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身体のコアを鍛えてバランス能力を強化する
ーースキージャンプという競技において、高梨選手は体型のどういう点が有利だと言えますか?
高梨沙羅(以下、高梨)「体格が大きい人は浮力を得やすいのですが、私は小柄なのでスピードを緩めずに進めるという点で有利だと思います」
ーーその利点を強化するためにやっていることは?
高梨「頭で考えたことを身体にリンクさせられるようにトレーニングしていますね。体幹をしっかりと鍛えて、バランス能力を高めていくということになります」
ーーバランス力を高めるために、我々でも実践できることはどんなことでしょう?
高梨「私はよくストレッチ用ポールのハーフカット(半月になっておりカマボコのような形になっている)の上に仰向けで寝っ転がりながら手足を動かしてバランスを取る、ということをやっています。呼吸しながら身体のコアのバランスを養う感覚ですね」
ーーそのトレーニングは、身体のどの部分に効くんでしょうか?
高梨「力を入れて我慢するという種目ではなくて、身体中の細かい筋肉をしっかりと稼働させることができないと出来ないんですよ。やってみるとわかるんですが、その体勢になるのも難しくて。それが続けていくと身体の歪みが改善されて姿勢も良くなるし、腰痛にも効果的です。うまく出来るようになれば、呼吸しているだけでずっと止まっていられるようになるので、眠っている筋肉を起こせるかどうかがポイントになりますね」
ーーストレッチ用ポールのハーフカットは、遠征先にも持っていくギアですか?
高梨「あまりトレーニング器具を使わない方だと思うんですが、これはバランス感覚を養うのに最適だと思っているので必ず持っていきますね」
02
運動不足解消にはダイナミックストレッチがおすすめ
ーーなるほど、では体幹を鍛えるうえで、誰でもできそうな自重の種目はありますか?
高梨「両手を前に伸ばして、片足を水平に出すストレッチをゆっくりやるのがいいかもしれませんね。ゆっくり3秒かけて手と足を出した姿勢になって、その状態で3秒止まり、また3秒かけて直立に戻す、というトレーニングです。ランナータッチというストレッチに似ているポーズを取りますが、両手を使ってワンモーション3秒と決めることで勢いに頼ることができなくなり、より体幹に効いてくると思います」
ーーバランス能力が養われそうです! 軽いトレーニング的なことでストレッチのおすすめなどはありますか?
高梨「普段スポーツをしない人は、まずダイナミックストレッチ(※ 1)から始めるのが良いかもしれません! 動的ストレッチと言われていて、実際の運動の動作を再現するので、初めてやる人はけっこう疲れると思いますよ」
ーーダイナミックストレッチの種目を1つ教えてもらえますか?
高梨「ランジストレッチが良いと思います。ランジは色々と種類があるんですがステップを踏むような動きをしながら腕を挙げて身体にひねりを加えながら筋肉を伸ばしていくようなストレッチですね。伸ばして気持ちいいと思うぐらいの力を加えながらやっていきます。ヒップアップと体幹を鍛えたいという人に向いている種目ですね。簡単そうに見えますけど、これでもけっこうな運動量になるんですよ。腕を横から上に挙げる動きって、けっこうカロリー消費にもなりますし、強張った身体にも良い刺激を与えられます。ダイエットを始めたい人もやってみると良いかもしれません」
03
高梨沙羅直伝のランジストレッチ
- 【Step 1】 まずは直立の姿勢からスタート。
- 【Step 2】 右足を大きく前に出し、身体を右側にひねる。同時に左手を大きく挙げて背中と腰、両太ももを伸ばす。
- 【Step 3】 同じ状態のまま、身体だけを左側にゆっくりひねる。肩と腕の下の筋肉が伸びてストレッチされていることがわかる。
- 【Step 4】 再び身体だけを右側にひねって、Step2の姿勢に戻す。これを逆サイドの足と腕に変えて10回ずつ繰り返すと、しっかりストレッチされていることが実感できる。
ーー実際にやってみると、身体が伸びて痛気持ち良さがあります! やはりストレッチは運動不足な人がやるにはぴったりですか?
高梨「はい! ストレッチは疲労回復にも良いし、何か特別な運動にチャレンジするというものでもないので、誰でもお風呂上がりなどにやってみると効果がありますよ。毎日ストレッチをしているだけで、しなやかな筋肉が作れますし、そうなれば筋肉に瞬発力も生まれてパッと動けると思います」
ーー逆に、いきなりハードな筋力トレーニングをしても良くないんですね。
高梨「そうですね。そういう意味では、トレーニングし過ぎてガチガチに筋肉が強張ってしまうと、本当に力を出したいときに筋力を発揮できなくなってしまったりするんですよ。特に女性であれば綺麗なヒップラインを作るためにハードなトレーニングを続けている人もいると思うんですけど、お尻周りの筋肉を使いすぎて硬い状態になってしまうと、今度は身体が太ももの筋肉で頑張ろうとしてしまうので、狙ったところをトレーニングし辛くなってしまうこともあります。それを防ぐためにもストレッチでケアすることが大事ですね」
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📚食事法と疲労時のケア方法は【こちら】
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(了)
◆Information
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