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【全サイクリスト必読】自転車競技用TRXトレーニング ベスト10

© Trail Creatives/Red Bull Content Pool
UCI MTBダウンヒルワールドカップ優勝ライダーを含む数多のトップアスリートを担当する英国人トレーナーが、ライディングのレベルアップに役立つTRXサスペンショントレーナーを使用したエクササイズを教えてくれた。
Written by Andy Wadsworth公開日:
サドルに座る時間を延ばすことがサイクリングパフォーマンスを高める唯一の方法だと言われることがある。これは、テクニックの向上においては “事実” だ。しかし、実はフォームやストレングスの向上はバイクから離れている時間に得られる。
それならば、と、自宅に本格的なトレーニングギアを用意したり、ジムに通ったりするのも悪くないが、世の中には安価で携行性に優れた代用ギアが存在する。それがTRXサスペンショントレーナー(略称:TRX)だ。

TRXサスペンショントレーナーとは?

自重と重力だけでトレーニングできるTRXサスペンショントレーナー
自重と重力だけでトレーニングできるTRXサスペンショントレーナー
TRXは “Total Resistance Exercise / トータル・レジスタンス・エクササイズ” の略で、ジムの会員になったり、ダンベルやベンチ、スクワットラックを使ったりすることなく本格的なワークアウトをこなせる非常に優秀な代用ギアだ。
重力を負荷に加えることで通常の自重系エクササイズをレベルアップできるTRXサスペンショントレーナーは、関節周りの安定筋群全身の筋力を鍛えるのに最適なので、サイクリングに理想的な肉体を簡単に作り上げることができる。実際、各自転車競技のトップアスリートの多くがTRXサスペンショントレーナーをトレーニングやレース前の体幹のウォームアップに使用している。
TRXサスペンショントレーナーの大きなアドバンテージは、吊り下げられるスペースさえあればどこでも使用できるところだ。
自宅の廊下でも公園の木でも問題はなく、スペースも取らない。また、負荷の大きさも調整可能で、1セットあれば、ポジションを変えるだけでイージーエクササイズからハードエクササイズまでこなせる。非常にコンパクトなのも嬉しい。使用していない時は簡単に収納できる上に、スーツケースに入れて旅行に連れ出したり、バックパックに入れて近所の公園で使ったりできる。

TRXトレーニングセッションの進め方

週2セッションを目標にしたい。下に紹介している10種類のエクササイズの中から好きな5種類を選んで1回目のセッションを構成し、残りの5種類で2回目のセッションを構成する。
5種類のエクササイズは、1エクササイズ10レップ(もしくは別途指定されているレップ数)のサーキット形式でこなしていく。エクササイズ間に30~60秒の休憩を入れる。「5エクササイズ x 3サーキット」でセッション1回とする。楽にこなせるようになってきたら、各エクササイズの「負荷を高める方法」を参考にして負荷を高めていく。

1:スクワット

レップ:10
効果:上半身の姿勢保持筋肉群に刺激を加えながらパワフルな脚力を得られるので、ライディング時のハンドルを引くパワーとペダルを回すパワーを高められる。スクワットは非常に優秀な全身エクササイズのひとつで、後半に紹介しているハード系エクササイズをこなすための基礎作りに最適だ。
  • 臀部を後方に引きながらスクワットする(しゃがむ)。両腕は伸ばしきる。
  • 重心を踵に置きながら、地面に対して背中が垂直になるまで両腕を引き上げていく。脇を締め、両手が肋骨の真横に来るまで引き上げる。
  • 臀部を後方へ引いていく時に膝がつま先より前に出ないように意識する。臀部を引く時も、両腕を引き上げる時も、背中はまっすぐ伸ばし、肩に力が入りすぎないようにする。
負荷を高める方法:両足の位置を前に出せば出すほど、重力が負荷に加わるようになる。また、片脚を持ち上げて真っ直ぐ伸ばせば、シングルレッグ・スクワットになる。

2:プレスアップ

レップ:10
効果:通常のプレスアップと比べると、ストラップを使ったプレスアップは小安定筋群により大きな刺激を加える。ロングライドで酷使するこのような安定筋群が強くなれば、ロングライドの距離を伸ばせる上に、急な方向転換や高難度の地形への対応力も高められる。
  • TRXを使ってプランクの姿勢を取る。プランクと同じように体幹と臀部に刺激が入っていることを確認する。
  • 重力に任せて、肘が曲がりきるまで上半身を倒していく。
  • 肘の位置が背中を越えたら、腕が真っ直ぐ伸びるまで全身を起こしていく。
  • 視線は常に前方に投げかけ、首が曲がらないようにする(首に余計な負荷が入るのを防ぐため)。両肩に力が入らないようにする(すくまないようにする)。
負荷を高める方法:両足の位置をTRX側に近づけて全身を倒し、上半身に重力がさらに加わるようにする。また、片足を浮かせれば体幹と安定筋群により強い刺激が入るようになる。

3:プルアップ

プルアップをマスターできればハンドルバーを強く引けるようになる
プルアップをマスターできればハンドルバーを強く引けるようになる
レップ:10
効果:チンアップ(懸垂)をマスターするために最適なエクササイズ。上半身と肩の大筋群を鍛えながら、体幹にも刺激を入れられる。これらの筋群を鍛えれば、マウンテンバイクやロードバイクでハンドルを力強く引けるようになる。
  • 常に体幹と臀部に刺激が入っていることを確認する。動作の最初から最後までプランクのような刺激が入るようにする。
  • 両腕を伸ばした状態からスタート。背中の大筋群に刺激が入っていることを確認したら、脇を絞りながら腕を曲げて、身体を引き上げていく。
  • 身体を引き上げる時に首と頭が先行しないようにする。視線はTRXのアンカー部分で固定する。
視線をTRXのアンカー部分で固定してフォームを維持する
視線をTRXのアンカー部分で固定してフォームを維持する
負荷を高める方法:両足の位置をTRX側に近づけるか、椅子や壁を使って両足を浮かせれば、重力が大きくなり負荷が高まる。

4:リバースフライ

リバース・フライはライディング時の首の痛みを軽減する
リバース・フライはライディング時の首の痛みを軽減する
レップ:10
効果:首の痛みを訴えているサイクリストをしばしば見かけるが、これはライディング中に頭を長時間固定しながら路面から伝わるあらゆる衝撃を吸収していることが原因だ。この痛みを防ぐためには、背中と肩の姿勢保持筋肉群の強化が重要になる。これらの筋肉群はジムでのワークアウトでは見過ごされがちだが、自転車競技には不可欠だ。
  • 常に体幹と臀部に刺激が入っていることを確認する。動作の最初から最後までプランクのような刺激が入るようにする。
  • 自重に任せて身体を地面の方へ倒す。両腕が伸びきったら、両腕を肩の高さで真横に開きながら身体を引き上げていく。
  • 両腕が肩の高さで完全に開き、身体が引き上がったら2秒維持する。背中側の三角筋(後部三角筋:肩の後ろ側)に強い刺激が入っていることを確認する。三角筋は両肩を覆っている筋肉で、腕と背中を結びつけている。
  • 首に力が入っていないことと肩がすくんでいないことを確認する。
後部三角筋に1~2秒刺激を入れる
後部三角筋に1~2秒刺激を入れる
負荷を高める方法:両足をTRX側に近づけて重力を負荷に加えていく。片足で支えるようにすれば、体幹に入る刺激が強くなる。

5:パイク

体幹への刺激を確認しながらプレスアップの姿勢を取る
体幹への刺激を確認しながらプレスアップの姿勢を取る
レップ:10
効果:シンプルだが体幹全体に刺激を加えられる優秀なエクササイズ。安定した体幹が手に入れば自分のパワーを無駄なくペダルに伝えられるようになり、さらなるスピードが得られる。不安定なストラップがエクササイズの難度を高めるので、安定筋群へ強い刺激を入れられる。
  • 両足をフットクレードルにかけてプレスアップの姿勢を取る。体幹に刺激が入っていることを確認する。
  • 臀部をできるだけ高い位置まで引き上げていく。この時に膝が曲がらないようにする。パイク(臀部が頂点に到達した状態:2枚目の写真)の姿勢が取れたら、1~2秒維持してから臀部を下げていく。
  • 焦らずゆっくりと下げていく。身体がぶれないように意識する。最初のプレスアップの姿勢に戻ったらそこで1~2秒維持し、反動を使ってパイクの姿勢に戻らないようにする。最初から最後まで体幹に刺激が入っていることを確認する。
負荷を高めたいなら元の姿勢に戻ってからプレスアップを入れる
負荷を高めたいなら元の姿勢に戻ってからプレスアップを入れる
負荷を高める方法:パイクの姿勢まで引き上げたあと両腕を曲げて上半身と体幹への刺激をさらに強める。プレスアップの姿勢に戻ってから実際にプレスアップをしても良い。

6:シングルレッグ・ニータック

ライディングの一連の動作を強化できる
ライディングの一連の動作を強化できる
レップ:片脚10(1レップずつ交互)
効果:片脚でペダリングの動きをしたあと逆脚で同じ動きをすることで、ライディング時の動きをシミュレート・強化する。
  • 両足をフットクレードルにかけてプレスアップの姿勢を取る。体幹に刺激が入っていることを確認する。
  • 片膝を胸までタック(引き寄せ)してから元の位置まで戻す。逆脚で同じ動作を行う。
  • タックは腹筋に力を入れて、膝が胸の高い位置まで来るように意識する。逆脚側の臀部に力を入れて、身体が揺れないようにする。
身体を地面に近づければ負荷が一気に高まる
身体を地面に近づければ負荷が一気に高まる
負荷を高める方法:両腕を曲げて全身を地面に近づければ体幹に倍の刺激が入る。マウンテンバイクでラフな路面を走る時に全身に入る刺激や、ロングダウンヒルの高速コーナーで両腕にかかる負荷をシミュレートできる。

7:シングルアーム・スクワット・ロウ

ライディングでは上半身と下半身の連動性が重要になる
ライディングでは上半身と下半身の連動性が重要になる
レップ:片腕10
効果:上半身をひねりながら両脚で踏ん張るので、ライディングの全身の動きをシミュレート・強化できる。ハンドルを強く引きながらパワフルなダンシングをするためには、上半身と下半身を効率良く連動させることが不可欠になる。背骨周りの回転筋の筋力と可動性を高めておくことが自転車競技では非常に重要だ。
  • 片手でストラップを握り、立った姿勢からスタートする。スクワットと同じように臀部を下げながら、上半身をひねってストラップを握っていない方の腕を後方に回して地面に近づけていく、または地面に触れる。両腕と体幹を使って身体が揺れないようにする。
  • 体幹に刺激を加えながら、スタートの姿勢へ戻っていく。背中と上腕二頭筋に刺激が入っていることを意識する。
  • 両脚を上手く使いながら身体を立ち上げていく。最後に臀部を締めて踏ん張り、身体が前に出すぎないようにする。
臀部へ刺激が入っていることを確認する
臀部へ刺激が入っていることを確認する
負荷を高める方法:両足をTRX側に近づければ、重力が負荷に加えられる。また、ストラップを握る指の本数を減らせば、握力も強化できる。

8:バイセップ・カール

上腕二頭筋と姿勢保持筋肉群を鍛えられる
上腕二頭筋と姿勢保持筋肉群を鍛えられる
レップ:10
効果:バイセップ・カールは、立った姿勢で上腕二頭筋(バイセップ)と体幹を鍛えられる数少ないエクササイズのひとつ。上腕二頭筋の優秀なアイソレーションエクササイズ(単関節エクササイズ)だが、上腕二頭筋を鍛えながら安定筋群にも刺激を入れられる。これらの筋群を鍛えられればハンドルを強く引けるようになる。ライディング中に「あの人の腕細くない?」と言われて嬉しく思う人はいない。
  • 体幹と臀部に刺激を入れながら、プランクに近い姿勢を取る。両腕は伸ばし、ストラップと一直線になるようにする。
  • 両腕を巻き曲げていく(カールさせていく)。肘は高い位置で固定して、背筋群の力を借りず、上腕二頭筋だけで身体を引き上げるようにする。腕を巻き上げたら元の姿勢へ戻っていく。
  • 視線は最初から最後までTRXのアンカー部分で固定する。
肘を下げないようにすれば背筋を使わずに済む
肘を下げないようにすれば背筋を使わずに済む
負荷を高める方法:両足をTRX側に近づければ、重力がさらに大きくなる。簡単にこなせるようになったらレップ数を増やしていく。

9:トライセップ・ディップ

TRXは上腕三頭筋に効果的
TRXは上腕三頭筋に効果的
レップ:10
効果:長時間ハンドルを握っていると両腕が酷使される。しかし、トライセップ(上腕三頭筋:上腕の裏側)を鍛えれば、腕の痛みを感じることなく道路やトレイルのあらゆる凹凸をクリアできるようになる。このエクササイズではストラップを上手くコントロールする必要があるので、肩、肘、手首の安定筋群を鍛えながら自転車競技に理想的な上腕三頭筋を作り上げることができる。
  • 両腕を伸ばして自分を支える。脇を締め、肘を背中の後ろへ抜いていくイメージで曲げながら、上半身をゆっくりと真下へ沈めていく。
  • 尻が両手よりも低い位置(または同じ位置)まで沈んだら、バランスを上手く取りながら両手で全身を押し上げてスタートポジションに戻る。
  • 押し上げている間は、肩がすぼまらないように意識しつつ、上腕三頭筋に刺激が入っていることを確認する。
  • 最初から最後まで両手は身体の側面になるべくつけておき、視線は正面で固定する。
尻が両手より低い位置へ来たら、両手で身体を押し上げていく
尻が両手より低い位置へ来たら、両手で身体を押し上げていく
負荷を高める方法:両脚を前へ伸ばせば両腕への負荷が大きくなる。片足を浮かせたり、レップを増やしたりしても良い。

10:プライオメトリクス・スクワット・ジャンプ

レップ:10
効果:一瞬で最大パワーを出せるようにしておくことはすべての自転車競技で重要だ。スタートダッシュを狙ったり、集団から飛び出したりするためには欠かせない。このような瞬発力・爆発力はプライオメトリクス・トレーニングを取り入れることで手に入る。プライオメトリクス・スクワット・ジャンプはスプリントで両脚をちゃんと使い切れるサイクリストのレベルアップに最適なエクササイズだが、ビギナーサイクリストが乳酸慣れするためにも有用なエクササイズだ。
  • スクワットの姿勢を取り、パワーを溜めて、両腕の力を借りながら一気に斜め上へジャンプする。
  • 膝で衝撃を吸収しながらなるべく静かに着地する。ジャンプする時も着地する時も両脚の筋肉に刺激が入るようにする。着地したらまたすぐジャンプする。
  • 最初から最後まで体幹にも刺激が入っていることを確認し、エクササイズのフォームを正しく維持する。
負荷を高める方法:より高くジャンプし、より深くスクワットし、より多くのレップをこなせば、両脚を “完全燃焼” させることができる。
著者紹介:アンディ・ワズワースはMylife Personal Training / BW Cyclingのディレクター。ワールドカップ優勝経験を持つMTBトップライダー(ローリー・グリーンランド)や国内外のトップアスリートをクライアントに抱えている。
(了)
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