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Supercellはモバイルゲームのヒットタイトルを産み出す方法をいくつか知っている。彼らは『クラッシュ・オブ・クラン』、『クラッシュ・ロワイヤル』、そして『ブロスタ / Brawl Stars』(以下『ブロスタ』)を連続で大ヒットさせてきた。
iOSとAndroidでリリースされた最新作『ブロスタ』は、『League of Legends』、『オーバーウォッチ』、『PlayerUnknown’s Battlegrounds』をマッシュアップしてシンプルにしたようなゲームで、ポケットサイズのディスプレイに最適化されたチームアクションが楽しめる。
この特徴が、『ブロスタ』をesportsタイトル候補のひとつに押し上げており、2019年2月2日・3日にドイツ・ドルトムントで開催されるRed Bull M.E.O. by ESL World Finalsでその実行可能性が明らかになる。
Red Bull M.E.O. by ESL World Finalでは、オンライン予選を勝ち上がった世界最強の8チームが優勝を目指して激しい戦いを繰り広げる予定になっている。
つまり、このトーナメントは、『ブロスタ』のハイレベルなプレイがどのようなものなのか、そしてトーナメントシーンにおけるこのゲームのメタがどうなっているのかを確認するベストチャンスになるのだ。このゲームをプレイしながら、シーンを追い続けてきた我々は、それを目の前で見届けることが楽しみで仕方がない。
今回はRed Bull M.E.O. by ESL World Finalsの前に、『ブロスタ』のゲームリードを務めるFrank Keienburgをキャッチして、このゲームをグローバルヒットに仕立て上げるまでの経緯とトーナメントシーンの可能性などについて話してもらった。
アイディア
Supercellは『クラッシュ・ロワイヤル』をトップレベルのモバイルesportsタイトルに押し上げた経験を持っている。そして『ブロスタ』では、家庭用ゲーム機やPCのヒットタイトルの真似ではないがそれらを彷彿とさせる、アクティブ&チームベースのesportsエクスペリエンスをスマートフォンに作り出すことを狙っていた。
Keienburgは次のように話を切り出す。
「私たちは『League of Legends』や『オーバーウォッチ』のようなヒットタイトルの要素を捉えつつ、不必要な複雑さを加えることなく、チーム戦が楽しめるトップタイトルを開発しようというのが当初の狙いでした」
「また、最初からモバイルゲームを強く意識していました。モバイルゲームでは、操作やUI、ファイルサイズなどがプレイヤーエクスペリエンス全体に大きな影響を与えます。私たちは、そこまで重要ではない表面的な部分を削り取りながら、奥深さを維持するように心がけました」
『ブロスタ』では、トーナメントシーンが存在する複雑で高難度なシューターと同レベルのスリルが得られるが、同時にそのようなタイトルよりもシンプルにまとめられており、短時間で楽しめるようになっている。1プレイは数分で、マッチメイクも一瞬なので、立ち上げてすぐに敵を倒す快感が得られる。
また、非常にユニークなモードもいくつか用意されており、ステージに定期的に出現するエメラルドを奪い合うチームバトルや、ソロとデュオが楽しめるバトルロイヤルなども収録されている。『ブロスタ』は、第一印象よりも “濃いゲーム” なのだ。
「この『ブロスタ』は、簡単にプレイできますが、マスターするのは難しいというアイディアが中心に据えられています」と続けるKeienburgは、経験豊かなプレイヤーたちがプレイするとその奥深さがさらに増すとしている。
「異なるトロフィーレベルのゲームプレイを比較すれば、大きく異なっていることが明確に理解できると思います」
ソフトローンチの苦労
リリース後数週間で数百万ダウンロードを達成した『ブロスタ』は、すでにグローバルヒットというステータスを獲得しているが、テストフェーズで終わっている可能性もあった。
Supercellは、2017年6月に『ブロスタ』をソフトローンチし、フィードバックを得ながら修正を加えていったのだが、時間と共にそのような修正部分が想像以上に大きくなっていったのだ。
Keienburgは次のように振り返る。
「プレイヤーが実際にプレイする前に、ヒットタイトルになるかどうかを知るのは不可能です。『ブロスタ』が最初からスムーズだったかというと、答えは “ノー” です」
「たとえば、ポートレートモード(縦表示)からランドスケープモード(横表示)に変えました。これは多くのコミュニティメンバーを混乱させることになりましたね。また、メタやUIも複数回変更しましたし、グラフィックスもリリース直前の段階で2Dから3Dに変更しました」
しかし、ソフトローンチから1年が経過したあとも、『ブロスタ』はまだ “地域限定” から抜け出せずにいた。そのため、Supercell側も正規版をリリースできるのかどうか不安になっていた。
Keienburgも「2018年夏の段階では、『ブロスタ』をリリースするかどうか決めかねていました」と認めている。
開発チームにとってこのゲームの開発は長く辛い道だった。また、Supercellにはソフトローンチ後に「いまいち」と判断して正規リリースを断念した過去もあった。
しかし、『ブロスタ』はあらゆる困難を乗り越えて、無事にリリースされることになった。そして今や、Supercellはこのゲームの中に『クラッシュ・オブ・クラン』や『クラッシュ・ロワイヤル』と同じようなロングヒットになるポテンシャルを見出している。
しかし、Keienburgは「ですが、まだリリースから間もないですし、Supercellは数ヶ月単位、クォーター単位で物事を考えません。5年後にまた改めてお話できればと思っています」と念を押している。
esportsタイトルとしての未来
この長期的視野は『ブロスタ』をesportsヒットタイトルに押し上げる大きな助けになるはずだが、Supercellは、現時点ではその点について何も発表する予定がないと明言している。
とはいえ、このゲームの観戦がどれだけ楽しくて魅力的なのかについて、彼らはすでに肌で確認している。Keienburgが説明する。
「2018年9月に自分たちでトーナメントを主催したんです。150人以上のプレイヤーに参加してもらい、コミュニティマネージャーのRyan “RLight” LightonとSeth “The Rum Ham” Allisonをコメンテーターに据えて、決勝トーナメントはステージ上でプレイしてもらいました」
「その会場側のスタッフが仕事の手を休めてビッグスクリーンのプレイに注目している様子を見た時に、『ブロスタ』がビッグヒットになることを確信しました。彼らはこのゲームを見たのは、この日が初めてでした」
Keienburgは、現時点で『ブロスタ』がesportsのメジャーチームやメジャートーナメントのオーガナイザーたちを引きつけるレベルにあるかどうかを判断するのは難しいとしている。
物事の順番を間違えたくないSupercellは、シーンからのニーズがどの程度あるのかをきちんと把握する前に『ブロスタ』を次のesportsビッグタイトルにプッシュするつもりはない。
Keienburgは次のように説明している。
「結論から言うと、Supercellは “esportsタイトルは狙って作れるものではない” と考えています。個人的には、コミュニティの反応を見る前からデベロッパーが “新しいesportsタイトルです” と謳うのはどうかと思っています」
「Supercellはその順番を逆にしたいと思っています。私たちは、親しみやすいゲームプレイや観戦機能など、トーナメントオーガナイザーやインフルエンサーにトーナメントを企画・開催したいと思ってもらえるベーシックな “ツール” を用意するだけです」
このようなツールは、Supercellがモバイルesportsタイトルを生み出せる実力の持ち主であることを踏まえると、控えめな “ファーストステップ” と言える。
しかし同時に、このようなツールは、『ブロスタ』が本物のesportsファンのハートを徐々に掴んでいくチャンスを作り出している。また、Supercellは、コミュニティ内から自然発生的にトーナメントシーンが生まれたあとは、彼らを支える用意があるとしている。
「私たちが用意したそのような “ツール” によって様々なイベントやトーナメントが開催されるようになりました。その中で比較的大きなもののひとつが、ドルトムントでワールドファイナルが開催されるRed Bull M.E.O. by ESLです」
「このイベントを通じて、コミュニティがどう反応するのか、世間が何を求めているのかをしっかりと確認したいと思います。そのあとで、プレイヤーやチーム、団体をサポートしていきたいですね」
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