21世紀も今年で18年目。テクノロジーの進化によって様々な分野でロボット化が進み、“10年後、20年後に消えてなくなる職業”なんてワードが世間の話題になったりもする昨今。
ライター業のはしくれを営む筆者はというと、実はそこまで危機感を感じていなかった りする。理由は、いくら人工知能(AI)などというものが進化したところで、味のある蘊蓄に富んだ文章などは生み出せないだろう、とタカを括っているから。自分にそんな文章が書けているかどうかは別として…。
音楽こそ人間の創造力がもたらしてくれる“聖域”と思われていたが、さて…
AIには到底不可能なんじゃないの? と筆者が勝手に考えている行為、業種はもう一つある。AIの研究を行う英オックスフォード大准教授、マイケル・A ・オズボーン氏によれば、コンピューター化が難しい仕事特性のなかには、手先の器用さや芸術的な能力も含まれるのだそうだ。
そう、“手先の器用さ”“芸術的な能力”といえば、それは楽器を弾くこと、音楽家に他ならない。ライター業は置いとくとしても、音楽を創造する、演奏する、ということについては確実にコンピューター、ロボットには不可能だと考えられてきた(もちろんデジタルミュージックなどはそもそも人間がプログラミングしたデジタルデータなので演奏ではない。ここで言うのは作曲をする、楽器を弾くことそのものについてだ)。
少し前にAIが作り出した音楽、なんてのもあるにはあったが、創造性の面では難がありいまだ実験段階なのだそうで、少なくとも我々が存命の間は安泰だと、そう筆者などは思ってきたのだが…。
ついにこんな連中が登場してしまった…。
《楽器を弾く》というアナログ作業をデジタルテクノロジーで実現。本末転倒(?)のロボットバンド
そう、ロボットのバンドである。ドイツはベルリン出身のこの連中、なんと2012年に活動開始というもう5年ものキャリアのあるバンド:Compressorhead。
この5年の間、様々なロックフェスやイベントでライブを経験しているわ、メンバーのキャラクターもしっかり確立されているわ(公式HPに各メンバーのプロフィールが詳しく記載されている)、しかも昨年末にアルバムをリリースしたれっきとしたプロの(?)バンドなのである。
とはいえ、ロボット自体は見た目の当て振りだけで音源を流しているんじゃないの? といぶかしむ諸兄もおられるだろう。確かに作曲やプログラミングはもちろん人間が行っているし、ボーカルも人間が歌ったものを流しているのだが、その他のギター、ベース、ドラムはガチでロボット達が演奏しているのだ。
それがより分かりやすいのがこちらのライブ映像である。
楽器を弾く、というアナログな行為をわざわざ最新テクノロジーで生み出したロボット達に演奏させるという本末転倒っぷり。さらにそのロボット達が電子音楽ではなく、自らのことだと言わんばかりにコッテコテなヘヴィメタルの名曲「IRON MAN」を演奏するというちょっとした時代錯誤っぷりには皮肉が効いていて思わず笑いを誘ってしまうが、実際に彼らが楽器を演奏しているのが分かって頂けたかと思う。
特に冒頭のリフをかき鳴らすベーシストの指の動きなんぞなかなかの見物。ドラマーの動きはあのカリスマ、YO○○○KI氏と言わんばかりの激しさと格好良さ。唯一ギタリストだけがステージアクションはともかく指の動きが見えないので物足りないが、人間の指に似せたロボットの指では到底複雑なギタープレイは再現できないのはまあ致し方ない。
ロボットがグラミー賞を受賞するのは50年先? それとも100年先か!?
彼らはAIこそ積んではいないものの、MIDIシステムでコントロールされた現代のテクノロジーが詰まった最新鋭のロボット。冒頭でも触れた、人間の聖域たる音楽の分野ですらロボットが脅かすのではないか、という懸念を具現化した存在であるのはたぶん間違いではない。
間違いではないのだが、なぜか彼らを見ていると我々から音楽を奏でることを楽しむ行為を奪う先兵とはとても思えないのだ。コミカルな動きはもちろん、どこかレトロチックで一昔前のサイバーパンク的世界観を思い起こさせるそのヴィジュアルが微笑ましく感じるのはなぜだろう。
それは、結局のところ彼らは人間が生み出したものであり、かつ人間がコントロールできる範疇に留まっているからなのに他ならない。AIと言われる人工知能に恐怖感、不安感を感じてしまうのは、それらが人間の持つ人知、能力を超える可能性を持っているから。しかし彼らを眺めていると、少なくとも音楽の分野ではロボットやAIが人間を凌駕するのはまだまだ先、100年早いわ、と感じてしまうのである。
とはいえ彼らのライブはナゾに楽しそうに思ってしまう。きっと日本でライブをする時が来たら問答無用で会場に駆けつけてしまう気がしている。というかちょっとファンになってしまった。アルバム購入しようかな…。