ブレイキンは "自分のスタイルを見つけたいと思わせるダンス" だ。この特徴は、ブロンクスのブロックパーティで楽しまれていた頃からこのダンスに備わっていた。
カリブ系、アフリカ系、プエルトリコ系移民を含む数多のカルチャーが組み合わさることで生まれたブレイキンは、ブレイカーたちひとりひとりがそれぞれの出自を持ち込んでいくことで、基礎が作られていった。
ブレイキンが世界に広まっていった1980年代と1990年代は、若い世代のブレイカーたちが自分たちの伝統的・文化的ダンスをブレイキンに持ち込み、ユニークなスタイルを築き上げていくようになった。インターネットがまだ存在していなかったこの時代は、ブレイカーのスタイルを見れば、その出身が分かった。
ブレイキンイベント【Battle of the Year】の創設者Thomas Hergenrötherは次のように説明している。「今はそうでもないですが、以前はブレイカーを見れば、フランスのスタイルやドイツのスタイルだということがすぐに分かりました」
しかし、おそらくブレイキン黎明期で最も影響力があったスタイルと言えるのは、南アフリカとブラジルの伝統的なダンスを取り入れたブレイカーたちのものだった。
01
南アフリカ
南アフリカで20年以上B-Boyとして活躍しているVouksは、伝統的なダンスがどのような影響をローカルブレイカーたちに与えてきたかを間近で見てきた人物だ。また、彼は、伝統的なダンスの影響を受けたことで、南アフリカのブレイキンは非常にユニークなスタイルを備えることになったと続けている。
11種類の言語が話されている南アフリカは、非常に大きくて多様な音楽シーンを抱えている。Vouksは南アフリカ全土のブレイカーたちがそれぞれ独自のスタイルを持っていると説明する。
「南アフリカのブレイカーの大半は “パンツーラ / Pantsula” または “クワサクワサ / Kwassa Kwassa” のダンスを始めたあとブレイキンを学んでいます。これらの伝統的なダンスをブレイキンと組み合わせているのです。南アフリカ出身のブレイカーたちは他のブレイカーたちと比較するととてもユニークですね」
政治的・文化的苦難の表現手段として発展したダンス “パンツーラ” を取り上げたRed Bull TVのドキュメンタリー『Explore Pantsula』をチェック(英語音声)!
12分
Explore Pantsula
Learn everything you need to know about the South African dance style Pantsula.
02
ブラジル
格闘技とダンスを組み合わせているブラジルのカポエイラも、ブレイキンシーンでは有名だ。こちらも苦しい生活を強いられていた人たちから生まれたアートフォームで、南アフリカの伝統的なダンスに似た歴史を持っている。
アフリカにルーツを持つと言われているカポエイラはブラジルの文化において重要な位置を占めており、ブレイキンが南米へ伝わったときにブラジルのB-BoyとB-Girlが自分たちのブレイキンスタイルに誇りとともに取り入れたのは当然だった。
カポエイラは、高さとダイナミクスで知られるTsunami All-Starsが世界を回り、ブラジルのブレイキンシーンを広めていく過程で知られていった。韓国の【R16】や英国の【UK B-Boy Championships】のようなハイレベルなイベントに出場していたこのクルーのメンバーだったのがPelezinhoとNeguinだ。
Pelezinhoは【Red Bull BC One World Final】に初めて出場したブラジル人B-Boyだった。彼はブレイカーが自分の文化的アイデンティティをブレイキンに持ち込むことは非常に重要だと考えている。ブラジル人である彼は、カポエイラをブレイキンに持ち込むことに誇りを感じている。
「ブレイキンは米国発祥ですが、僕はダンスを通じて自分の文化的遺産を世界に示すべきだと思っています。そして、僕にとってはカポエイラがそれに相当しています。僕の血に流れているんです!」
Neguinもカポエイラを融合させたスタイルが世界的に知られている。Red Bull BC One All Starsのメンバーで2010年のRed Bull BC Oneワールドチャンピオンである彼のブレイキンへのアプローチは、ブラジルでは “ジンガ” と呼ばれている。ジンガとは、ブラジル人たちが自分たちのカルチャーを生活に持ち込む “方法” を意味する。
Neguinは「ジンガは自分のすべてにおけるアプローチです。自分のフレーバー、キャラクター、カリスマ性によって難しいことを簡単に見せようとしています」と語っている。
2分
Red Bull BC One:Neguin ベストムーブ集
03
インターネット
当然ながら、インターネットの爆発的普及によって動画へのアクセスが可能になり、ブレイカーたちは世界のあらゆるところからムーブを入手できるようになった。BBOY WORLDからYouTubeに溢れかえるセルフクリップまで、ブレイカーたちは突如として、出身関係なく自分の好きなダンサーのムーブを真似できるようになったのだ。
また、ブレイクスルーを狙っているブレイカーたちがイベントで大きな成功を収めているブレイカーたちのスタイルを真似するようにもなった。
Da Funky StylesのNadiaは「最近はB-BoyとB-Girlの多くがとても似ています。私の時代は、ブレイカーひとりひとりに個性がありましたね」と語っている。
Red Bull BC One All-StarsのメンバーJuniorは「以前は国ごとにスタイルがあり、フランス人はキャラクターとクレイジーなムーブに力を入れていました。ですが、そのあと、米国のOGたちのブレイキンをチェックできるようになると、フランス人は別の方向へ力を入れるようになったのです」
Red Bull BC One Battle-X フランス
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近年のトレンド
最近のブレイカーの大半は、世界中のB-BoyやB-Girl、自分たちの好きなクルーにインスパイアされながら多くのスタイルを組み合わせている。
トップブレイカーたちが定期的に世界を巡ってキャンプやワークショップでテクニックを教えたり、インターネットでレッスンを開いたりしており、伝統的なダンスをベースにしている地域性の強いブレイカーをトップレベルのブレイキンイベントで見かける機会は少なくなっている。
また、最近のイベントで成功を収めようとしているB-BoyとB-Girlは、イベントで通用し、自分たちを有名にできるスタイルを選んでいる。
Red Bull BC One All-Starsのメンバーで、Red Bull BC Oneワールドチャンピオンに3回輝いている唯一のブレイカーB-Boy Mennoは、インターナショナルシーン屈指の個性的なスタイルを備えている。
本人はこのスタイルについて、幼い頃にチェックしていたB-Boy Lego、Skill Methodzクルー、Havikoroクルーのような米国人ブレイカーたちと、そのあとのイタリア出身のB-Boy Mourizio、ドイツ出身のSwift Rock、フランス出身のKarim Baroucheからの影響によって生まれたものだとしており、次のように説明している。
「僕はニュースクールから大きな影響を受けていますが、オールドスクールなB-Boyからの影響を少し加えてきました」
Mennoが世界中のブレイカーからインスピレーションを得たスタイルを生み出して世界的な成功を収めていることは、多くの若手ブレイカーたちが海外にインスピレーションを求め、それらを組み合わせながら勝利の方程式を見出そうとしている近年のトレンドの裏付けと言える。
【Red Bull BC One World Final 2019】に参加したレジェンドB-Boy Poe Oneは、イベント終了後にMennoのスタイルを「アルゴリズム」と称していた。
5分
Kazuki Rock vs. Menno
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それでもオリジナルはブロンクス
国、都市、地域関係なく、すべてのブレイカーに共通していることがある。それは、ブレイキンがブロンクスで生まれた文化的背景を持つダンスであるという認識とオリジナルへのリスペクトだ。
その上で、これから先も世界中のB-BoyとB-Girlは、自分たちらしいフレーバーをブレイキンに持ち込もうとするだろう。自国の伝統的なダンスをムーブに取り入れたり、自分の憧れのブレイカーの真似をしたりしながら、彼らは他とは違う存在になれるスタイルを手に入れようとするはずだ。
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Information
世界最高峰の1 on 1ブレイキン・ダンスバトル・トーナメント『Red Bull BC One』の日本大会『Red Bull BC One Cypher Japan』が開催!
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