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Casuals:ボンちゃん

金髪の日本人プレイヤー、ボンちゃんにプレイヤーとしてのブランド力、スポンサーシップ、Red Bull Kumiteなどについて聞いた。
Written by Michael Martin公開日:
勝利にガッツポーズをするボンちゃん
勝利にガッツポーズをするボンちゃん
ボンちゃんこと高橋正人は遠くからでもすぐに分かる金髪と痩躯が特徴的なプレイヤーだが、そのイメージは本人が意図的に作り上げたものだろう。彼は日本でサガット使いのトッププレイヤーとして知られており、その感情溢れる力強いプレイで人気を誇っている。しかし、他の多くの同世代の『ストリートファイター』プレイヤーと同様、ボンちゃんも自分より前の世代のプレイヤーたちからの影響を受けながら、今の地位まで登り詰めてきた。現在28歳の彼は短期間で数多くの結果を残しているが、それでもなお決定的なブレイクスルーのチャンスを虎視眈々と狙っている。
ストリートファイターキャリアを始めたころのボンちゃん
ストリートファイターキャリアを始めたころのボンちゃん
不健康なライフスタイル
ボンちゃんが『ストリートファイター』のプレイを始めたのは今から6年前だが、それから大がかりな自己改造を経て、今や世界屈指のトッププレイヤーのひとりにまで成長した。2012年のボンちゃんの映像や画像を見れば、今の彼とはまったく異なるルックスだったことが分かる。当時の彼は今よりも恰幅が良くハードスケジュールな『ストリートファイター』シーンで成功を収めるには困難な生活を送っていた。ボンちゃんは長期日程の大会を勝ち抜くスタミナをつける為に体を鍛える必要があったが、本人のブランド力を高めるためにも、まず自分自身のイメージをも変える必要があった。ボンちゃん本人は、自分がプレイヤーとして進化できたのは、友人であり師であるときどとウメハラのお陰だと感謝している。
「海外の大会に出た時に、鍛える前は疲労感がすごくて。朝から参加して、当時は器用じゃなくて仮眠も取れなかったのでそれで体力がもたなくて、後半は本当に疲れて眠くなってしまいました。それで身体を鍛えた方が良いんじゃないか、と思い始めてからはジムに行くようになりました。」
当時のウメハラとボンちゃん
当時のウメハラとボンちゃん
生まれ変わったボンちゃん
そしてEVO 2012終了後、ボンちゃんは減量トレーニングをスタートさせる。そして1年もかからずに、彼の体は以前の半分の大きさに見えるまで絞り込まれた。この減量と健康志向はときどの影響だと本人は振り返る。
「近いところでときどさんがそういった考えを持ってやっているので、それは当然感化されました。」
それと比べるとウメハラからの影響は地味なものかもしれない。長年プロプレイヤーとして活動してきたウメハラは、ボンちゃんをはじめとする多くのプレイヤーにプロプレイヤーとしての道を示してきた。ウメハラはeSports界において自らのブランドを確立することに成功しており、ボンちゃんはこの部分でもウメハラに続きたいとしている。
「この業界においてウメハラさんは僕にとって先生みたいな感覚なんです。答えをいつも用意してくれているに近くて。困った時になるべく自分で解決させようとは思うんですが、本当に困った時に頼れるのはやっぱりあの人ですね。」
イベントを楽しむウメハラとボンちゃん
イベントを楽しむウメハラとボンちゃん
最高のパートナー探し
ボンちゃんは自分の周囲にいる友人達を本当にリスペクトしている。それは本人と話をすれば明確に感じられることだ。そして、どのように自分をアピールすれば良いかをキャリアを通じて学んできたときどやウメハラも、ボンちゃんに同じ道を辿ってもらうための手助けを惜しまなかった。
イメージ作りは重要な要素だった。そこでボンちゃんはプレイに加え、自身のイメージ改造にも取り組んできた。近年の彼の戦績を振り返れば、何故彼にスポンサーがついていないのかと不思議に思う人もいるだろうが、その答えは簡単だ。彼はまだ自分に合うスポンサーを見つけていないのだ。しかし、その理由はそこまでシンプルなものではない。
「もちろん、スポンサードされたいと思っています。でも正直に言えば、自分が納得できるオファーが来てないから、というのが一番の理由です」
ボンちゃんはプロプレイヤーという職業に誇りを持ちながら、自分を成長させるべく長期に渡る努力を重ねてきた。よって、オファーを届けてくれる相手が本人の求める水準に達しているかどうかが、ボンちゃんにとっては非常に重要な判断材料になっている。
「自分の中でプロになるっていう時にちゃんと胸を張ってプロって言いたい。チームに加わったりスポンサーがつくんだったら、一緒に戦っていくという思想を持ってくれているところが良いと思うんです。」
「そういったアプローチをされたことは今まで無いので、その場だけの付き合いになってしまうのかと思ってしまいます。スポンサーがついたとしたら、その会社がどんな会社なのかという事も理解したいのですが、現状だとあまり理解できないところが多くて。」
EVO 2014ではLuffyと対戦した
EVO 2014ではLuffyと対戦した
シルバーコレクター
多くの格闘ゲームプレイヤーにとって、どんな形でもスポンサーがつくことは嬉しい。そしてそれが一流とその他を分けることになる。スポンサーがつくことで彼らは「プロ」として大会やイベントに参加できるからだ。よって、ボンちゃんも自分に見合ったビジネスチャンスを待ちながら、世界各地を転戦し、メジャートーナメントで上位に食い込む努力を重ねている。たとえ、その「上位」が、今年3月の Red Bull Kumiteでときどが大胆に指摘したような「2位ばかり」であっても、ボンちゃんの歩みが止まることはない。
Red Bull Kumiteのボンちゃん戦を前にしたときどは、「ボンちゃんは多くの大会で2位を取っている。彼が優勝を渇望していることは知っています。ですが、残念なことに対戦相手はこの僕ですよ」とコメントを残した。
このような振る舞いは普段のときどとは異なるものだったが、「マーダーフェイス」で知られる彼はそこで止まらなかった。
「“If he uses Ryu, I’ll body him! If he uses Sagat, I’ll body him!” (彼がリュウで来てもサガットで来ても、潰しますよ!)」
この時のボンちゃんはときどの仕掛けたトラッシュトークに無言を貫き、ときどの指摘に同意を示した。あれから数ヶ月後が経過した今、ボンちゃんは一連の流れを笑いながら振り返ったが、それでもときどの指摘には反論しなかった。
「(ときどの指摘は)事実です。2014年は2位ばかりでしたからね。でも、(Red Bull Kumiteでのときどの煽りは)嫌な気持ちはしなかったし、会場が盛り上がってたから僕としてはむしろ“良い事をしてくれたな”、という感じでした。」
「ただあの時(グランドファイナル)は、不利な状況でしたから、“このやろう、有利な状況を良い事にいいやがって”、というのは少しありましたけどね(笑)」
大きな目標
結局、ルーザーズを勝ち上がってグランドファイナルでときどと対戦したボンちゃんは、3-1でリセットをかけると、その後も3-1で連勝して優勝した。この優勝は自分の自信を深めたいと思っていたボンちゃんにとって必要なものだった。改めて、ときどの一連のトラッシュトークがジョークだったのか本気だったのかを訊ねると、ボンちゃんは笑って次のように答えた。
「半々じゃないですかね」
Red Bull Kumiteの優勝は、その後も続く数々のトーナメントを戦い抜くための自信をボンちゃんに与えた。残念ながらRed Bull KumiteはCapcom Pro Tourではなかった上、今年のEVOでは初日で 敗退してしまった彼は今もポイントを重ねながら年末のCapcom Cup出場権獲得を目指している。
「昨年の発表を受けて、今年はCapcom Cup出場がゴールにならざるを得なかったです。僕にとってはEVOよりもCapcom Cupに出場する事の方が全然重要です。」
Red Bull Kumite 2015チャンピオンとなったボンちゃん
Red Bull Kumite 2015チャンピオンとなったボンちゃん
サガットキング
インタビューを受けるボンちゃんからは、彼が慎重に自分のキャリアパスを組み立てていることが理解できた。彼は大会とビジネスの両面でどんなプロプレイヤーになりたいのかについて明確なヴィジョンを持っている。また、必要な時にアドバイスを求められる先人たちも周りにいる。しかしボンちゃんは、ときどにトラッシュトークを仕掛けられても、 CEO 2015でKevin “Dieminion” Landonにプロレスのような派手な入場をされても、「楽しむこと」に主眼を置いており、ファンは彼のそういった性格とプレイを支持している。そして、健康を取り戻した彼は、自分が世界最強のサガット使いだということに対し絶対的な自信を持っている。今回、筆者は改めて自信のほどを訊ねたが、彼は満面の笑みで「当然でしょ。」と答えた。