Bruce Ykanji and the Red Bull BC One All Stars
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ダンス

Bruce YKANJI:Juste Deboutを作った男

世界的に有名なスタンディング・ダンススタイルイベントのオーガナイザーが、根底にある考えや進化の歴史を語ってくれた。
Written by FraGue Moser-Kindler
読み終わるまで:6分公開日:
Juste Deboutは、ヒップホップ、ポッピング、ロッキング、ハウスのような、スタンディング・ダンススタイルのイベントとしては世界最大級として知られており、2019年も3月3日にパリのAccorHotels Arenaで開催され、大きな盛り上がりを見せた。
今回は、日本でも予選が開催されているこのグローバルイベントの創設者、Bruce YKANJI(YKANJIはクルー名)をキャッチして、始めた経緯などについて語ってもらった。
− Juste Deboutを立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょう?
スタンディング・ダンススタイルのダンサーたちが自分たちのスタイルを思う存分披露できるイベントを作りたいという思いから立ち上げた。
このイベントが成功した要因は、立ち上げた当時は複数のスタイルのダンサーたちが集まれるイベントがなかったからだ。僕たちが最初だったのさ。
また、周りが僕を信じてくれたというのも成功要因のひとつだね。僕がプロモーターである前にダンサーであることを全員が知っていた。だから僕の考えに理解を示して、僕を支えてくれたんだ。
− 第1回を数字で振り返ってもらえますか?
記念すべき第1回は2002年だ。パリの郊外で開催した。僕の出身地、シャン=シュル=マルヌ、ノワジー=シャン 77だね。
この時は、400人が参加した。2年目は800人を予想していたけれど、実際は1,200人が集まった。
この頃は、参加すべきかどうかをまだ迷っていて、観戦しているダンサーが多かった。だから、彼らに参加してもらうために、積極的に話しかける必要があった。そのような努力が今の姿に繋がっていった。Juste Deboutは、未来のために必要なイベントだった。
そして彼らは僕を信じてくれた。そのことを僕は一生忘れない。今も彼らの多くとJuste Debout Schoolで一緒に仕事をしているよ。
− 現在の規模について具体的に教えてもらえますか?
立ち上げ当初とは全く違う存在になった。プロフェッショナルなイベントだから、その分問題も増えたね。
ダンサーたちの露出が高まったことで、多くのダンサーがJuste Deboutで優勝するために1年を費やすようになっている。また、賞金も多くなったから、世界中からダンサーが集まるようになっている。
Juste Debout 2018のワンシーン
Juste Debout 2018のワンシーン
今は3ヶ月のツアーを組んでいて、平均5,000人が集まっている。あとは世界全体では年によって多少変わるけれど、約35,000~45,000人が参加している。ファイナルは16,000人が集まる。
− 立ち上げ当初から世界一のイベントにしたいと思っていたのでしょうか? それとも自然にそうなったのでしょうか?
最初は考えていなかった。ダンサーたちが集まる場所を作ろうとしていただけだ。今は僕が考えていたよりも遥かに大きなイベントになったけれど、自然に成長していった結果だ。
− イベントの継続は多くのオーガナイザーが頭を悩ませているテーマのひとつです。ここまで続けられた要因、毎年成長させることができている要因はどこにあると思いますか?
最も重要なのは、最終目標を常に意識しておくことだ。でも、多くの時間を注ぎながら、リアルタイムで対応していくことも重要になる。
今日について考えるべきで、上手く行っていた頃や気に入ってもらえていた頃に戻って考えてはいけない。
僕は今42歳だけれど、Juste Deboutを始めたのは25歳だった。もちろん、僕が当時のように考えることはできないし、若い世代は僕がアップデートできているとも思っていない。だから、常に受け容れて、対応していかなければならない。
− 運営チームは1年目から大所帯だったのでしょうか? それとも数年はほとんどあなたひとりだったのでしょうか? 今の規模についても教えてください。
大所帯ではなかった。とても小さなチームだった。今も運営チームは7人だ。Juste Debout Schoolには約50人が出入りしている。あとは他の企業から何人かヘルプが入っている。
昔よりも大きくなっているし、仕事量も増えているけれど、それだけ全員とちゃんとコミュニケーションを取るのが難しくなっている。2人に話すのと、70人に話すのとでは大違いだ。
− チームの士気をどうやって保っているのでしょうか? 人数が増えるほど、異なる意見が増えます。大きなチームをひとつの方向に向かわせるためには、優秀なリーダーが必要です。
実は、そこに関しては自分が成長する必要を感じている。僕はあまり良いマネージャーではないからね。でも、努力はしている。僕はストレートに言ってしまうタイプなんだけど、そこに取り組んでいるんだ。
− B-Boyのイベントとスタンディング・ダンススタイルのイベントのエナジーは大きく異なると思いますか? 異なるなら、その理由はどこにあると思いますか?
とても大きな違いがある。B-Boyのエナジーは良い意味でもっと激しくて、粗い。僕は個人の意見を言うべき立場ではないのかもしれないけれど、それでも言うとするなら、より本格的だと思う。
スタンディング・ダンススタイルは芸術性がより強い。深みがあるね。もちろん、激しさを感じる時も数多くあるけれど、B-Boyほど激しくはない。
スタンディング・ダンススタイルのダンサーたちは、もう少し大人しくて、もう少し控えめだ。世渡り上手というかね(笑)。正直な意見を言えば、もっと粗い感じがあっても良いね。
Flavourama 2016に出場したBruce YKANJI
Flavourama 2016に出場したBruce YKANJI
− Juste Deboutを止めようと思った時はありましたか? またその場合、その理由も教えてください。
あったよ。2009年だ。イベントが大きくなったタイミングだね。様々なトラブルが起きた。金銭面、ジェラシー、世間からの評価、時間的犠牲、友人、投資などのトラブルさ。
でも、僕が止めようと言うと、数人のダンサーがやってきた。彼らは涙を流していた。あの時のことは一生忘れない。
あの時に、Juste Deboutはもう僕のイベントではないということに気が付いた。僕のミッションをみんなで実現しているイベントなんだってね。
− エクスペリメンタルのカテゴリーがなくなりましたがその理由は? 多くの人が楽しみにしていたと思うのですが?
2005年にこのカテゴリーを立ち上げた理由は、もっと自由に、もっと型にはまらないダンスをダンサーたちに見せたいと思ったからだ。当時は、多くのダンサーが同じに見えていたからね。
でも、2016年にこのカテゴリーがひとつのフォーマットになってしまっていることに気が付いた。エクスペリメンタルダンサーの多くが同じアプローチ、同じダンスをしていると思った。これはオリジナルのアイディアに即していない。だから、止めることにしたんだ。
僕はビジネスマンである前にアーティストだ。好きなことをやる。やらなければならないという理由ではやらないよ。