アイアンマン

ダニエラ・リフ:クラゲに刺されながらアイアンマン世界選手権4連覇を達成したトライアスリート

© Jesper Gronnemark/Red Bull Content Pool
メンタルとフィジカルの限界が問われる最も過酷なトライアスロンレースを奇跡の大逆転で制して偉業を成し遂げたスイス人女王の強さを学ぶ。
Written by Sam Bloomfield公開日:

ダニエラ・リフの “瞬間”

2014年にオリンピックスイス代表アスリートからアイアンマンに転向したダニエラ・リフは、アイアンマン世界選手権で活躍を続けている。
2015年に転向2年目で同イベントを制して世界王者になったリフは、2017年に3連覇を達成。そして迎えた2018年10月13日、スタートラインに立つ彼女には4連覇が掛かっていた
しかし、レースをさらに面白くしたいと考えたのか、母なる地球がリフの前に立ちはだかる。
スイムが始まる直前、リフはクラゲに刺されてしまったのだ。激しい痛みだったため、アスリートによってはスタートを諦めていたはずだが、リフは痛みを乗り越えてレース出場を決めた。
「刺された直後は痛みに耐えきれるかどうか分かりませんでした。ですが、家族、コーチ、ファンが楽しみにしていたのを知っていたので、棄権は選択肢ではありませんでした」
クラゲに刺されながらも逆転優勝したダニエラ・リフ
クラゲに刺されながらも逆転優勝したダニエラ・リフ

さらなる苦難

リフはメンタルの強度を限界まで高めてスイムを終えたが、乗り越えなければならないチャレンジはまだ残っていた。
スイムで毎回リフを脅かしてきた英国のルーシー・チャールズ=バークレーがこの日絶好調だったのだ。リフがバイクに辿り着いた時、スイム最速タイムを更新してバイクをスタートさせていたチャールズ=バークレーは9分先を快走していた。
シーズン最重要レースでこのような状況に置かれた時、トップアスリートはどのように対応しているのだろうか?
リフは「痛みが消えることを祈りながらバイクに繋ぐことしか考えていませんでした」と振り返っている。
彼女はこのレースで3連覇を成し遂げていた。しかし、さすがに4連覇は不可能だろうと、多くの人が思うようになっていた。

カムバック

4連覇を疑問視する声が大きくなっていく中、それでもリフは世界選手権3冠の実力を発揮する。バイクレグでメンタルとフィジカルのレベルをさらに高めると、アイアンマン史に残るカムバックを見せた。
チャールズ=バークレーを完全に上回るパワフルなライディングで全長180.25kmコースレコード4時間26分7秒で完走した彼女は、あっさりと9分差をひっくり返して1位でランをスタートさせた。
最悪のスタートでしたし、体調も悪かったので、あそこからひっくり返せるとは思ってもいませんでした
ダニエラ・リフ

4連覇

ランに入ったリフから4連覇の可能性が消えることはなかった。
非常に厳しい状況を乗り越えたという事実が、リフに確固たる信念を植え付け、リフはそのままランを3時間を切るタイムでフィニッシュ。これまでの世界記録を20分も上回る新世界記録8時間26分18秒を叩き出して4連覇を達成した。
「最悪のスタートでしたし、体調も悪かったので、あそこからひっくり返せるとは思ってもいませんでした。ゴールしたあとは思わず頭を振ってしまいました。自分が信じられませんでした」