『ハングオン』
© Sega
ゲーム

アーケードレーシングゲーム 名作7選

1985年にSEGAが『ハングオン』をリリースしてから今年で30年が経った。アーケードの名作レーシングゲームを振り返る。
Written by Chris Scullion
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光線銃のシューティングゲームや2次元キャラクターが活躍する格闘ゲームは常に人気を集めているが、アーケードならではの醍醐味と言えばやはりレーシングゲームに勝る物はない。名作と言われるレーシングゲームの多くは、プレイヤーが車体を模したがっしりとした筐体の内部に乗り込み、大きなハンドルを握ってドライビングを楽しむものだったが、こんな体験は、大仰なプレイシートに大金を投じたりしない限りは、自宅ではなかなか味わえない。
1985年に発表された『ハングオン』は、バイク型の筐体と共に現れた本格レーシングゲームの元祖的存在だ。今月で登場から丸30年を迎えたこの『ハングオン』だが、現在でも最高のアーケードレーシングゲームのひとつとして歴史にしっかりとその名を刻んでいる。そこで、今回は過去にアーケードを賑わせた名作レーシングゲームを振り返り、その中からベスト7を選んだ。

『ハングオン』(1985年)

『ハングオン』

『ハングオン』

© Sega

『バーチャファイター』や『アフターバーナー』、『シェンムー』といったSEGAを代表する名作ゲーム群を後に産み出す鈴木裕が1985年に手掛けたのがこの『ハングオン』だ。プレイヤーはバイクを操作しながら、制限時間内にチェックポイントを通過していく。
通常のアーケード筐体(アップライト画面のシットダウンタイプ)の他、スペシャルバージョンとしてバイクそのものを模した豪華な筐体も用意された。プレイヤーはそのシートに跨がり、右に左に身体を揺らしながらスクリーン上のマシンを操作した。これこそ、現代に繋がる車体型筐体の体験型アーケードゲームの始祖と呼ぶべき存在だ。

 

『アウトラン』(1986年)

『アウトラン』

『アウトラン』

© Sega

『ハングオン』を世に送り出した翌年、鈴木裕は『アウトラン』というもうひとつの傑作を産み出した。2輪よりも親しみやすい4輪をモチーフにしたこともあって、『ハングオン』よりもさらに広い層に受け入れられた本作は、『ハングオン』と同様のチェックポイント形式を踏襲したレーシングゲームだった。『ハングオン』でバイクに跨がっていたプレイヤーは、今度はフェラーリタイプのスポーツカーのハンドルを握ってプレイを楽しんだ。
『ハングオン』同様、SEGAは本作でもスペシャルバージョンとして車体を模したデラックス筐体を用意。更にこの特別版では、モーションフィードバック機能を採用し、画面上で起こるアクションと連動して、ハンドルと筐体経由で反力や震動が感じられるようになっていた。登場から30年が経過した今でも、『アウトラン』は(『ハングオン』と同様に)依然として非常に面白いゲームだ。3DS版の『3D アウトラン』をプレイしてみれば我々の言っていることが分かるはずだ。

『バーチャレーシング』(1992年)

『バーチャレーシング』

『バーチャレーシング』

© Sega

SEGAが発表した『バーチャレーシング』は、このリストの中では比較的影の薄いタイトルかもしれないが、従来のスプライト技術に代わってポリゴングラフィックを採用した初のアーケードレーシングゲームのひとつで、当時としては非常に画期的な作品だった。
角張っていながらも未来的なヴィジュアル(当時はまだ3Dポリゴン技術の黎明期であり、これでも十分にエキサイティングだった)で表現されたグラフィックのみならず、レーシングゲーム史上初めて採用されたボタン切替式のマルチカメラアングルもまたゲーム界に新たな潮流を産み出し、プレイヤーたちには衝撃をもって迎えられた。当時は4回連続でこのゲームをプレイし、毎回異なるアングルでゲームを楽しむプレイヤーも多かった。

『デイトナUSA』(1993年)

『デイトナUSA』

『デイトナUSA』

© Sega

『バーチャレーシング』がポリゴングラフィックのレーシングゲームにおける基礎を築いたとするならば、この『デイトナUSA』はその土台上に造られたデカい家といったところだろうか。「デーイートォーナァァー」という印象的なテーマ曲(訳注:SEGAのサウンドクリエイター光吉猛修がヴォーカルを吹き込んだもの)がアーケード内に鳴り響くと誰もが振り向き、『バーチャレーシング』から更に進化したそのポリゴングラフィックも多くの人たちを魅了した。
更に印象的だったのは、最大8台もの筐体をリンクさせたマルチプレイヤーが可能だったことだ。これはアーケードゲーム界初の試みだった。このゲームが登場した1990年代中盤からしばらくは、複数の『デイトナUSA』の筐体が設置してされていない店はアーケードとは呼べないほどだった。

『リッジレーサー』(1993年)

『リッジレーサー』

『リッジレーサー』

© Namco

これまで紹介してきたゲームはすべてSEGA製だが、我々はなにも極端なSEGA贔屓というわけではない。そこには、1980年代の大半と’90年代の前半のアーケードレーシングゲームをSEGAがリードしてきたという単純な事実があるだけだ。そうしたSEGAの独壇場に待ったをかけたゲームが、この『リッジレーサー』だった。
ナムコが開発したこの驚くべきゲームはこの当時の時代を象徴するもので、その強烈なまでに美しいヴィジュアルと心地よいドリフト感覚によって、瞬く間に『リッジレーサー』はアーケードレーシングゲームの代名詞となった。『リッジレーサー』はこれまでに続編6作を数えるシリーズとなったが、現在は新作の開発が止まっている。シリーズ最新作が待たれるところだ。

『クレイジータクシー』(1999年)

『クレイジータクシー』

『クレイジータクシー』

© Sega

アーケードで楽しむレーシングゲームと言えば、直線的なゲーム体験になりがちだ。つまり、プレイヤーはレーストラックに沿って特定の方向へと進み、レース完走もしくは時間切れによってゲーム終了となる。しかし、『クレイジータクシー』はそうしたレーシングゲームとは異なり、このゲームの目的は、サンフランシスコを模した街をタクシーで流しながら、フィールド上で客を乗せ、時間内に指定された場所へ到着することにある。
慌ただしいテンポで進むゲームプレイやそれに合わせた痛快なサウンドトラック(The OffspringやBad Religionが曲を提供していた)も相まって、『クレイジータクシー』はあっという間にアーケードで人気を博すようになった。さらにDreamcastを皮切りにゲームキューブ、PS2、PCへと次々に移植版が発売されると、それに比例してファンはどんどん広がっていった。

『スター・ウォーズ レーサーアーケード』(2000年)

『スター・ウォーズ レーサーアーケード』

『スター・ウォーズ レーサーアーケード』

© Sega

映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が公開された1999年当時、この映画で印象的にフィーチャーされていたポッドレースのシーンを見たシニカルなファンの間では「ジョージ・ルーカスのことだから、このシーンを題材にレーシングゲームとして売り出して、ライセンス料をがっぽり儲けるんだろうぜ」などと囁かれていたが、彼らの予想通りこの映画を元にしたレーシングゲームが発表され、PC版やNINTENDO64版も発売された(のちにDreamcast版も発売されている)。
しかし、我々が取り上げたいのはPC版や64版ではない。当時SEGAのAM5研(訳注:第5研究開発部。『クレイジータクシー3』などを手掛けたチーム)が開発したアーケード版こそが、我々の紹介すべき作品だ。このアーケード版は壮麗なヴィジュアルを誇り、本物のポッドレーサーさながらのコックピットに収まったプレイヤーは独特なレバーを操作してポッドをコントロールした。原作の再現度という点では、間違いなく最高の出来だったと言えるだろう。