クロスカントリー・マウンテンバイク(XC MTB)は、最も人気のある自転車競技のひとつだが、その理由は簡単に理解できる。まずは競技名を見てもらいたい。その名の通り、この競技は都市部の渋滞や様々な交通事情に振り回されることなく、"マウンテンバイク" で "カントリーサイド = 地方" の馬車道やトレイル、緊急車両用林道などを "クロス = 横断(縦断)" するのだ。
しかし、XC MTBはただの週末用レジャースポーツではない。1990年からプロスポーツ化しており、UCIマウンテンバイクワールドカップを頂点とするレーシングシーンが存在する。このシリーズでは、世界最速クラスのライダーたちが非常にテクニカルで要求度の高いレーストラックに挑んでいる。
今回は、XC MTBの魅力をパーフェクトに理解するために、2021シーズンの世界選手権女子エリートクラスで優勝したばかりのレッドブル・アスリート、イーヴィー・リチャーズに話を聞くことにした。
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クロスカントリーとはそもそも何なのか?
クロスカントリー・マウンテンバイク(XC MTB)は様々なオフロードを走るスポーツだ。緊急車両用林道からシングルトラックまでのあらゆる路面を走るのが基本だが、スキルとスピードを競い合いたい人のために競技としても楽しまれている。イーヴィー・リチャーズは次のように説明している。
「XC MTBで最も良く知られている競技は “クロスカントリー・オリンピック(XCO)” です。私はこの競技のエリートクラスに参戦しています。簡単に説明すると、設定済みのレーストラックを規定数周回したり、タイムを競い合ったりする競技です。距離をアレンジしてあるショートトラック(XCC)やマラソンレース(XCM)もあります」
「通常のレーストラックには、丘や下り、ジャンプやバーム(土を盛り上げて作るバンク)のようなテクニカルセクション、ロックガーデン(様々な岩が集中的に配置されている)が用意されています」
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クロスカントリーライドとトレイルライドの違い
クロスカントリーライドとトレイルライドは、ライディングするエリア、丘やジャンプなどの各種フィーチャーはほぼ同じだが、強度が異なる。クロスカントリーはトレイルライドよりもやや強度が低いと考えられている。
イーヴィーは「ですが、私のクロスカントリー用トレーニングには全力のオフロードヒルクライムや、ジャンプや不安定な地形でのスキルトレーニング、特定のループやセクションでのスピードトレーニングが含まれています」と説明している。
トレイルライドは、ヒルクライムやフラットセクションではクロスカントリーよりもむしろ強度はやや低い。しかし、ダウンヒルセクションではクロスカントリーよりも激しいライディングになりがちで、ジャンプやドロップのサイズも大きく、バームも高速用が用意されている場合が多い。
クロスカントリー用トレーニングには特定のループやセクションでのスピードトレーニングが含まれています
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XC MTBの始め方
エントリーレベルのマウンテンバイクの大半は、一般的なクロスカントリー用バイクのデザインが採用されている。つまり、そのようなバイクをすでに所有している人はすでに最初のハードルをクリアしていることになる。
レースを始めた頃はハードテイルに乗っていました
「私がレースを始めた頃は、ハードテイル(サスペンションがフロントのみに装着されている)に乗っていました。今乗っているバイクとは完全に異なりますが、大金を使うことなくマウンテンバイクの世界を知るのに最適なバイクでした」
バイクを手に入れたあとはレースだ。どの国でもXC MTBのレースは開催されている。イーヴィーは「世界中でローカルレースが開催されています。目と鼻の先で開催されていることに驚く人もいるでしょう」と続けている。
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XC MTBは誰でも楽しめるスポーツなのか?
XC MTBの最大の魅力のひとつが、アクセシビリティが非常に高いところだ。ダウンヒルや4X、エンデューロなどの他の競技とは異なり、クロスカントリーは求められるスキルレベルが低い。しかし、言うまでもなく、ただのライディングほど簡単ではない。リチャーズは次のようにアドバイスを送っている。
「レースデビューを飾る前に、オフロードライディングに慣れて、不安定な地形やシングルトラックのテクニカルセクションを快適に走れるようになりましょう。まだ快適に走れないなら、練習して慣れていきましょう。トレイルセンターに通うのも良いですし、近所のトレイルを走り込んでも良いでしょう」
オフロードライディングに慣れたからといって、いきなり他のライダーと同じレベルに挑戦する必要はない。大半のレーストラックにジャンプやロックガーデンなどのテクニカルなフィーチャーが用意されているが、同時にビギナー用レーストラックも用意されているはずだ。
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XC MTBレースに必要なもの
XC MTBレース参戦においてバイク以外の必需品はひとつしかない。ヘルメットだ。しかし、レースをより楽しいものにしてくれる(さらにはパフォーマンスが向上する)様々なアイテムが出回っている。
「レースではサイクルジャージとビブショーツを着用しています。また、正式なクリップレスシューズをレコメンドしたいですね。慣れるまでは少し時間がかかりますが、フラットペダルとスニーカーよりも効率の良いライディングができます」
このように説明するイーヴィーはプロライダーのため、様々なトラブルを解決してくれるメカニックがレースに帯同しているが、パンク修理に必要なツール(スペアのインナーチューブ、タイヤレバー、ミニポンプ、マルチツール)と栄養・水分補給用アイテムを携行することを推奨している。
「私は、レッドブル・エナジードリンクと水を半々で混ぜたウォーターボトルを携行しています。長時間のレースになりそうなら、エナジージェルのような即効性の高いアイテムも用意するべきでしょう」
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XC MTBのレースは安全なのか?
「プロレースはスピード全開に見えるかもしれませんが、お互いを確認しながら走っているので、実際は安全な環境です。また、ローカルレースはフレンドリーでウェルカムな雰囲気のものが多いので、自分の好きなペースで走れると思います」
また、XC MTBでは落車しても一般道を走っているよりも軽い怪我で済む確率が高い。不安定な地形や障害物などが備わっているため、オフロードライディングはオンロードライディングよりも平均スピードが低い。また、泥や芝で覆われているレーストラックは舗装路よりも柔らかい。
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XC MTB レースデビューまでの3ステップ
- バイクを入手する
- ローカルトレイルを走る
- レースやイベントを見つける
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