Richard James aka Aphex Twin
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ミュージック

最重要UKアンビエントアルバム 7選

時空を超えて後世に伝えられるべき英国発アンビエントの傑作をリストアップ!
Written by Phillip Williams
公開日:
否応なく首根っこを掴んで、ダンスの狂乱の真っ只中へ引き込んでくれる音楽が聴きたい時もあれば、それとは異なる音楽が聴きたい時もある。
アンビエントとは、押し付けがましさとは無縁の思想で作られた音楽だ。アンビエントは休息や内省の時間のためにあり、何かに支配や強制をされることなくリラックスできる。決して自己主張しない壁紙のように、リスナーに寄り添うのだ。
しかし、そのような音楽であるにも関わらず、最良のアンビエントはリスナーを退屈させない。優れたアンビエント作品は空間を豊かにし、荘厳なムードや感性を盛り立ててくれる。
今回は、1970年代のオリジネイターからポストレイブ期のパイオニア、さらにはアンビエントを新たな方向へ推進する現代のミュージシャンまでをカバーした、英国発のベストアンビエントアルバムを7枚紹介しよう。

1. Brian Eno『Ambient 1: Music For Airports』(1978年)

Brian Enoはただのアンビエント・ミュージックのパイオニアではない。彼は “アンビエント” という言葉そのものを発明した。
グラムロックバンドRoxy Musicの元キーボーディストEnoは、1970年代を通してソロキャリアを追求し、その中で環境音楽の可能性に興味を持つようになっていった。
『Music For Airports』は、彼が1970年代中盤にケルン・ボン空港でフライトを長時間待たされている時に、空港のスピーカーから漏れるBGMに苛立っている自分に気づいたのがきっかけだった。そして、英国に戻ったEnoは、空間にパーフェクトにマッチし、「聴き流せると同時に興味深い」超越的な静寂性を表現する音楽を考案した。
シンプルなピアノとヴォーカルのモチーフが位相をずらしたテープループの上に広がり、微細な移行と変化を遂げるジェントルで何も妨げない音楽を生み出した。ミニマルだが決して単調ではない。

2. KLF『Chill Out』(1990年)

Bill DrummondJimmy Cautyによる悪名高きプロジェクト、KLFといえば「What Time Is Love」などの強烈なレイブアンセム、あるいは100万ポンド分の紙幣を公衆の面前で燃やすという奇行が一般的に知られているが、この2人はソフトな側面も持ち合わせていた。
1990年、彼らはストックウェルのプライベートスタジオ内で一発録りした44分のアルバム『Chill Out』をリリースした。
このアルバムは多様なサウンドとスタイルのパッチワークで、濃密なシンセと美しいギターの響きが様々な環境音エフェクト − ラジオの音声、米国の福音伝道者の説教、鳥の鳴き声、トゥバ(チベット)のホーメイによる特徴的なトーン − と融合していた。
DrummondがX magazineに語ったように、『Chill Out』はレイブ後の体験を捉えることを念頭に置いて制作されたアルバムだ。
「田舎でOrbitalっていう巨大レイブを開催した時のことさ。一晩中ダンスしたあと、朝日が昇ってくると、英国の辺鄙なカントリーサイドの風景に囲まれている自分に気付く… 俺たちはレイブ翌日のフィーリングというか、そんな感覚を反映した作品を作りたかったんだ」

3. Aphex Twin『Selected Ambient Works 2』(1992年)

Richard D Jamesが1985年から1992年にかけて制作した楽曲を集めて1992年にリリースした『Selected Ambient Works』に収録されていたプリミティブだが魅力的なエレクトロニック・ミュージックは、レイブやアシッドハウスの延長線上にありながらも、それらとはどこか異なるものだった。
その続編としてリリースされた『Selected Ambient Works 2』は、また別の意味でとんでもない作品だった。この作品はおそらくJamesの明晰夢(内容を自覚している夢)の体験にインスパイアされている。
全編に渡ってほとんどビートレスでタイトルすら持たない24曲は、あたかも深海ダイバーが沈没したガレオン船の内部を探索しているかのような透き通ったテクスチャと半埋没したメロディを追求している。

4. Global Communication『76:14』(1994年)

実に多くの英国産アンビエントがレイブカルチャーの中から生まれたのは決して偶然ではない。アシッドハウスを “陽” とするならアンビエントは “陰” 、熱に浮かされた人が現実に戻るために必要な手段だったのだ。
Tom MiddletonMark Pritchardのデュオ、Global Communicationはサマセット州のトーントンでDJ中のPritchardにMiddletonが話しかけて友人になったことから始まった。
やがて2人は、デトロイトテクノシカゴハウスなどの当時まだ新しかったサウンドや、Jean Michel JarreVangelisなどの古いプログレッシブロックに影響を受けながら、音楽を共同制作するようになる。
アルバムの総収録時間をそのままタイトルにした、いかにもミニマリスト的な『76:14』にはハウスやテクノからの引用が確認できるが、渦巻くようなシンセと淡々と拍を刻むリズムが、深いエモーショナルな引力を備えた穏やかな起伏のアンビエントを形成している。

5. Burial『Burial』(2006年)

Burialの音楽についてはすでに書き尽くされた感もあるが、やはりこの種のリストは彼抜きでは成立しないだろう。
彼の音楽はジャングル/UKガラージ/映画サウンドトラック、果てはゲーム『メタルギアソリッド』の不気味な効果音など多様な影響源を持つが、レコードノイズが絡み合う陰鬱とした音像はあくまでヘッドフォンで没頭するためのもので、クラブ向きではない。
彼のデビューアルバムは今も驚くべきサウンドを放っている(「Night Bus」での憂いを帯びた夜明けのエレジーをチェックしてもらいたい)。
しかし、2017年にリリースされた、まばらで空洞のような12インチ『Subtemple/Beachfires』のように、その後の彼の音楽がより明白にアンビエントの領域に突入している事実を書き加えておくべきだろう。

6. Bonobo『Black Sands』(2010年)

BonoboことSimon Greenは真の雑食性プロデューサーで、世界中のサウンドやスタイルを吸収している。
彼はフォークミュージシャンに囲まれながら成長したが、ヒップホップに出会ってからはサンプリングソースのディグに熱中し、インスピレーションを求めてあらゆる時代のジャズ/ソウル/ファンクを掘り返してきた。
『Black Sands』は彼のノマド的性質の巧妙な総和で、多種多様なサンプル(バルセロナのサックス奏者から鍵束を水の中に落とす音まで)が組み合わされたダウンビートをソウルフルで軽やかなグルーヴに昇華させることで、豊潤でオーガニックなサウンドを作り上げている。

7. The Caretaker『An Empty Bliss Beyond This World』(2011年)

The Caretakerの音楽の背後には、あるひとつのコンセプトが存在する。
『An Empty Bliss Beyond This World』は、マンチェスター近郊のストックポート出身で現在はベルリンを拠点にするLeyland James Kirbyアルツハイマー病の研究に触発されて制作した作品だ。
また、この作品は、Kirbyが発見した1920年代の古いボールルーム・ミュージックのレコードにも影響を受けている。彼はこれらをサンプリングソースとして細かく分解してから再構成することで、不明瞭で壊れているようだが、魅力と品性が感じられる、おぼろげでひび割れたサウンドレイヤーを生み出している。
リスナーを笑顔にしつつ、目の前からスルリと消えていく、不気味だが美しいサウンドだ。