Alex Megos climbs The Sacred and Profane (5.14c)
© Ken Etzel/Red Bull Content Pool
クライミング

2019年版:世界のトップクライマー ベスト11

映画『Free Solo』や『The Dawn Wall』などのヒットもあり、クライミングはかつてないほどエキサイティングな時代を迎えているが、数多く存在するニュースターたちの中で “ベスト” は誰なのだろうか?
Written by Will Gray
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Sasha DiGiulian

United StatesUnited States

Angela Eiter

AustriaAustria
トップクライマーの歴史がまたひとつの区切りを迎えている。
1950年代・1960年代のパイオニア時代のあと、1970年代のクールヒッピー時代を経て、1980年代・1990年代にはTVスターや企業サポートを受けるプロクライマーが登場した。
そして現在、クライミングは娯楽化が進んでおり、新世代のトップクライマーたちが世間一般にインスピレーションを与えるようになっている。
アレックス・オノルドが出演した『Free Solo』トミー・コールドウェルが出演した『The Dawn Wall』などの映画によって、クライミングはトーク番組などで扱われるようになり、サーシャ・ディジュリアン白石阿島などの才能がビッグウォールにジェンダーは無関係であることを証明している。
彼らはそれぞれ異なるクライミングのスタイルやアプローチを誇っているため、ベストを決めるのはほぼ不可能だが、我々が考えるトップ11を紹介しよう(各クライマーの年齢は2019年4月15日時点)。

1:アダム・オンドラ

  • 生年月日:1993年2月5日(26歳)
  • 出身地:ブルノ(チェコ)
  • 専門分野:スポーツクライミング / ボルダリング
《主な実績》
ノルウェー・フランタンゲルのフリークライミング最高難度ルート「サイレンス(Silence)」(9c / 未認定)完登[2017年]
熟達したボルダリング技術を披露するアダム・オンドラ
熟達したボルダリング技術を披露するアダム・オンドラ
アダム・オンドラのユニークな体力と呼吸の管理能力(岩壁からのシャウトも含まれる)が、彼をスペシャルな存在たらしめている理由だ。クライミング中、彼の脈拍は上がる代わりに下がる。
身長190cmのオンドラはクライマーとしては長身で、その長い首はひとつのバランスツールとして機能する。彼は他のトップクライマーほど腕力は強くないが、股関節の可動性が高いため、脚に荷重をかけて重心を岩壁の近くに寄せられる。これが体力の温存に繋がるため機械のような登攀ができるのだ。
自分をレゴのオモチャみたいに感じる時がある。自分の手足が誰かに操作されているのを遠くからただ眺めているような感覚に陥るんだ
アダム・オンドラ
チェコのiROZHLAS.comがオンドラのクライミング能力を科学分析した記事(英語)はこちら>>

2:クリス・シャーマ

  • 生年月日:1981年4月23日(37歳)
  • 出身地:サンタクルス(米国カリフォルニア州)
  • 専門分野:スポーツクライミング / ディープウォーターソロ
《主な実績》
スペイン・マヨルカ島「エス・ポンタス / アラーシャ(Es Pontàs / Alasha)」で世界最高難度のディープウォーターソロ成功[2007年 / 2017年]
スペイン・オリアナにある世界最高難度に認定されたフリークライミングルート「ラ・デュラデュラ(La Dura Dura)」完登[2013年]
クリス・シャーマは世界トップクライマーのひとり
クリス・シャーマは世界トップクライマーのひとり
クリス・シャーマにとってクライミングとは限界への挑戦を意味する。そして彼はできる限り多くのクライミングをこなすことでそれを示している。
常にプロジェクトをこなしている彼はハードルを上げ続けており、世界最高難度ルートに認定された「ラ・デュラデュラ(La Dura Dura)」を完登したクライマーは、シャーマとアダム・オンドラだけだ。
セコイアの巨木に挑むクリス・シャーマ
セコイアの巨木に挑むクリス・シャーマ
クライミングジム世代だがルートでの実地学習を好むシャーマは、自分の好みを追求するためにノマド的なライフスタイルを採用している。
クライミング中の自分を “動物的” と表現する彼は、ミスが死に直結しないため限界まで挑戦できるという理由からディープウォーターソロを好んでいる。
クライミングの本質は、自分の才能を見極められるところとギアに頼らない自由と純粋性を持てるところ、限界を見極められるところにある
クリス・シャーマ
Climbing.comがシャーマを特集した記事(英語)はこちら>>

3:アレックス・オノルド

  • 生年月日:1985年8月17日(33歳)
  • 出身地:サクラメント(米国カリフォルニア州)
  • 専門分野:フリーソロ / スピードクライミング
《主な実績》
米国・ヨセミテ国立公園 エル・キャピタン「フリーライダー(Freerider)」フリーソロ世界初完登[2017年]
エル・キャピタンを登攀するアレックス・オノルド
エル・キャピタンを登攀するアレックス・オノルド
アレックス・オノルドの驚異的な偉業の数々は、徹底的に管理されているトレーニング集中的な準備一貫性純粋なひたむきさのたまものだ。これらがなければ、エル・キャピタンのようなビッグウォールをロープなしで登攀するのは不可能だ。
エル・キャピタンをバックに佇むオノルド
エル・キャピタンをバックに佇むオノルド
ウォールでの自分のムーブをイメージし、シーケンスを記憶して自信を得ている彼は、恐怖心が生まれる危険なポジションを脳内でリハーサルすることでコンフォートゾーンを拡大し、メトロノームのようにブレないリズムで登攀していく。
また、スピードも備えており、登攀を止めずにレイヤーを脱いでしまい込めるユニークなテクニックも持ち合わせている。
僕は別に速くないよ。疲れないからスピードが落ちないだけさ。フィジカルの限界に近づくほど成長するのが難しくなる。だから成長するためには多大な献身や集中が必要なんだ
アレックス・オノルド

4:白石阿島

  • 生年月日:2001年4月3日(17歳)
  • 出身地:ニューヨーク(米国)
  • 専門分野:スポーツクライミング
《主な実績》
スペイン・サンタリーニャの「オープン・ユア・マインド・ダイレクト(Open Your Mind Direct)」と「シウダード・デ・ディオス(Ciudad de Dios)で9a / 9a+ルート史上最年少完登[2015年]
ノルウェーのフラタンゲル・ケイヴを登攀する白石阿島
ノルウェーのフラタンゲル・ケイヴを登攀する白石阿島
白石阿島(しらいし・あしま)は身長わずか150cm強でリーチも短く、ビッグムーブに不利な体格だが、その体格を上回る強靭な筋力ダイナミックな敏捷性指の強さでクリフを楽々と登り、オーバーハングもクモのようにスイングしてクリアする。
7歳の時にニューヨーク・セントラルパークでボルダリングを始めた白石は、ジムでハードなトレーニングメニューをこなしながら、舞踏家の父親が実践している舞踏(土方巽を中心として日本で生み出された日本独自の伝統と前衛のハイブリッドスタイル)にインスパイアされたユニークな精神統一法を用いている。
また、彼女の強さのもうひとつの秘密は「楽しむこと」だ。
楽しむことを忘れてしまうと、ストレスを感じ、自己疑念が生じます。みんなが自分の好きなことをできるようになるきっかけ、何かに真剣に取り組むきっかけになりたいです
白石阿島

5:アレックス・メゴス

  • 生年月日:1993年8月12日(25歳)
  • 出身地:エアランゲン(ドイツ)
  • 専門分野:スポーツクライミング / ボルダリング
《主な実績》
スペイン・シウラーナの「エスタード・クリティコ(Estado Critico)」で史上最高難度オンサイト完登[2013年]
アレックス・メゴス
アレックス・メゴス
オンサイト(編注:目標ルートの情報を持たずにファーストアテンプトで完登すること)でも、同じウォールを使ったタイムアタックの繰り返しでも、アレックス・メゴスは高難度ルートを最短でマスターしていく。
メゴスはトレーニングとテクニックを重視しているが、彼のクライミングのカギは全力のアプローチだ。
クライミング · 6分
Alex Megos video
メゴスには短時間でベストパフォーマンスを発揮するために欠かせない驚異的な指の強さ高い嫌気性代謝閾値が備わっている。
また、未知の状況に既知のムーブを当てはめながら、細部に囚われずにスピーディに登っていくアプローチが、彼をトップクライマーへ導いている。
失敗の原因は「滑りやすかった」とか「暑すぎたから」じゃない。「自分が弱すぎたから」さ。高難度が簡単に思えるようになれば、それより上も簡単に思えるようになる
アレックス・メゴス

6:アラン・ロベール

  • 生年月日:1962年8月7日(56歳)
  • 出身地:ディゴワン(フランス)
  • 専門分野:アーバンフリーソロ
《主な実績》
世界一高いビル、ブルジュ・ハリファ(ドバイ)史上初制覇[2011年]
ドバイのカヤンタワーに挑むアラン・ロベール
ドバイのカヤンタワーに挑むアラン・ロベール
“スパイダーマン” としても知られるアラン・ロベールは、天高くそびえる摩天楼をロープなしで(そして時に無許可で)登攀することで有名だ。
彼のスキルは今回のリストに登場する他のクライマーたちと直接比較できるものではないが、衝撃的な “アーバンクライミング” を次々とオンサイトでやってのける彼の能力は、このリストにふさわしい。
通常なら自然岩のクラックや穴、突き出した岩などのルート策定に使われるテクニックを、彼は近代的なビルの窓枠や突起、張り出しに応用しており、シドニー・オペラハウスペトロナスツインタワーエッフェル塔ブルジュ・ハリファを含む100本以上のビルをクリアしている。
フリーソロに転向して、僕は自分の情熱の対象を見つけた。この上なく幸福な孤独感に、生と死の隙間に入り込んだ高揚感が入り混じっているんだ
アラン・ロベール
パリにある高層ビルTour TotalをクライミングするロベールのPOV映像はこちら>>
アラン・ロベールの公式ウェブサイトはこちら>>

7:サーシャ・ディジュリアン

  • 生年月日:1992年10月23日(26歳)
  • 出身地:アレクサンドリア(米国バージニア州)
  • 専門分野:スポーツクライミング / マルチ
《主な実績》
マダガスカル島の「モラモラ(Mora Mora)」で女子初・世界2番目のフリー完登[2017年]
ブラジルのペドラ・リスカーダで初登を達成したサーシャ・ディジュリアン
ブラジルのペドラ・リスカーダで初登を達成したサーシャ・ディジュリアン
サーシャ・ディジュリアンの小柄な体躯は急峻な登攀で大きなアドバンテージになるため、本人はダイナミックなテクニックパワフルなビッグムーブを駆使し、フットワークやボディポジション、ポジティブな姿勢を意識することでそのアドバンテージを最大限活かしている。
サーシャ・ディジュリアン
サーシャ・ディジュリアン
粘り強くギブアップしない性格の彼女は、定期的にクライオセラピー(凍結療法)・グラストン式マッサージ・ドライニードリング(鍼治療の一種)・赤外線サウナ・フォームローラー・シンプルな休息という6種類のリカバリー方法を取り入れ、身体が疲労に屈しないようにしている。
基本的に楽観的ですね。調子が悪い時も、クライミングをネガティブに捉えるのは数日だけです。クライミングは楽しむためのものです
サーシャ・ディジュリアン

8:ダニエル・ウッズ

  • 生年月日:1989年8月1日(29歳)
  • 出身地:リチャードソン(米国テキサス州)
  • 専門分野:ボルダリング
《主な実績》
米国ロッキーマウンテン国立公園の世界最難関ボルダリングルート「クリーチャー・オブ・ブラック・ラグーン(Creature of the Black Lagoon)」世界初完登[2016年]
スイスでのボルダリングに挑むダニエル・ウッズ
スイスでのボルダリングに挑むダニエル・ウッズ
ダニエル・ウッズは自分がクライミングの虜であることを認めている。常に完ぺきを求める姿勢が、彼をボルダリング界のトップへ導き、誰よりも多くV15(ボルダリングにおける2番目に高いと認定された難度)の完登を誰よりも多く達成させている。
自信と謙虚さを兼ね揃えているウッズは、全てのプロジェクトに対して慎重に取り組んでいる。入手できるあらゆる映像に目を通し、できる限り多くの情報を集めながら対策を用意していくという彼のアプローチは、彼のキャリアの大きな助けになっている。
最高の仕事をするためには、自分のあらゆる面を掘り下げなければならない。そのためには仕事に専心する必要がある
ダニエル・ウッズ
Timetoclimb.comがダニエルの内面に迫った記事(英語)はこちら>>

9:トミー・コールドウェル

  • 生年月日:1978年8月11日(40歳)
  • 出身地:エステス・パーク(米国コロラド州)
  • 専門分野:ビッグウォール・フリー
《主な実績》
米国ヨセミテ国立公園内エル・キャピタン超高難度ルート「ドーン・ウォール(Dawn Wall)」フリー世界初完登
ゲリラによる誘拐事件や離婚を経験し、アクシデントによる指の切断でキャリア継続が危ぶまれたこともあるトミー・コールドウェルは、長年に渡りクライミング界の頂点に立つスーパースターだ。
指先を失ってもコールドウェルの情熱は消えない
指先を失ってもコールドウェルの情熱は消えない
指を失ったハンデを克服するという決意は、本人をビッグウォールレジェンドへ押し上げることになった。また、科学的なインドアトレーニングへのシフトによってフィジカルも過去最高レベルに達している。
2018年もアレックス・オノルドと組んでエル・キャピタン「ザ・ノーズ(The Nose)」を2時間10分15秒でクリアしてスピードクライミング記録を更新した。
僕の成功は天賦の才がもたらしたものではない。僕は痩せ型だから優れたクライマーになれる素質はあったと思うけれど、それよりも重要なのはモチベーションとアティテュードだ
トミー・コールドウェル

10:アンゲラ・アイター

  • 生年月日:1998年1月27日(21歳)
  • 出身地:ピッツタール(オーストリア)
  • 専門分野:スポーツクライミング
《主な実績》
スペイン南部ビジャヌエバ・デル・ロサリオの難度9bルート「ラ・プランタ・デ・シヴァ(La Planta de Shiva)」で女子最高難度ルート完登[2017年]
難度8c+ザウバーフェーに挑むアンゲラ・アイター
難度8c+ザウバーフェーに挑むアンゲラ・アイター
アンゲラ・アイターはインドアクライミングで4度のワールドチャンピオンを獲得した経験と、そこで培ったアティテュードをアウトドアにも活かしている。決して諦めず、何度でもトライを繰り返すその姿勢は、彼女をクライミング界の頂点へと導いている。
クライミング · 2分
Angela Eiter breaks new ground in women's climbing
2015年に「ラ・プランタ・デ・シヴァ(La Planta de Shiva)」攻略を2度断念していたアイターは、その後現地を7回訪れて複数のセクションを試し、現地のホールドやムーブを正確に再現するレプリカを自宅に設置し、さらにはアダム・オンドラの同ルート登攀映像をチェックして、2年越しでクリアした。
ここぞという時にパーフェクトなパフォーマンスを発揮する必要がある。コンペはそのやり方を教えてくれる
アンゲラ・アイター

11:ジム・レイノルズ

  • 年齢:25歳
  • 出身地:ウィーヴァーヴィル(米国カリフォルニア州)
  • 専門分野:フリーソロ / スピードクライミング
《主な実績》
米国ヨセミテ国立公園内エル・キャピタン「ザ・ノーズ(The Nose)」世界最速完登[2017年当時・のちにオノルド&コールドウェルが更新]
アルゼンチン・パタゴニア フィッツロイ山「アファナシェフ(Afanassieff)」でフリーソロ世界初完登・下降[2019年]
クライミング界の “ダークホース” と評されるジム・レイノルズは、ヨセミテ国立公園でレスキューチームとして働きながら、同地で素晴らしい実績を築いてきた。2019年3月にフィッツロイ山でフリーソロを成功させた彼はクライミングシーンでのブレイクが目前だ。
ビジネススクールを卒業した経歴を持つレイノルズは、クライミングで頭角を現す前はマンドリンでヘビーメタルを演奏してみたり、日本刀に凝ってみたりと幅広い趣味を持っており、本人はこれらの趣味は心技体を整えるのに役立っているとしている。
フリーソロはソウルフルでプライベートなアクティビティだ。幸せと苦しみが同居している。フリーソロが得意な自分を幸せに思うけれど、これが原因で愛する人たちを苦しめる可能性があるという意味では苦しみなんだ
ジム・レイノルズ
Climbing.comがレイノルズを特集した記事(英語)はこちら>>
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