サイクリスト用自重トレーニング
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サイクリング

サイクリスト用自重トレーニング おすすめベスト10

アサートン兄妹らエリートライダーを指導するトップコーチがサイクリストのパフォーマンス向上に効果的な自重トレーニング10種類を解説!
Written by Alan Milway
読み終わるまで:13分公開日:
ロードバイク、MTBを問わず、パフォーマンスと持久力を向上させる代表的なトレーニングはライディングと言われている。しかし、バイクから離れていても取り組めて、さらにはラディング以上にフィットネスとストレングスを向上できるエクササイズが世の中には無数に存在するのだ。
筋肉のストレングスと持久力を高めれば、ライディングパフォーマンス向上が期待できる。姿勢の改善、サドル上でのバイクコントロール能力の向上、ペダルストローク効率の最大化はその恩恵の一部だ。
ただし、冒頭で述べたようにライディングでもある程度は鍛えることが可能なので、 “オフバイク” トレーニングはライディング中に安全に鍛えることが難しいエリアに絞り込みたい。
また、サイクリングの性質上、筋肉の不均衡はペダルへの均等なパワー伝達を妨げ、パフォーマンスに悪影響を与える。場合によっては肩や背中・腰などに痛みを生じさせるおそれもあるので、これらを防ぐのに役立つトレーニングでもあることが望ましい。
だからといって、わざわざ高価なジム会費を払う必要はない。自重トレーニングは実践的かつ効果的なトレーニングメソッドだ。適切に負荷を増やしながら、正しいフォームやテクニック、筋肉のアクティベーションにフォーカスできる。
というわけで、今回は器具をほとんど用いることなく筋肉のストレングスと持久力を均等に鍛えられる自重トレーニング10種類を紹介する。

セッションを始める前に

今回紹介する自重トレーニングセッションを行うには、2つの方法がある。
ひとつは、1種類のエクササイズを3〜4セット繰り返し、各セット間に休憩1分を挟む方法だ。
もうひとつは体力に自信のある人用で、10種類のエクササイズをひとつのサーキットとして行う方法だ。10種類のエクササイズを順番にこなして1ラウンドとしてカウントする。1ラウンド終えるごとに休憩を2分挟み、合計で4ラウンド行う。
4セット(または4ラウンド)を無理なくこなせるなら、各項目で紹介している方法で負荷を増やしてみよう。他のエクササイズよりスピーディに負荷を高められるエクササイズもある。

1:リアフットエレベーテッド(RFE)スプリットスクワット

裸足のRFEスプリットスクワット足の内在筋を強化できる

裸足のRFEスプリットスクワット足の内在筋を強化できる

© Alan Milway

レップ&セット:12レップ × 4セット
効果:片脚ずつ強化するエクササイズで、筋力が弱い方の足を鍛えつつ、脚力を鍛えてペダルにより強い力を伝えられるようになる。
また、このエクササイズは中臀筋(3種類存在する臀筋のひとつ)に働きかけ、サイクリストがしばしば見落とすペダル踏み込み時の脚の安定性を高める。ペダリングのバランスに欠けているサイクリストなら、このエクササイズに取り組めば左右の脚の筋力を均衡化できる。また裸足で取り組めば足の内在筋を強化できる。
  • 椅子、またはベンチの前に立って後足を載せる。
  • 腰に手を当て、後ろ側の膝を床に近づけるように腰を落としていく。胸は張ったままで前方を見る。後ろ側の股関節屈筋が伸ばされる感覚が生じるので、膝を床につけるのが難しいようなら無理はしない。
  • 腰を沈めた姿勢で一時静止してから元の姿勢に戻る。前足のかかとは床につけたままで、前脚は膝から下は垂直に近い状態を保つ。かかとが浮くなら前側に軽く足を出す。
  • 片脚で12レップしたあと脚を入れ替える。
負荷を高めるには:両手にひとつずつダンベルを持つか、肩の前でバーベルを抱えて荷重を増やせば瞬く間に難度が高まり、体幹と背中の筋力向上に絶大な効果を発揮する。また、エクササイズバンドも非常に有用で、肩から足にかけて通せば簡単かつ効果的に負荷を高められる。

2:プレスアップ

定番のプレスアップは上半身の強化に最適

定番のプレスアップは上半身の強化に最適

© Alan Milway

レップ&セット:12レップ × 4セット
効果:シンプルなプレスアップ(腕立て伏せ)は上半身を前に押し出す力を高めるのに最高のエクササイズだ。器具は必要ないが、体幹に力を入れて背中をまっすぐに保ち、良好なフォームを保つ必要がある。
  • 両手を肩幅の位置に置く。手が身体の正中面から離れていくように手を床へ外回りでねじ込むように意識する。実際に手は動かないが、床へ手をねじ込んでいくイメージをすれば腕の張りが増して肩の安定性が高まり、上半身を沈める際に肘が体側に沿いやすくなる。
  • 腹に力を入れ、胸を床へ近づけて一時静止したあと、つま先から肩まで一直線の姿勢を意識したまま腕を使って上半身を戻す(この時、胸と尻を一緒に持ち上げる)。
レジスタンスバンドを使えば負荷を高められる

レジスタンスバンドを使えば負荷を高められる

© Alan Milway

負荷を高めるには:身体をしっかりと沈めるプレスアップ(背中がまっすぐに保たれたまま鼻先が床につけられるレベル)を12レップ × 4セットこなせるようになったら、床に胸をつけてうつ伏せになり、両手を床から離し、両手を床に戻してから上半身を持ち上げる “ノーハンデッド” プレスアップにトライしてみよう。肩の柔軟性が求められる上に、胸から身体が持ち上がらないように姿勢を保つための体幹と上半身の筋力が必要になる。
他には背中にウエイトを載せるやり方もあるが、ミルウェイの個人的なお気に入りは、レジスタンスバンドを親指にかけたあと、背中側に通してもう片方の親指にかけた状態でのプレスアップだ。

3:レッグレイズ + サイドプランク

ステップ1:腰を持ち上げて身体を一直線にする

ステップ1:腰を持ち上げて身体を一直線にする

© Alan Milway

レップ&セット:8〜12レップ × 4セット
効果:ライディングのほとんどは身体の正中面で行われるため、この面から外れる動作は見過ごされてしまいがちだ。しかし、正中面の以外の面を使う四肢の安定性と筋力を高めれば中臀筋が強化されて体幹が強固になるため、ライディングフォームが安定する。
  • 左肘から先の前腕部を床につけて横になる。
  • 右手の指を右脇の下に入れ、右肘が真上へ向くようにする。
  • 右肘を真上へ向けながら腰を浮かせて一時停止してから、上側の脚を上げていく。
  • 上側の脚をできるだけ高く上げて一時静止したあと脚を下げ、腰を下げる。ゆっくりと繰り返し、脚の上下運動と腰を下げる動作を意識して、レップを通じて負荷をかけていく。
  • 左側で一定数のレップをこなしたあと、右側に替える。
ステップ2:上側の脚を上げて腰をまっすぐ伸ばす

ステップ2:上側の脚を上げて腰をまっすぐ伸ばす

© Alan Milway

負荷を高めるには:毎回腰を下げる代わりに、サイドプランクの姿勢を維持したままレッグレイズを1セット分繰り返してみよう。

4:シングルレッグ グルートブリッジ レイズ

シングルレッグ グルートブリッジ レイズは椅子やベンチ、ソファが活用できる

シングルレッグ グルートブリッジ レイズは椅子やベンチ、ソファが活用できる

© Alan Milway

レップ&セット:5〜10レップ × 4セット
効果:グルートブリッジ レイズはハムストリングス臀筋に働きかけ、ペダリングを強化する。ペダルを踏み込む力は左右にばらつきがあったり、どちらかが弱かったりする場合があるので、弱点を洗い出して強化するにはシングルレッグが理想的だ。
  • 仰向けに寝て、椅子やソファ、ベンチの上に足を載せる。膝が約90°になるようにする。
  • つま先を天井へ向けたまま、かかとを椅子に押し付けて尻を持ち上げる。尻から持ち上げるのがポイント。背中を曲げて持ち上げないようにする。
  • 腹部に力を入れたままにして、反りすぎないないようにする。上半身が反っている状態は臀部ではなく背中を使っている証拠なので注意したい。
  • 尻を持ち上げて一時静止したあと、ゆっくり元の姿勢へ戻る。
負荷を高めるには:シングルレッグではウエイトなしでも5 レップでかなり苦しくなる。ゆっくりと回数を増やしていこう。片脚で十分なレップ数をこなせる自信がついたら腰のあたりでダンベルなどを持って荷重を加え、難度を高めてみよう。

5:バンデッド ベントオーバー ロー

レジスタンスバンドでバーベルローと同じ動作を再現する

レジスタンスバンドでバーベルローと同じ動作を再現する

© Alan Milway

レップ&セット:8〜12レップ × 4セット
効果:体幹を使って上半身の前傾姿勢を維持しつつ、ハムストリングスに刺激を加え、さらには抵抗に耐える必要があるベントオーバー ローは、バイクに乗っている姿勢に近いので理想的なエクササイズだ。だけではなく、中背部・背下部の強化にも効果的だ。
  • レジスタンスバンドを両足で押さえて立つ。
  • 上半身を前傾させ、腰を引いて肩を前に出し、足を踏ん張り(ただし膝は固定しない)、背中は直線にする。
  • レジスタンスバンドを持ち、前傾姿勢を変えないまま肘を斜め後方に引き上げ、バンドを胸に向けて引き寄せる(バーベルローの動作)。
  • 胸まで引き上げたら一時静止し、そのあと背中を固定したままゆっくりと腕を伸ばしていく。ペダルの上に立っている自分をイメージし、重心は身体の中心にキープする。
負荷を高めるには:胸まで引き上げたあとの静止時間を長くすればあっという間に疲労するので前傾姿勢を保つのが難しくなる。バンドの強度を高めて負荷を強めたり、1セットのレップ数を増やしても良いだろう。

6:デッドバグ

ステップ1:「デッドバグ(死んだ虫)」という名称は一目瞭然

ステップ1:「デッドバグ(死んだ虫)」という名称は一目瞭然

© Alan Milway

レップ&セット:6レップ × 4セット
効果:デッドバグは骨盤の位置を正しく保つのに役立つ素晴らしい体幹エクササイズで、腹筋を強化するだけでなく硬くなりがちなサイクリストの股関節屈筋も強化する。
  • 仰向けになり、太ももが床と垂直になるように膝を立てる。そのあと、すねが床と平行になるように膝から下を浮かせる。同時に指先を天井に向けて両手を伸ばす。
  • この姿勢で腹に力を入れ、腰を床に押し付ける(きついジーンズのジッパーを閉めるイメージ)。
  • 腰を床に押し付けたまま片足を伸ばしていく(ただし脛は床と平行のまま)、同時に反対側の腕を床に向けて下げて頭の先へ伸ばす。伸ばした脚と腕を床から少し浮かせたあと、最初のポジションに戻る。
  • 腰を床に押し付け続けるのがポイント。腰が浮いてしまうところで手足を伸ばすのを止める。腰が浮かない範囲で6レップごとに左右を入れ替える。
ステップ2:負荷を高めるには両手両脚を同時に伸ばす

ステップ2:負荷を高めるには両手両脚を同時に伸ばす

© Alan Milway

負荷を高めるには:1セットのレップ数を増やし、手足を伸ばす時間を長くしたあと、両手・両脚を同時に伸ばすバリエーションにトライしてみよう。
リトアニアの陸上競技選手ヴィルギリウス・アレクナにちなんで名付けられた “アレクナ” も負荷を高められるバリエーションで、両すねにウエイトを装着し、両手にウエイトを持つデッドバグだ。
アレクナは効果的に負荷を高められ、また股関節屈筋への効果も絶大だが、こちらも床に腰を押し付けるので、かなりハードなエクササイズになる。

7:バンデッド フロントスクワット

正しいフォームを保ち、背中を伸ばす

正しいフォームを保ち、背中を伸ばす

© Alan Milway

レップ&セット:10〜12レップ × 4セット
効果:スクワットは下半身強化に最も有用なエクササイズのひとつだ。しかし、フロントスクワットは上半身を直立に保つので、体幹強化背筋のストレングス強化に繋がる。この姿勢はライディングでも必要なので、サイクリングにも実に効果的だ。
  • エクササイズバンドを両足で踏み、スクワットの姿勢を取ったあとバンドを両手で掴む。手の平は上に向け、両肘は絞って前方へ向ける。
  • 肘を前方へ向けたまま、胸を張って立ち上がる。バンドが前方へ力を加えるのでので、前腕と手首が伸びる感覚を得る。
  • 両足は肩幅程度のスタンスにしたそのまま次のレップのために上半身を沈めていく。
  • 深く沈まなくても問題はない。胸を張ったまま上半身の姿勢を維持することがこのエクササイズの目的だ。
負荷を高めるには:自宅ならレジスタンスバンドの抵抗力で十分だが、バーベルがあるならはこれを使って負荷を追加できる。慣れたあとはスクワットを深くしていく。沈みきったあと一時静止すれば難度がさらに高まる。

8:シングルレッグ カーフレイズ

カーフレイズは筋力の弱い脚を鍛えるのに効果的

カーフレイズは筋力の弱い脚を鍛えるのに効果的

© Alan Milway

レップ&セット:12〜15レップ × 4セット
効果:ライディングフォームを保ち、ペダルストロークの効率性を維持するにはふくらはぎが重要だ。また荒れた路面で身体のポジションをコントロールし、地面からバイクを通じて突き上げてくる衝撃を押し返すためにもふくらはぎは重要だ。足首や膝を怪我したことがあるライダーの多くは、足首の可動範囲が狭くなり、ふくらはぎの筋力が低下してしまう。
  • 段差のある場所を見つけ、母子球を段差の縁に置く。
  • かかとを完全に床につけたあと、静止してからつま先に力を入れて身体を引き上げる。この時、脚は伸ばし、尻は水平を保つ。
  • つま先立ちで一時静止したあとかかとを床に下ろす。
負荷を高めるには:片脚最低25レップを目標にする。左右の筋力差を感じることなくこれができるようにする。25レップが無理なら、レップを減らしてセットを増やすか、カーフレイズをしている脚と同じ側の手にウエイトを持って荷重を追加しよう。

9:プランク

プランクの負荷を高めるには時間を長くするよりウエイトの追加が効果的

プランクの負荷を高めるには時間を長くするよりウエイトの追加が効果的

© Alan Milway

レップ&セット:30〜60秒 × 4セット
効果:プランクは非常にポピュラーだが、同じ姿勢を維持することで体幹を引き締めて強化する優秀な体幹エクササイズだ。プランクの長時間キープで問題になるのは、腰が沈んだり浮いたりして正しいフォームが失われてしまうところだ。負荷が正しくかかるかどうかが体幹への効果を左右するので、フォームの維持がカギになる。
  • プレスアップのフォームを取り、両肘を肩の真下あたりの床につける。
  • 尻を引き締め、腹に力を入れて、全身を硬く引き締めていく。
  • プランクの効果を最大限得るためには、短時間でもフォームをキープする。背中が丸まって腰が下がったり、尻や腰が浮かないようにする。
負荷を高めるには:時間を長くするだけが負荷を強める方法ではない。時間を延ばす代わりに荷重を追加してもOKだ。ウエイトを使えばさらなる体幹の引き締めと正しいフォームが必要になる。

10:オープンブック ストレッチ

レップ&セット:4〜6レップ × 4セット
効果:オープンブック ストレッチは厳密にはストレングスエクササイズではないが、姿勢を向上し、背中の痛みを減らすのに最適なストレッチで、硬くなった胸筋もストレッチできる。また、今回紹介した一連のエクササイズ前に行うのも効果的で、正中面以外で行われる運動を増やすので柔軟性が高まり、必要なポジションを取りやすくなる。
  • 身体を横にして寝ている姿勢になり、下側の脚を伸ばしたまま上側の脚を90°に曲げて膝を床につける。
  • 上側の腕はできるだけ伸ばす。これがスタートポジションになる。
  • ここから弧を描くように上側の腕を真上に上げていき(本を開くようなイメージ)、反対側の床に手がつくように腕を回転させるが、膝は床につけたままを維持する(ミルウェイは膝が浮かないように下側の手で押さえている)。背中に捻りが加わり、胸が開き、臀筋がストレッチされる。
ストレッチ効果を高めるには:膝を床につけたままにするのは難しいので、最初は膝と床の間にクッションを挟んで負荷を下げてもOKだ。しかし、このストレッチの効果を高めたいのなら、友人に頼んで膝を床に押し付けてもらいつつ、腕を外側へ持っていったあと肩が浮かないように押さえてもらえばストレッチ効果が最大化できる。
オープンブック ストレッチは非常に効果の高い優秀なストレッチだが、正しく行えるようになるためには努力が必要だ。
◆Information
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