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陸上競技

アルマンド・デュプランティス:思い出の場所で見つめ直した2020年と未来

2020年夏、米国出身・スウェーデン代表棒高跳び選手は東京で活躍する代わりに自分のルーツへ立ち返った。すべてが始まったルイジアナ州の裏庭で若き天才が過去・現在・未来を語った。
Written by Matt Majendie
読み終わるまで:4分Published on
2020年夏はアルマンド・デュプランティスにとって人生最高の夏になる予定だったが、現実は異なり、実家の裏庭にある3歳から使ってきた練習用セットアップで棒高跳びの練習を繰り返すことになった。
20歳の天才がこの夏に意識しなければならなかったのは、東京での活躍ではなく、米国ルイジアナ州の隣家の壁に着地しないようにすることだった…。
しかし、世界記録更新のチャンスはひとまずお預けとなったものの、デュプランティスは実家のセットアップで自分のスポーツの基本に立ち返り、初心を取り戻すことができた。
「(ルイジアナの裏庭は)“シンプル” という言葉で表現できるね。最近の僕は複雑な生活を送ってきた。オリンピックや世界選手権に出場しているし、賞金や契約金などもあるから、ただ棒高跳びをしていれば良いという話ではなくなっているんだ」
「でも、裏庭ではすべてが関係なくなった。10歳の自分に戻ったみたいな感覚を得られたんだ。ただ自分を成長させたい、もっと上手くなりたい、楽しんでいたいと思っていた時代にね。シンプルな時代に立ち返ることができた」
Screenshot of Armand Duplantis episode of Red Bull Backyards.

Armand Duplantis's home training facility

© Red Bull Media House

アルマンドが、自己ベスト5.8mを誇った元棒高跳び選手の父親グレッグと兄アンドレアスが空を舞う姿を初めて見たのがこの裏庭だった。2人を見て刺激を受けた彼は3歳から棒高跳びを始めた。
「裏庭に戻った時はデジャヴを感じたよ。初めて飛んだ日を思い出した。飛び終わるたびに父親の方を見ていた頃をね。とにかく、自分が世界記録保持者だということは完全に忘れていた。10年前の自分に戻っていた」
昨年、デュプランティスはインドアで世界記録6.18mを飛んでいた。しかし、この裏庭で彼は自分のルーツに立ち返ることになった。
「米国の子供が父親とキャッチボールをしたり、ヨーロッパの子供が父親とサッカーボールを蹴り合ったりするのと同じで、僕は父親や兄と一緒に棒高跳びをしながら育ったんだ」
また、この若き天才スウェーデン人アスリートは昔の記憶を辿りながら、自分のテクニックをさらに磨くことも忘れなかった。
デュプランティスは父親と一緒に傷んでいた木造の助走路を修繕し、放置されていた着地マットを復元すると、大会やイベントの再開に備えて助走6歩のジャンプトレーニングに取り組んだ。
「棒高跳びは非常にテクニカルなスポーツだから、ポールの感触を覚えておく必要があるし、実際にジャンプしておくことも不可欠だ。裏庭は6mを飛べるような正式なトレーニング施設ではないけれど、5~5.1mまでは問題なく飛べた」
「通常の助走は20歩だけど、裏庭ではその半分も取れない。これまでの僕は助走路最速を目指してきた。言い換えれば、僕からスピードを奪えば、勝てなくなってしまうのさ。だから、スピードが出せない裏庭でのトレーニングは僕の弱点の克服に役立った」
ヨーロッパで完全非公開イベントが開催されるようになり、裏庭でのトレーニングを活かせるチャンスを得たデュプランティスは、現在はスウェーデンに活動拠点を戻している。
アルマンド・デュプランティスと父親

アルマンド・デュプランティスと父親

© Red Bull Media House

デュプランティスにとって夏最大どころか人生最大のイベントになる予定だったオリンピックが延期された今、本人のマインドセットは「来年はさらに調子を上げる」というシンプルな目標に向かっている。調子を上げた先には金メダルが輝いているのだろうか?
「もちろんだよ」と本人は回答する。「今の自分のジャンプにはかなり自信がある。好調を維持して今の自分のジャンプができるなら、どんなイベントでも勝てる」
しかし、現状は観客席にひとりも座っていない会場で開催される改訂版シーズンにフォーカスしなければならない。本人はこのような環境で世界記録を狙うのは難しいと感じている。
「競技を再開させるのは良いことだと思うよ。なぜなら、僕にとってトレーニングは大会のために取り組むものだからさ」
「通常のシーズンでは、メジャーな大会やビッグイベントでベストを出すためにハードトレーニングを積んでいる。でも、今シーズンはヨーロッパ選手権やオリンピックのようなビッグイベントがなくなってしまったから、モチベーションを得るのが少し難しくなっているんだ」

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