In 2025, ski mountaineer Andrzej Bargiel climbs Mount Everest ahead of his daring ski descent to Everest Base Camp.
© Pasang Rinzee Sherpa for East Studio/Red Bull Content Pool
登山

【世界初】アンジェイ・バルギエルがエベレスト無酸素登頂・スキー滑降に成功!

ポーランド人アスリートが世界初のエベレスト無酸素登頂・スキー滑降に成功し、山岳エンデュランスレジェンドのひとりとしての地位を確実なものにした。
Written by Thomas Peeters
読み終わるまで:4分Published on
登山とスキーを組み合わせた驚異的な実績の数々で知られる37歳のポーランド人スキー登山家アンジェイ・バルギエルが、地球上で誰も成し遂げたことのない偉業を成功させた。酸素ボンベを使用せずにエベレストに登頂し、さらにその後クンブ氷瀑を抜けて雪が尽きるまでスキーで滑降したのだ。
2025年9月22日、エベレストの悪名高き “デスゾーン”(酸素濃度が危険なレベルに低下する標高8,000mより上のエリア)16時間近く登り続けたあと、バルギエルはエベレスト山頂でスキーを装着し、サウスコルルートを通る滑降を始め、その日の夜に第2キャンプに到着した。
山頂を目指すプッシュが予定より長くかかったことで暗闇が訪れ、この日は滑降の続行が困難となった。翌朝、バルギエルは危険なクンブ氷瀑をスキーで通過し、兄弟のバルテクが操縦するドローンに一部ガイドされながら無事ベースキャンプに到着。酸素ボンベを使用せずにエベレストでの登頂および滑降に成功した世界初の人物となった。
酸素ボンベを使用せずにエベレスト山頂からスキー滑降したアンジェイ・バルギエル

酸素ボンベを使用せずにエベレスト山頂からスキー滑降したアンジェイ・バルギエル

© Bartłomiej Pawlikowski/Red Bull Content Pool

16時間に及ぶ壮大なエベレスト登頂を振り返り、バルギエルは次のように語った。
「この時期は他のエクスペディションが行われていないため、今回の登頂は困難になりました。通常よりも多くの作業が要求されますし、コンディションもはるかに困難です。ベースキャンプから山頂まで一気に登頂できれば良かったのですが、コンディションによっては許されず、今回はその通りとなりました。エベレストは想像を絶する高さの山です。標高8,000m以上で16時間も活動するためには、入念な準備を行わなければなりません」
これは単なるエクストリームな偉業ではない。これまで6,000人以上がエベレスト登頂に成功してきたが、補助酸素を使用せずにエベレスト登頂を成し遂げたのは200人に満たない。しかし、無酸素登頂したあと、さらにスキーで滑降するのは大きなユニークな功績で、誰も成し遂げたことがなかった
エベレスト山頂

エベレスト山頂

© Bartłomiej Bargiel/Red Bull Content Pool

標高8,000m以上で16時間も活動するためには、入念な準備を行わなければなりません
アンジェイ・バルギエル
エベレスト山頂からのスキー滑降について、バルギエルは次のように説明する。
「技術的に非常に難しい氷瀑を比較的安全なコンディションで通過できるのは朝の時間帯だけなので、滑降を2パートに分けました。山頂そのものも危険かつ困難でした。あの高さであそこまで長い時間を過ごしたのは初めてだったので、それ自体がひとつのチャレンジになりました」
今回のエクスペディションが素晴らしい理由はどこにあるのだろう? 旅客機の巡航高度に相当するエベレスト山頂は空気が極めて薄いため、クライマーは海抜0mで得られる酸素量の3分の1しか得られない。これほど酸素が希薄な場所で長時間を過ごすと脳にダメージを生じ、肺に水がたまり、最悪の場合は死に至る。バルギエルはこのようなコンディション下で約16時間を過ごし、さらにはスキー滑降をやり遂げたのだ。
2019年と2022年の挑戦のあと、三度目の正直となった今回の挑戦を終えてバルギエルは次のように振り返る。
「今回は、私のスポーツキャリアにおいて最も重要なマイルストーンになりました。無酸素でのエベレストスキー滑降は、長年私の中で育まれてきた夢でした。秋季の困難なコンディションは覚悟していましたし、クンブ氷河を抜ける滑降ラインの策定は、これまでに私が直面した中で最大のチャレンジでした」
登頂中にクンブ氷瀑の通過ルートを探る

登頂中にクンブ氷瀑の通過ルートを探る

© Bartłomiej Pawlikowski/Red Bull Content Pool

秋季の困難なコンディションは覚悟していましたし、クンブ氷河を抜ける滑降ラインの策定は、これまでに私が直面した中で最大のチャレンジでした
アンジェイ・バルギエル
バルギエルは “不可能を可能にした” ことですでに定評を得ている。2018年、彼は世界第2位の標高を誇るK2山頂からのスキー滑降に世界で初めて成功した人物となった。この偉業を成し遂げた人物は今も彼ひとりだけだ。
今回のエベレスト制覇により、彼はエベレストとK2、そしてカラコルム山脈の8,000m峰すべてからのスキー滑降を補助酸素なしで成し遂げた世界唯一の登山家となった。
バルギエルの偉業は、人間の持久力、登山、そしてエクストリームスキーにおける大きなブレイクスルーとして称賛されている。今回の “世界初” は、決意とトレーニング、そしてレジリエンスが人間の可能性の限界をどれほど押し上げられるのかを証明している。
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