更すると、どのキャラクターを選んでもキャラクターのグラフィックが崩れてしまうバグがありました。下半身が消えてしまうキャラクターもいましたね。
また、生物を上手く動かすのにも苦労しました。開発期間の前半は、池(プール)の中を泳いでいるべき魚が空を飛んでいましたし、たまに姿を現すキツネザルの動きが凍ったようにギクシャクしてしまうこともありました。現実を言えば、開発期間の大半は、このようなカオス状態を整理して美しく仕上げることに費やしました。
『Alto's Adventure』のベテランプレイヤーにはどんな新発見が待っているのでしょう?
RC:開発期間を通じて多くの時間を割いてきたのが、タイムレスに感じるデザインとアプローチで生み出した新機能を盛り込む作業でした。ウォールライドやトルネード、切れるツタ、ストリームなど、数多くの新機能が盛り込まれているので、プレイするたびに新しい発見があります。ですが、何よりも重要なのは、これら全てが、アクセシビリティを下げずにゲーム全体のスキルレベルを高めることに貢献しているという点です。
開発チームの中には、景色を眺めたり、フォトモードを楽しんだりしているメンバーがいますが、やはり僕は他のメンバーとハイスコアを競い合うのが好きですね。今でも何回もプレイしたいと思いますし、コンボやトリックで自分を表現できる新しい方法を探そうとしています。同時に、ゲーム内には動植物など、常に色々なサプライズが起きます。ネタバレはしたくないのでここまでにしておきましょう(笑)。大いに驚かされるはずですよ。
Android版のリリース予定はありますか?
RC:もちろん、僕たちはAndroid版のプレイヤーも愛していますし、存在を忘れたわけではありませんよ! 今はまだリリース日の調整中ですが、数ヶ月以内にリリースできるはずです。
家庭用ゲーム機版のリリース予定はありますか? Nintendo Switchのヒットで何かアイディアが生まれたのでは?
EC:わたしたちの間で良く話していることなんですが、Team Altoの大半はゲームデベロッパー出身ではありません。そして、わたしたちはこの特徴をとても大切にしています。"遊ぶ" というのは人間の基本的な行動ですので、わたしたちは伝統的な「ビデオゲーム」の形を取らなくても、色々な形で遊びを提供できるはずだと考えているんです。
このように考えているわたしたちは、プレイヤーとしてもデベロッパーとしても任天堂の大ファンです。「遊びはみんなのもの」というアイディアを今も大切にしている彼らの姿勢をリスペクトしています。わたしは、Nintendo Switchはこのアイディアから生まれた素晴らしいイノベーションだと考えています。Nintendo Switchは「場所」に拘っていません。家庭用ゲーム機としても携帯ゲーム機としても楽しめるので、家でも移動中でも素晴らしいエクスペリエンスを提供しています。「携帯ゲーム機のエクスペリエンスは家庭用ゲーム機のそれより劣っている」という既存のアイディアから人々を解放していると思いますし、そういう意味でとてもエキサイティングな製品だと思います。
『Alto's Odyssey』の攻略アドバイスはありますか?
RC:見過ごされがちなシンプルなアドバイスのひとつは、「コインをできる限り早く集めて、ショップでウイングスーツを買おう!」ですね。ウイングスーツは高額ですが、それだけの価値はありますし、コンボの可能性を飛躍的に高めてくれます。また、難しい状況を簡単にクリアできるようになりますし、滑走距離の記録も伸ばせます。
『Alto's Odyssey』のショップには他にもいくつかの面白いアイテムが用意されているので、是非色々試してもらいたいですが、一番のオススメはやはり前作から引き継がれているウイングスーツですね。また、昼間は岩を活用してみましょう。岩を上手く扱えるようになれば、ゲームを楽に進められるはずです。
『Alto's Odyssey / アルトのオデッセイ』はiOSとApple TVで好評発売中(600円)。
