Cloud9 White
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eスポーツ

【Cloud9 Whiteとは?】世界初女性限定ヴァロラントチームを知る

Red Bull Campus Clutchでも使用されている大人気タクティカルシューターの全米プロリーグ最上位カテゴリーを目指す女性限定チームが結成の経緯やジェンダー問題などについて語った。
Written by Christine Fennessy
公開日:
alexis、またはmeL(時として2人揃って)が英国訛りを真似て、笑えるイントネーションで「いただき!」と叫べば、Annieが「オッケー。13-10よ」と続き、katsumiが「やった! 今のは良かったね!」とさらに続く。
Jazzyk1nsは何も言わないかもしれない。しかし、それは彼女が静かな性格だからだ。
爆弾設置を目指すアタッカー5人とその解除を目指すディフェンダー5人に分かれて戦うキャラクターベースのタクティカルシューター『VALORANT / ヴァロラント』(以下、『VALORANT』)は大きな緊張を伴う展開になるときが多い。
このゲームは、1マッチが25ラウンドで構成されており、13ラウンドを先取したチームがマッチを制するが、各プレイヤーに与えられるライフは1ラウンドにつき1つで、リスポーンはできない
つまり、プロレベルで勝利を収めるためにはテクニックストラテジーコミュニケーションを高次元で組み合わせる必要があり、そのコミュニケーションにはリードされている時の緊張をほぐすムードメイクも含まれている。
Annie "Annie" Roberts(Cloud9 Whiteフレックス)
Annie "Annie" Roberts(Cloud9 Whiteフレックス)
「とにかく笑わそうとしています。私たちの仕事は非常にストレスフルなので」と、2020年に世界的なeスポーツオーガニゼーションのCloud9が結成した世界初の『VALORANT』女性限定チームCloud9 Whiteでフレックスを担当するAnnie "Annie" Robertsは話を始める。「2-10などかなり追い込まれたことも何回かあったのですが、笑わせることでそこから盛り返して勝利を収めることができました」
Cloud9 Whiteの仕事がストレスフルな理由は、彼女たちが自分たちの目標を一切妥協していないからだ。Robertsとチームメイト – Melanie "meL" Capone(インゲームリーダー / IGL)、Alexis "alexis" Gurarrasi(サポート)、Jasmine "Jazzyk1ns" Manankil(エントリーフラガー)、katsumi(コントローラー)− は『VALORANT』のティア1入りを目標に掲げている。
Melanie "meL" Capone(Cloud9 White インゲームリーダー)
Melanie "meL" Capone(Cloud9 White インゲームリーダー)
この大きな目標が彼女たちを引き合わせた理由のひとつだった。まず、トレーニングをしていない時間もストリーミングや他のチームの研究、自分のチームのプレイの復習、メモのまとめなど『VALORANT』関連に費やしている(本人は「もはや病気に近い」と語っている)自称 “『VALORANT』の学生” のCaponeが、FPSタイトル『CS:GO』のプレイを通じてGuarrasi、Manankilと出会った。
Guarrasiはホームスクーリングで育ったため、ゲーミングがほぼ唯一の「社会との接点」だった。そして、フレンドたちとの対戦で勝利の味を知った彼女は、すぐにゲーミングの世界に夢中になった。一方、Manankilは『CS:GO』の神童だった。「14歳で『CS:GO』のAdvanced史上最年少プレイヤーになりました。かなり上手かったんだと思います。セミプロレベルでしたね」とManankilは振り返っている。
Jasmine "Jazzyk1ns" Manankil(Cloud9 White エントリーフラガー)
Jasmine "Jazzyk1ns" Manankil(Cloud9 White エントリーフラガー)
そして2020年初頭、3人はほぼ同時に『VALRANT』へ転向。Caponeが仕切る形でチームとして女性限定トーナメントに出場するようになると、Manankilがベータ版から『VALORANT』をプレイしていたストリーマーのRobertsをCaponeに紹介した。次に、当時保険会社でインターンとして働いていたがすでに『VALORANT』のセカンドランクに到達していたkatsumiをCaponeが見つけて声を掛けた。
こうして揃った5人は2020年6月にMAJKLというチーム名で活動を本格的にスタートさせると、FTW Summer Showdown優勝など素晴らしいパフォーマンスを連発。これがCloud9の目に留まり、同オーガニゼーション初の女性限定チームとして契約を結んだ。
5人は同じものを求めていたためすぐに団結できた。また、5人揃ってトレーニング熱心だったのも団結をさらに強めることになった。彼女たちは午前3時まで12時間プレイし、ときには休日返上でプレイを重ねながら、トップに到達するために必要なことをすべてこなして成長していった。そして同時に彼女たちは親友同士となっていった。そのため、ジョークを飛ばし合うのはわけもなかった。
しかし、フィードバックを与え合うのは難しかった。
親友になるのと優秀なチームメイトになるのは大きく異なります」とkatsumiは説明する。「私たちには優秀なチームメイト同士になるための努力が必要になりました」
katsumi(Cloud9 White コントローラー)
katsumi(Cloud9 White コントローラー)
なぜなら、自分たちには大きな目標があったが経験は不足していたからだとCaponeが続ける。
フィードバックの与え方は、その対象となる人に合わせる必要があります。ひとつの方法で全員に対応することはできません」と彼女は語る。「以前は全員で集まってVOD(Video on Demand:録画した対戦動画)をチェックしたあとミスを指摘すれば、 “あら、でもあなたはここでこれをしているじゃない” と返されるので、 “ちょっと待って。別にあなたを責めているわけじゃないの。あなたがもっと上達するためなの” と説明する必要がありました」
幸運なことに、チーム全員がCloud9のコーチのおかげで無事上達した。現在は、チーム全員がそれぞれが嫌いなこととお互いを励ます方法を理解している。また、お互いの不調の日や不調の週を許し合えるようになっており、フラストレーションに飲み込まれない方法も理解している。何かがおかしい状況で声を掛け合う方法も知っている。最近の彼女たちは一心同体であり、もはやお互いの動きを読める。そして『VALORANT』から離れている間の彼女たちは第二の家族と呼び合える関係だ。
自分たちを排除しようとしているかのように見える – 女性限定eスポーツチームへの風当たりは特に強い – オンラインの世界で、このような関係は不可欠なセーフティネットだ。
「最大の問題は、周囲には多くのファンがいるのと同時にアンチ勢も多くいることです」とGuarrasiが語る。「私たちが負ければ、コミュニティは私たちを大したことない存在として扱います。 “女性だから負けて当然”“女性だから何も成し遂げられない”“女性はあれやこれができない” などと言われるのです」
alexis(Cloud9 White サポート)
alexis(Cloud9 White サポート)
トランスジェンダーである自分をオープンに語ることにプライドと責任を感じているRobertsにはさらに酷い言葉が浴びせられるときがある。そのため、チームは敗戦後にソーシャルメディアと接触することを避けており、その代わりにアンチが間違っていることを証明することに注力している。
「ハラスメントなんて日常茶飯事ですよ」とRobertsは語る。「ですので、自分がエナジーを与えたい人たちにエナジーを与えることだけにフォーカスしています。ですが、酷いアンチに対応して、彼らを懲らしめるのも悪くないと思っています。 “こういうことをするなんて、なんて哀れな人なのかしら。涙が出てくるわ。だって、あなたは私より遙か下にいるんですもの” などと返すのです」
Cloud9 Whiteは『VALORANT』のマップの内外でお互いを支える方法を見出しており、オンラインの悪人たちにめげることなく、ティア1を目指してさらにハングリーになっている。彼女たちは成功を決めるのはジェンダーではなくチャンスだということを証明しようとしており、その成功を手にした瞬間に連鎖反応が始まると信じている。
「Cloud9 Whiteや私のプレイを観て “私も同じくらい上手くなれる” と思ってくれる女性が出てくることを願っています」とGuarrasiは最後に語る。「“男性チームが相手でも勝てる” と思う女性たちの登場を願っているのです」
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