Ayrton Senna
© NorioKoike©ASE
Formula Racing

アイルトン・セナが、最後に残した『最速記録』に挑む。《スーパーフォーミュラ》

25年間誰も破れなかったセナの最速タイムの更新にも期待が掛かる、スーパーフォーミュラ第6戦岡山をRed Bull TVにてライブ配信。
Written by Daisuke Irie
読み終わるまで:5分Published on
日本最古のコースレコードをご存知だろうか。(※FIA・JA公認国際サーキット内)
今から25年前の1994年、TIサーキット英田(現:岡山国際サーキット)で開催された、1994年F1グランプリ第2戦パシフィックGP。ウィリアムズ・ルノー FW16を駆ったアイルトン・セナが予選で記録した1分10秒218は、今も破られることなくコースレコードとして刻まれ続けている。

たった2回のみで終わったパシフィックGP

現在、日本におけるF1グランプリ開催は、鈴鹿サーキットのみとなっている。しかし、25年前、バブル景気とホンダの活躍によるF1ブームの風に乗り、TIサーキット英田において、日本での2戦目のF1開催が実現した。
1周3.703kmのコンパクトな岡山は、ドライバーにとってもテクニカルでチャレンジングなコースであると同時に、現在の基準ではありえないほど近くでF1マシンを堪能できるサーキットだった。当時、シャトルバスでサーキットへと向かったF1ファンも少なくないはずだ。
初開催の1994年に続き、1995年もカレンダー入りを果たしたパシフィックGPだったが、阪神淡路大震災の影響もあり当初の4月から10月に開催時期を変更。しかし、この2回をもって、F1開催継続を断念することになった。

25年間破られることなかったセナのタイム

1994年4月15日金曜日、パシフィックGP予選初日。アイルトン・セナは1分10秒218を叩き出し、2番手につけたベネトンのミハエル・シューマッハに0秒222差をつけて暫定トップに立つ。翌、16日土曜日に行われた予選2日目は、コンディションが変わったこともありセナのタイムを上回ることなく、ポールポジションを獲得した。
Ayrton Senna

Ayrton Senna

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決勝は抜群のスタートを決めたシューマッハがセナを刺してトップに立つと、そのまま優勝。一方のセナは1コーナーでのアクシデントに巻き込まれて、リタイアに終わっている。このレースでシューマッハが記録したファステストラップ、1分14秒023もまた、決勝のコースレコードとして残っている。
2回目の開催となった、1995年シーズンはエンジン排気量が3.5リッターから3.0リッターに縮小されたこともあり、セナの予選タイムは破られず、さらに前述の通り岡山でのF1開催もこのシーズンが最後となった。
そして、最強のドライバー、最速のマシンによって記録された、1分10秒218は25年間破られることなく、伝説になったのである。

群雄割拠が続くスーパーフォーミュラ

時は流れて2019年9月28〜29日、岡山国際サーキットで行われる全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦。25年前にセナが我々に残した記録が、ついに塗り替えられる可能性がある。
その理由のひとつが、今年からスーパーフォーミュラに投入されたニューマシンだ。イタリアのレーシングディベロップメント、ダラーラによって開発された「SF19」は、前身である「SF14」からコンセプトやパーツをキャリーオーバーしながらも、空力特性が大幅に進化。また、外観としてはF1にも導入されたコックピット保護デバイス「Halo」が採用された。
テストの段階からポテンシャルアップが語られていた「SF19」だったが、その真価はタイムによって証明されている。第3戦スポーツランドSUGO、第5戦ツインリンクもてぎと、従来のベストラップを更新。「SF19」であれば、セナによって残された最古の記録の更新も……という訳である。
チーム無限 15号車

チーム無限 15号車

© Sho Tamura

そして、今シーズンのスーパーフォーミュラは、ドライバーのレベルも非常に高い。
ご存知、レッドブルアスリートして参戦し、前戦もてぎで遂に初優勝を果たした平川亮。昨年の王者で、鈴鹿でのF1フリー走行参加が噂されている山本尚貴。F1へのステップアップを狙い、送り込まれたルーカス・アウアーやパトリシオ・オワード。2度のポールポジションを獲得し、第4戦富士で優勝したアレックス・パロウ。
さらに中嶋一貴や小林可夢偉といった、F1参戦経験を持つベテランも控えている。ここまで5戦を終えて、すべて異なるウイナーが誕生しており、まさに「誰が勝つか分からない」、非常にレベルの高い群雄割拠の様相を呈しているのだ。

コースレコード1分10秒218への挑戦

しかし、“F1に最も近い”と言われるスーパーフォーミュラ、高いポテンシャルを持つ「SF19」をしても、セナが打ち立てたコースレコード1分10秒218を破るのは、厳しいと言わざるをえない。
これまでのスーパーフォーミュラのコースレコードは、2015年に石浦宏明が記録した1分12秒429。天候、コースコンディション、風向き、気温、様々な条件が揃っていたとしても、1周3.703kmのトラックで2秒というタイムを縮めるのは、並大抵のことではないのだ。
ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF19 20号車

ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF19 20号車

© Sho Tamura

それほどにセナが叩き出したタイムは偉大ということである。果たして、目の前を走るセナの影を、抜き去るドライバーは現れるのか。
Red Bull TVではスーパーフォーミュラ第6戦岡山の特別ライブ配信を実施する。特別ゲストコメンテイターは、セナのF1デビューにメカニックとして立ち会った、モータースポーツジャーナリストの津川哲夫氏が担当。
2019年シーズンのクライマックスに向けた重要な局面。そしてドライコンディションであればセナの記録塗り替えも期待される。
そんなトピックに満ちた注目の一戦を是非ともライブで目撃してほしい。
◆INFORMATION
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