ミュージック

今もフレッシュに響くUKガラージ ベスト10

© Dave Swindells
1990年代後半にダンスフロアに新風を吹き込んだジャンルのクラシックトラックを紹介!
Written by Ben Murphy公開日:
   
かつて、UKガラージが英国全土のクラブ、パイレーツラジオ、ポップチャートを席巻し、海外にもその勢いが波及した時代があった。
1997年から2001年までの約5年間で、ソウルフルなUSハウスの高速劣化版としてスタートしたこのジャンルは、UKのサウンドシステムカルチャーとレイブカルチャーから影響を受けながら独自のサウンドへと進化した。また、UKガラージはそこからさらに進化を遂げ、スピードガラージ2ステップ、ダークなグライムダブステップなどのサブジャンルも創出した。
しかし、UKガラージ自体にダークサイドはなかった。このジャンルの定番ドリンクはシャンパンで、シーン最大のスターは洗練されたイメージを打ち出していたCraig Davidだった。また、ピーク時には人気ヴェニューTwice As Niceデイビッド・ベッカムの姿を見ることもできた。
しかし、憶えておきたいのは、初期UKガラージがクラブトラック史上に残る素晴らしいトラックをいくつか生み出したという事実だ。UKガラージは今も大きな影響力を持っており、BurialからSkrillexまで世界中のビートメイカーに刺激を与え続けている。また、Craig Davidも2016年にUKチャート1位に返り咲き、UKガラージ完全復活の可能性を提示している。
今回はUKガラージ最盛期を彩った10トラックを紹介しよう。

1. Tina Moore「Never Gonna Let You Go(Kelly G Bump-N-Go Vocal Mix)」(1997年)

UKのパイレーツラジオとレイブカルチャーに大きな影響を受けているシンコペーション重視・スウィング全開のリズムが特徴の2ステップは、USハウスをUKが独自に解釈したサウンドとして扱われているが、実は、初の2ステップトラックは米国人アーティストによるものだった。
1997年に突如としてリリースされたこのトラックは、米国人ハウスプロデューサーのKelly Gによるもので、Kelly Gは偶然この新しいサウンドを生み出した。すぐにこのトラックのヴォーカルがDouble 99のスピードガラージアンセム「RIP Groove」にサンプリングされたという事実は、UKガラージがKelly Gに大きな借りがあることと、このトラックからシーンが発展していったことを示している。

2. Dem 2「Destiny」(1997年)

多くの人が、UKガラージと2ステップの特徴は跳ねるようなポリリズムパーカッションだと考えている。その代表と言える「Destiny」は、UKのアンダーグラウンド・ダンスミュージックからの影響が強く感じられると同時にフレッシュさも感じさせるトラックだった。
「Destiny」には、強いシャッフル、2ステップのブレイクビーツ、揺れるハイハット、抑えの効いたハードコアスタブが備わっているが、このトラック最大のイノベーションは、ハイピッチのカットアップヴォーカルサンプルで、このテクニックは、Burialをはじめとする数多くの後続アーティストが繰り返し使用することになった。「Destiny」は今でもダンスフロアを揺らすことができるプレミレニアルハイブリッドだ。

3. TJR feat. Xavier「Just Gets Better(TJR Dub)」(1996年)

Matt “Jam” LamontKarl “Tuff Enuff” Brownで構成されるTuff Jamは、ロンドンのオールドケントロードにあったクラブFrog & Nightgownと、レスタースクエア付近にあったクラブGass ClubでのDJセットでUKガラージシーンを牽引したトップDJ / プロダクションチームだった。
1996年にリリースされた、パイレーツラジオ的バイブスを備えたこのブレイクビーツトラックは、ソウルフルなUSハウスとラフ&ファンキーなUKサウンドのクロスオーバーというUKガラージの特徴を見事に表現している。

4. Wookie「Scrappy」(1999年)

Wookieから選ぶなら「Battle」でも良かったが、このサンプルベースのハードエッジファンク「Scrappy」の方がフロア向きだ。「Scrappy」はキャッチーなキーボードフレーズからスタートしたあと、ジャングル的なサブベースとハードなブレイクビーツが鳴り響くシンプルなダンストラックへと変化していく。元Soul II Soulとして知られるアーティストの違った側面を見ることができる軽快なトラックだ。

5. 187 Lockdown「Gunman」(1997年)

ジャングルとUKガラージを組み合わせているトラックは数多く存在するが、最も多くの人の記憶に残っているのが「Gunman」だ。Ennio Morriconeが手掛けた映画『夕陽のガンマン』のサウンドトラックをサンプリングしている1997年リリースのこのトラックは他とは一線を画していた。
細かくチョップしたジャングルビートに強烈なサブベースを組み合わせているこの4つ打ちスピードガラージは、Danny HarrisonJulian Jonahの手によるものだ。尚、様々な名義を使い分けていた彼らは、Nu-Birth名義でもうひとつのUKガラージクラシック「Anytime」を生み出したことでも知られている。

6. MJ Cole「Sincere」(1998年)

音楽の正式教育を受けたMJ Coleは、ドラムンベースのトップレベールSOURのサウンドエンジニアを務めたあと、音楽知識と低音への愛をUKガラージに注ぎ込んだ。Talkin’ Loudと契約した彼は、コーヒーテーブルを囲む一般リスナーへUKガラージを届けたアーティストとして知られている。
ColeはたしかにUKガラージの注目度を高める助けになった。なぜなら、このトラックは誰もが拒否できない魅力を備えていたからだ。物憂げだが美しいヴォーカル、逆回転のコード、2ステップとハウスのハイブリッドビートは、UKガラージクラシックに求められる条件を全て満たしている。

7. Active Minds「Hobson’s Choice(Tune For Da Man Dem)」(1997年)

UKガラージのアンダーグラウンドヒットとしては奇妙なトラック名(ホブスンの選択 = どうしようもない選択を意味する慣用句)だが、このトラックは、UKガラージ最盛期の力強い反体制主義を見事に捉えている。
ダークでディープなパッドが漂い、カットアップされたドラムが荒々しく鳴り響き、ヘヴィなサブベースが地を這う中、ラフな女性ヴォーカルが全てをミニマル&ハードにまとめている。ダブステップの前身とも言えるこのトラックは無名に近かったが、Four Tetが『Fabriclive 59』に収録したことで近年はクオリティに相応しい評価を得ている。

8. Groove Chronicles「Stone Cold」(1997年)

DJ NoodlesEl-Bのコンビは数多くのUKガラージ / 2ステップクラシックを生み出したが、「Stone Cold」ほど大きな影響力とエバーグリーンな魅力を備えているトラックはない。このトラックは、UKガラージをダブステップに押し進めたトラックのひとつに数えられており、El-Bもダブステップの生みの親とされることが多いが、「Stone Cold」はそれ以上のトラックだ。
ソウルフルなシャッフル、薄いヴォーカル、ジャズサックスのサンプルが特徴のこのトラックは、前半はBump & Flexのレイドバックバージョンと呼べるものだが、凶悪なAlex Reese的なベースラインが入ってくるブレイク後はムードが一変してパラノイアな緊張感が生み出され、UKガラージの “ハードコア上がり” のルーツが見えてくる。

9. Ramsey & Fen feat. Lynsey Moore「Love Bug」(1998年)

2ステップシーンを支えたプロデューサーコンビ最大のヒットトラックがこれだ。
パイレーツラジオ局Freek FMのDJだったRamsey & Fen(UKハードコアとUSガラージをルーツに持つ)は、毎週土曜日に放送していた自分たちの番組でUSトラックと初期UKトラックをミックスしていたことから、初期UKガラージを代表するアーティストに数えられている。しかし、クラブとチャートの両方で大ヒットしたこのトラックは、彼らのルーツだった4つ打ちから離れた独自のジャンルに感じられた。

10. Smokin Beats feat. Lyn Eden「Dreams」

1993年から活動していたNeil RumneyPaul Landonは、ニューヨークとニュージャージーのガラージのリズムを好んでいたプロデューサーだったが、1996年にUKガラージが生まれると、彼らのサウンドにも変化が訪れた。
4/4のビートと情熱的なヴォーカルを備えている「Dreams」は、USサウンドの系譜上にあると言えるが、幻想的なシンセとユニークなベースラインは、ジャングルの内省的な部分を感じさせるもので、この特徴がこのトラックにUKガラージクラシックの称号を与えることになった。
その他のUKガラージクラシック: