aMSa が『スマブラ』から学んだこと|Vol.1
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Gaming

【aMSa が『スマブラ』から学んだこと】|Vol.1:私が日本人初の『スマブラ』プロになった理由

『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の発売当初から17年以上、赤いカラーの"ヨッシー"を使い続けるプロゲーマー、aMSaの月イチ連載コラムがスタート!
Written by aMSa
読み終わるまで:12分Published on

◆Vol.1:私が日本人初の『スマブラ』プロになった理由

みなさま、はじめまして。
レッドブル・アスリート、『スマブラ』プロゲーマーのaMSa(あむさ)です。
この度、「aMSaが『スマブラ』から学んだこと」と題しまして、月イチでコラムを連載させていただけることになりました。
これまで、『スマブラ』を通じて得たこと、学んだことも非常に多いです。そんな自身の経験をもとに、さまざな側面から『スマブラ』の持つ可能性、さらには"ゲーム"が持つ可能性をお伝えできればと考えています。
さて、記念すべき第1回目は、"私が日本人初の『スマブラ』プロになった理由”としてお送りしますが、その前に軽く自己紹介を。
私は、『スマブラ』シリーズの第2作目である、2001年に発売されたゲームキューブ版『大乱闘スマッシュブラザーズDX』(以下、『スマブラDX』)のプロゲーマーとして主に活動しております。
aMSa近影。

aMSa近影。

© TERUHISA INOUE

発売から17年以上、赤いカラーの"ヨッシー"というキャラクターを使い続け、東北大学に在籍していた学生時代より国内外のさまざまな大会に参加しました。
また、大学卒業後は"世界最強の赤いヨッシー使い"として、2014年5月に海外の動画配信団体・VGBootCampにスポンサードを受け、日本人初のプロのスマブラプレイヤー、"プロスマブラー"となりました。
そして2017年12月より古参プレイヤーのカイト選手を専属のコーチにつけてから成績を伸ばし、2018年の『スマブラDX』世界ランキングにてTop10入りを果たします。
2018年11月以降は、『スマブラ』シリーズ最新作『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下:『スマブラSP』)にて公式大会の解説を務めており、現在では『スマブラDX』の選手および『スマブラSP』の解説者として活動しております。
もしかしたら、以上を読んで違和感を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、『スマブラ』シリーズ最新作ではなく、2001年に発売された過去作品のプロ選手として活動しているのか?
その説明をするためには『スマブラ』コミュニティのお話と『スマブラDX』の根強い人気について、お伝えする必要があります。

◆歴史の長い『スマブラ』コミュニティシーンの盛り上がり

『スマブラ』というゲームはシリーズを通してパーティーゲームとして広く遊ばれています。同時に、"1対1のアイテムなし"の真剣勝負で楽しまれている方も大勢いらっしゃいます。
パーティーゲームとしてエンジョイすることもでき、ガチなルールでも楽しめる、そんな魅力を備えた『スマブラ』ですが……。
『誰が最強のスマブラプレイヤーなのか』
この命題を解決するために一部のガチルール好きなプレイヤーたちが世界各地で独自の大会を開くようになり、実力を競い合うようになりました。
元々ガチな対戦が好きなプレイヤーは割合としては少なかったかもしれません。しかし、『スマブラ』シリーズはソフトの売上本数が高く、世界中に普及したことから、ソフトを手にしたゲーマーの0.1%でもガチルールに興味を持てば、その絶対数は凄まじいものとなります。
そして、YouTubeをはじめとした動画投稿サイトやストリーミング技術の発達によりコミュニティ大会の中継や上位プレイヤーの対戦動画が当たり前になってきたころ、"EVO2013"(※)のメイン種目として『スマブラDX』が選ばれたことが『スマブラ』コミュニティにとって大きな転機となりました。
【※EVO:The Evolution Championship Series(エボリューション・チャンピオンシップ・シリーズ)。例年アメリカで開催されている北米最大級の対戦型格闘ゲーム大会】
それまで『スマブラ』はパーティーゲームというイメージが強く、格闘ゲームの祭典である"EVO"に種目として選ばれたことを非難する声もありました。
しかし、"EVO2013"での『スマブラDX』Top 8のシーンを実際に目にし、『スマブラ』の競技シーンがどれほど人々を魅了するものなのか、証明することとなりました。
Top 8の対戦後には会場内に「One More Year」コールが鳴り響いたほどです(下の動画 2:04:30~)。
そして"EVO2013"の優勝者、Mang0選手が米eSportsチームの名門"Cloud 9"にスポンサードを受けたことをきっかけに他のeSportsチームも動き出します。
PPMD選手を"Evil Geniuses"が獲得、HungryBox選手を"Team Liquid"が獲得するなど、『スマブラ』の競技シーンに注目が集まり、2014年後半に発売したシリーズ4作目『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』の発売も大きな後押しとなり、eSportsシーンにおける『スマブラ』の地位が徐々に向上していきます。
また、合わせて大会の規模も年々拡大を続け、参加者人数も1タイトルで1000人を超え、2017年1月に公表された"Esports Games Tiers"(eスポーツタイトルの格付け)では『スマブラDX』はTier 3のeSportsタイトルとなり、『スマブラ』のプレイヤーとして食べていくことが夢ではなくなってきました。
2017年1月に公表された"Esports Games Tiers"。

2017年1月に公表された"Esports Games Tiers"。

© Esports Observer

◆『スマブラDX』は『スマブラ』シリーズの中でも特殊だった!?

『スマブラ』コミュニティが"EVO2013"をきっかけとして大きく注目を浴びたことは上記で語りました。
一方で過去作品である『スマブラDX』がなぜ現在もなお競技シーンで遊ばれているのか、そして私がなぜ『スマブラDX』をプレイしているのか、という理由については、プレイヤー側の視点とオーディエンス側のふたつ視点で捉えることで見えてきます。
⇒【プレイヤー視点】
『スマブラDX』は『スマブラ』シリーズの中でも特にテクニックが多い作品です。
空中緊急回避を用いて地上を滑るテクニック、"絶低空・空中緊急回避"(通称:絶空。人によっては"絶"とも言いますね)をはじめ、空中攻撃後の着地直前にLボタン、Rボタン、Zボタンのいずれかを入力することで着地硬直を半減させることのできる"着地キャンセル"。
はたまた、相手の攻撃がヒットした際の硬直を減らし反撃に転じる"しゃがみカウンター"。低い角度でふっとばされた際に地上に向けてヒットストップずらしを行い受け身を取る"床受け身"など。
それらのテクニックの多さから攻撃側、防御側、どちらも対応策が非常に多く、同キャラクター、同ステージ、同じプレイヤーどうしの組み合わせであっても同様の試合展開になるということはほぼありません。
最近では"V-Cancelling"と呼ばれる、一部の状況下において、空中で自身が攻撃を受ける直前にL、Rボタンを入力するとふっとばしが緩和される、といったテクニックも見つかっています。
このように、いまなおテクニックが開拓されていることからも『スマブラDX』に競技として取り組む際の深さは底知れないものであり、プレイヤーにとっては大きなやりがいに繋がっていることが伝わるかと思います。
また、『スマブラDX』は『スマブラ』シリーズの中でも特にゲームスピードが速い作品であるため、テクニックの豊富さとゲームスピードの速さの影響で、競技シーンが発達するにつれて勝つために求められる操作難易度が上昇していきました。
『スマブラDX』を格闘ゲームというジャンルに"含める"ならば、全格闘ゲームの中で、一秒間あたりの入力数が最も多いゲームだと言われてます(下の動画を参照)。

『スマブラDX』は……

・ゲームスピードの速さ

・テクニックの豊富さ

・要求される操作難易度の高さ

以上の3要素により、プレイヤーは『スマブラDX』を対戦ゲームとしてガチなルールを楽しむことができ、さらに自己表現がしやすくプレイヤー毎に個性を出しやすいことも人気の要因であるように私は感じています。
例えば私は"ヨッシー"を使っていますが、私と同じような動きができるプレイヤーは私が活躍し始めた当時にもちらほらいました。
ただ、『ヨッシー』の上必殺技"卵投げ"の命中率には人一倍自信があり、さまざまな大会で使っていると、ある日、海外プレイヤーから"エッグスナイパー"と呼ばれるようになりました。
キャラクターのひとつのワザの使い方をとってもプレイヤーの特徴を出すことができる、そんなゲームだからこそ非常に魅力的なのです。
そしてそういったゲームに情熱をもって大会を開くコミュニティリーダーたちがいることがさらにプレイヤーのモチベーションを引き上げています。

以上プレイヤー視点をまとめると……

・ゲームの奥が深く、やりがいがある

・さまざまなテクニックがあり、自己表現がしやすい

・17年経っても廃れることなく大会が開かれており、安心してプレイできる

この3点が大きな特徴だと考えています。
⇒【オーディエンス視点】
先ほどお伝えした内容とも重なりますが、ゲームスピードが速いため、観ていて目まぐるしく試合展開が進みます。
一方がリードしていたと思いきや、ふとした瞬間に突然逆転する、こんなことが当たり前に起きるため、試合が決着する最後の瞬間まで目が離せず、視聴者を興奮させます。
ちなみに、下の動画は"EVO2016" でのArmada vs HungryBox 戦です。フルゲーム、2ストック対1ストックの不利な状況で一瞬のチャンスをものにし、HungryBox選手が勝利を収めました。
また、『スマブラ』シリーズは昔からプレイしたことがある人も多いため、自分が過去にプレイした経験と比較し、今のトッププレイヤーのプレイを見てギャップを感じやすく、そのギャップを通じてプレイヤーがいかにすごいかが伝わりやすいのも大きな特徴だと思っています。
この辺りはeSportsシーンにおいてゲーム自体のルールを知ってもらう、という点を大きくカバーしているのが大きいです。
そしてプレイヤーの背景としてなんといっても"スマブラDX五神"プレイヤーと"神殺し"たちの存在は欠かせません。
"スマブラDX五神"とは、Mew2King選手、Mango選手、Armada選手、Hungrybox選手、PPMD選手の5人を指します。
『スマブラDX』で2009年中ごろ~2016年までに開催された大規模大会で彼らが出場した大会では、すべてこの5人のうちのだれかが優勝しています。
他の追随を一切許さず、圧倒的な実力を備えており、さらにはプレイヤーの個性や使用キャラクターがそれぞれ異なる点も面白く、彼らを倒すと会場が揺れます。
対して"神殺し"とは、上記"スマブラDX五神"プレイヤー全員に対して黒星を付けることができたプレイヤーが得る称号のことで、現在Leffen選手、Plup選手の2名のみが達成しています。
Leffen選手は5人中4人の神が参加した大会"Get On My Level 2016"において彼らを倒し見事優勝を飾りました。
また、Plup選手に関しては2018年に開催された大会"Genesis 5"にて優勝を収めています(こちらも5人中4人の神が参加)。
なお、Axe選手の"ピカチュウ"や、私の"ヨッシー"は、"Low Tier Hero(下位キャラ使いのヒーロー)"として名前を挙げられることも多くあります。
というように、プレイヤーの個性、使用キャラクター、大会結果など『スマブラDX』巡るあらゆるものがドラマを生み出し、そのドラマにまたオーディエンスが魅了されていったのだとわかります。

以上オーディエンス視点をまとめると……

・過去と現在のギャップによるプレイヤーの実力の実感

・競技ルールの浸透

・五神や神殺しを中心としたプレイヤーたちのドラマ

この3点が大きな特徴だと考えています。

◆ヨッシーの可能性を証明したかった……

以上を踏まえて、私が日本人初の『スマブラ』プロになった理由は、"『スマブラDX』のヨッシーを操作するのが面白く、ヨッシーの可能性を証明したかったから"です。
「アクションゲームは操作しているだけで楽しい」とは大学時代から付き合いの長い『スマブラDX』の友だち、Sanne君の言葉です。まさに彼の言う通りだなと思います。
2010年末に有志で作成された『スマブラDX』キャラランク表において、"ヨッシー"は26キャラ中21番目。しょせん弱キャラという扱いでした。
私は"ヨッシー"に対するこの評価は低すぎると思い、見返してやろうと奮起しました。これは大きなモチベーションになり、"ヨッシー"をプレイし続けた結果、2015年末では26キャラ中12番目まで上昇させることができました。
2010年末に有志により作成された『スマブラDX』キャラランク表。

2010年末に有志により作成された『スマブラDX』キャラランク表。

© SmashWiki 🄫SmashBoards

2015年末のキャラランク表。"ヨッシー"は、26キャラ中12番目まで上昇。

2015年末のキャラランク表。"ヨッシー"は、26キャラ中12番目まで上昇。

© SmashWiki 🄫SmashBoards

2010年末のキャラランク表なので、発売から9年経ったキャラランク表がここまで覆された例はあまりないかと思います。それも『スマブラDX』の魅力であったのかもしれません。
これからも私は『スマブラDX』を続けていくことと思います。また、今後Twitchでのゲーム配信だけでなく、YouTubeに『スマブラ』に関する動画投稿の頻度を増やそうと考えています。
もし興味がございましたらチャンネル登録やフォローをお願いします。
そして今回は、自己紹介+『スマブラ』シーンの紹介に留まりましたが、次回以降の当コラムでは、"プロゲーマーを目指す人へのアドバイス"、"『スマブラ』が上手くなるためのテクニック"など、私が『スマブラ』を通して学んださまざまなことを、みなさんに伝えていきたいと思います。お楽しみに!
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