ワールドクラスのラリーストたちは起伏の多い地形や壮大なマラソンステージを戦いながら “空虚の地” ことサウジアラビアの砂漠地帯に挑んだばかりか、鉄砲水やゲリラ豪雨にも対処しなければならなかった。
【ダカール・ラリー2023】を振り返っていこう。
激戦のバイク部門
最大のドラマはバイク部門で確認できた。
まず、ディフェンディングチャンピオンのサム・サンダーランドがステージ1でのクラッシュで開幕直後にリタイアとなったが、チームメイトのダニエル・サンダースが怪我から復帰したばかりにもかかわらずGasGasの旗を受け継いだ。しかし、オーストラリア出身の人気ラリーストは胃腸炎に悩まされ、総合首位を米国人スカイラー・ハウスに明け渡してしまった。
4輪部門はアルアティヤが優勝
昨年にダカールデビューを飾ったアウディは、今年はタイトル候補まではいかずとも表彰台候補に含まれていた。そして、カルロス・サインツ、ステファン・ペテランセル、マティアス・エクストロームの経験とスキルを手にしていたアウディは序盤に予想通りの強さを発揮し、サインツがオープニングステージを制した。
しかし、そのあとのステージ6でサインツとペテランセルが揃ってリタイアとなり、RS Q e-tronのステアリングを握るのはエクストロームだけになってしまった。
対照的にナサール・アルアティヤは絶好調で、トヨタ・ハイラックスで序盤に素晴らしいタイムをいくつも記録してリードを築くと、フィニッシュまでそのリードを保って優勝した。カタール出身のレジェンドは4輪タイトル数でペテランセルに続く単独2位につけた他、ステージ優勝の通算回数を47まで伸ばし、アリ・バタネンが長年保有している最多記録50まであと少しに迫った。
Prodriveから参戦していたセバスチャン・ローブのタイトル獲得の夢はステージ2の3連続パンクで潰えたが、WRCを9回制しているレジェンドドライバーは諦めることなく走り続け、ダカール・ラリー新記録となる6連続ステージ優勝を記録して総合2位でフィニッシュした。
特筆すべきはルーキーブラジル人ドライバー、ルーカス・モラエスだろう。モラエスはベテランたちを相手に健闘し、見事3位表彰台を獲得した。
ライトウエイト部門はジョーンズが圧勝
ライトウエイト部門グループT3ではレッドブル・オフロード・ジュニアチームの米国人ドライバー、オースティン・ジョーンズが大活躍し、2連勝を記録した。
ダカール・ラリーを制するために必要な能力は速さだけではない。マシンをナビゲートしてフィニッシュラインまで運ぶ能力も必要になる。そして、この能力を遺憾なく発揮したのがジョーンズで、実に50分のリードを築くことに成功した。総合2位には同じく米国出身で自己ベストのパフォーマンスを披露したセス・キンテロが入った。
総合3位はグレゴワール・ド・メビウスの息子ギヨーム・ド・メビウスで、4位にはフランシスコ・ロペス、5位にはエクストリームEチャンピオンのクリスティーナ・グティエレスが続いた。また、ステージ5でミスを犯したあと盛り返してステージ優勝5回を記録したミッチ・ガスリーJr.にも触れておくべきだろう。
疲弊と疲労の2週間
【ダカール・ラリー 2023】はアル・ウラーからほど近い紅海沿いの海岸に設置されたシー・キャンプから335台がスタートしたが、2週間をかけて8,500kmを走行したあと、ダンマームのゴールラインを越えたのは235台だけだった。
バイクは121台中80台、クワッドバイクは18台中10台、グループT1とT2は67台中46台、ライトウエイト・プロトタイプは47台中38台、SSVは45台中39台、トラックは全22台が完走し、ダカール・クラシックでは88台中80台が完走した。
今年も壮大なレースとなり、いくつもの新記録が樹立されたダカール・ラリーの2024年を楽しみに待ちたい。
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