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ストリーマーを文化に! プロゲーミングチームDeToNator代表・江尻勝氏が語る「9年越し」の想い

© Jason Halayko/Red Bull Content Pool
2020年10月16日、日本のプロゲーミングチームDeToNator(デトネーター)のメンバーたちが、レッドブル・アスリート(eスポーツ部門)の一員として新たに参画した。
Written by 山本雄太郎公開日:
DeToNator(デトネーター)は2009年9月に発足して以降、ファーストパーソン・シューター(以下、FPS)と呼ばれるゲームを中心に競技シーンで多数の実績を残し、国内で名実ともにナンバーワンの影響力を誇る選手たちを有するプロゲーミングチームだ。
2020年10月16日、そんなDeToNatorのメンバーたちが、レッドブル・アスリート(eスポーツ部門)の一員として新たに参画した。
Red Bull x DeToNator
Red Bull x DeToNator
なお、これまで国内のレッドブル・アスリート(eスポーツ部門)としては、ボンちゃん、ウメハラ、ガチくん、たぬかな、けんつめし、aMSaの6名をサポートしてきたが、今回(国内で)初めてプロゲーミングチームとパートナーシップを締結した。
この事実が果たしてどんな意味を持ち、これから何が巻き起ころうとしているのか。DeToNatorの代表を務める江尻勝氏に話を伺うと、「9年越しの思いがようやく実を結んだ」、「ストリーミングを文化に」……といった気になるワードがいくつも飛び出した。
DeToNator代表にして、チームの運営法人である株式会社GamingDの代表取締役を務める江尻勝氏。
DeToNator代表にして、チームの運営法人である株式会社GamingDの代表取締役を務める江尻勝氏。

◆身の丈にあったことを、地道に

"Red Bull x DeToNator"についての詳しい話をお伝えする前に、まずはDeToNatorのプロフィールを改めて紹介しておこう。
DeToNatorは2020年9月をもって設立から12年目に突入したプロゲーミングチームだ。現在は『PUBG MOBILE』部門、『Apex Legends』部門、『VALORANT』部門、そしてストリーマー部門の4部門にて精力的に活動を続けている。
『PUBG MOBILE』部門のメンバー。左から、SORA、imoNari、18。
『PUBG MOBILE』部門のメンバー。左から、SORA、imoNari、18。
『Apex Legends』部門のメンバー。左から、Mukai、LEIA、L8af。
『Apex Legends』部門のメンバー。左から、Mukai、LEIA、L8af。
『VALORANT』部門のメンバー。左から、CLZ、Brofeld、KLM、FifTy、Scarfaze。
『VALORANT』部門のメンバー。左から、CLZ、Brofeld、KLM、FifTy、Scarfaze。
そんなDeToNatorがアマチュアのクラン(※)であったころからチームを束ねてきた江尻氏は、これまでの足跡について以下のように語った。
(※) クラン……氏族、一族の意。転じて、オンラインゲームでは"チーム"とほぼ同義で用いられる。
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「僕は大学卒業後に美容師の道に進んだのですが、33歳のときにPCゲームと出会い自分のチームを持つまでにのめり込むようになりました。そこから3年後には選手として国内大会で優勝も経験させてもらいました。
それをきっかけに美容師を辞め、"自分たちのチーム(DeToNator)をビジネスにできればいいな"という思いで少しずつスタートし、現在に至ります。あくまで僕のなかではですが、チームのプロ化というのは発足当初からうっすらと夢見ていたことだったんですよね」(江尻)
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PC向けFPS『Alliance of Valiant Arms(以下、AVA)』では国内最強の名を欲しいままにし、2010年代に開催された大会での優勝数を数えるだけでも40以上という輝かしい戦果を積み重ねてきたDeToNator。
その後、徐々にパートナー企業を増やしプロチーム化。2016年には当時の日本のゲーミングチームとしてはほぼ前例のなかった海外(台湾)拠点を設けるなど、まさに国内eスポーツシーンを牽引してきたパイオニア的存在と言えるだろう。
『AVA』ではMaxJamの名で、選手としてDeToNatorを日本一に押し上げた江尻氏。現在はメンバーやファンから"ボス"と慕われる父親的存在に。
『AVA』ではMaxJamの名で、選手としてDeToNatorを日本一に押し上げた江尻氏。現在はメンバーやファンから"ボス"と慕われる父親的存在に。
しかしながら、江尻氏はそうした取り組みの数々を、あくまで高みを目指すためのプロセスで生じた結果であり、それ以上でもそれ以下でもないと捉えている。
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「当時から海外ではプロゲーミングチームがいくつも存在していましたので、自分たちもそれを目指したいという思いはつねにありました。
けれども、当時の日本の現状を鑑みたときに"すぐには無理だろうな"とも。そこで、少しずつ少しずつ自分たちの身の丈にあったやりかたを続けてきました。
DeToNatorのプロ化も、そうした地道な積み重ねの延長線上でたどり着いた結果なんです」(江尻)
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"自分たちの身の丈にあったことを、地道に続ける"――そんな江尻氏の信念は、今回の"Red Bull x DeToNator"が実現するまでの経緯にもありありと表れている。
なんと、江尻氏とレッドブルの"お付き合い"が始まったのは遡ること9年前。当時アマチュアチームだったDeToNatorがレッドブルのオフィスを訪問したことに端を発し、以降毎年"密"にコミュニケーションを取り続けてきたのだという。
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「我々とレッドブルさんとのお付き合いは、遡ること2011年9月。『AVA』のオフライン大会出場の際に、大阪オフィスにお邪魔させてもらったことがきっかけでした。
そこから毎年必ず活動報告のようなものをお伝えするようになり、ゲームシーンの盛り上がりとともに自分たちの状況も少しずつ変わっていき、我々が台湾拠点を作った際には、現地のレッドブルさんにサポートもしていただきました。
その後ストリーマー部門の第一世代としてStylishNoobやYamatoNが活動を始めた際には、東京オフィスで配信をさせていただいたり、2018年にはメンバーたちの配信場所にレッドブルさんのロゴ入り冷蔵庫を置かせていただけることになったり……。
そして2019年、いよいよ我々がどんなポテンシャルを持っていて、どんなことが実現できるのか、というのを具体的にお伝えできる段階になりました。そこからさらにいろいろをお話をさせていただき、ついに本年(2020年)、パートナーシップを締結することになりました。
まさに9年越しの思いです。僕個人としても並々ならぬ思いでしたし、そのときそのときで在籍していたメンバーたちも皆同じような強い想いを持っていて、それがタスキを渡すように受け継がれていったんですよね」(江尻)
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◆ゲーマーの人間性や情熱を浮き彫りにするストリーミングの魅力

江尻氏をはじめ、歴代在籍メンバーたちにも脈々と受け継がれてきた9年にわたる思いが、いま"Red Bull x DeToNator"として結実の時を迎えた。
レッドブルは、競技シーンにおけるDeToNator各部門の挑戦を全面的にサポートしていくのはもちろんのこと、"日本のストリーマーカルチャーに翼をさずける"ことにも注力していく。
そもそもストリーマーとは、平たく言えばゲームをしながらネット上でライブ配信(ストリーミング)を行うゲーマーのこと。DeToNatorのストリーマー部門では、配信1回あたりの平均視聴者数が1万人以上という絶大な人気を誇るStylishNoobをはじめ、錚々たるメンバーが日夜ライブ配信を実施している。
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「"ストリーマー"も、いわゆる"eスポーツ"といった言葉の成り立ちと同じで、最初は僕らも"我々はストリーマーである"と自らを定義して始めたようなものではないんです。
あくまで競技シーンを引退した選手がつぎに活躍するステップとして、生きる術を模索していくという中で始めたこと。そこで第一世代のメンバーを暫定的にストリーマーと呼ぶようにしたことが、後々いまになって定着したのです。
メンバーそれぞれが試行錯誤していった結果、徐々に皆さんから注目していただけるようになり、現在ではYouTubeの動画投稿者が"YouTuber"という職業として受け入れられるようになったように、"ストリーマー"もまた花形の職業として認知され始めるようになったのだと思います」(江尻)
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江尻氏が"人"を第一に想う運営方針を貫いてきた結果のひとつとして、国内で最も影響力のあるストリーマーたちを擁するDeToNatorの現在がある。
江尻氏が"人"を第一に想う運営方針を貫いてきた結果のひとつとして、国内で最も影響力のあるストリーマーたちを擁するDeToNatorの現在がある。
もともとは第一線で活躍した選手たちのセカンドキャリアを模索する中で始まった、いわば"ゲーム実況の生配信"をチームとしてサポートしていくという試み。
それがいまやストリーマーは、ゲームファン内外問わず人々を魅了する新たなエンターテインメントとして、さらには新たな"文化"として認知を広めつつある。
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「我々はこうしたストリーマーという仕事を、今後ひとつの文化――生きていける場所として昇華させていきたいと思っています。
僕は、動画配信とライブ配信というのは似ているようで決定的に異なるコンテンツだと考えています。ライブ配信には、そこで起こる生の感情、ならではのハプニング、緊張感などが凝縮されているんです。
だからこそ、編集した動画配信に比べて長時間化してしまうにもかかわらず、ひと時も目が離せないという気持ちになるし、それを期待して見に集まってくださる視聴者さんもいるわけですよね」(江尻)
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そうした潮流の中で、DeToNatorのストリーマー部門のメンバーたちが配信サイト上でトップクラスの人気を集めていることについて、「何か強みがあったり差別化を行っているというよりは、積み重ねによる部分が大きい」と語る江尻氏。
強いて言えば、「彼らの素の人間性や、ゲームに対する情熱が少しずつ多くの人に知れ渡ってきたという感覚」とのことだった。
それでは、視聴者たちを惹き付ける彼らの魅力とはいったい何なのか。江尻氏は、ストリーマー部門のメンバーたちそれぞれをこう分析する。
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「Stylishnoobは、とにかく言葉選びの部分がものすごく秀逸で、頭の回転も早く瞬発力もある。それと意外に涙もろい優しい男なので、彼の配信は笑いあり涙ありという雰囲気がありますよね。
また、SHAKAは一見クールに思えますが、非常に情熱家で周囲のこともしっかり見えている頼りがいのある男です。判断能力やバランス感覚も優れていますし……ただ、体だけはしっかりケアしてね、と(笑)。
SPYGEAに関しては、もともと現役のころから土壇場に強い選手だったこともあり、人前に出る仕事なども物怖じしない性格ですね。ああ見えて、意外とかわいいおちゃらけかたをするギャップも彼の魅力だと思います。
YamatoNは本当に超が付くほどストイックな男で、ひとつひとつのゲームに対するリスペクトや、集中力がものすごく高い。視聴者さんから"YamatoN先生"と慕われるだけあって初心者に対する解説も非常にうまいので、いろいろなゲームへの橋渡し役にもなってくれるかなと。
するがモンキーについては、本当に見た目通りというか(笑)。屈託のない笑顔と、純粋にゲームを楽しむ心が彼の持ち味だと思います。先の4人に比べるとまだストリーマーになって日も浅いので、自分なりのゲームとのベストな付き合いかたを今後しっかり掘り下げていってほしいです。
そしてAleluは、つい最近まで現役バリバリのプロゲーマーでしたので、そのプレイスキルは間違いないです。若いからこその勢いも大切ですが、ゲームプレイが"勝つため"から"楽しむ"ものに切り替わったこともあり、まずはゲームを思いっきり楽しんでほしいですね。ときに、若さゆえの焦りも出てくるとは思いますが、そこは地道に歩んでもらいつつ、我々としても精一杯サポートしてきたいです」(江尻)
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▼写真をクリックすると選手名が表示されます。
Stylishnoob、SHAKA、SPYGEA、YamatoN、するがモンキー、そして2020年9月からは新たにAleluを加え、6人体制となったDeToNatorストリーマー部門。
図らずも地道な活動を経てストリーマーという存在を国内に知らしめた彼らは、いち文化を芽吹かせた先駆者たる矜持を胸に、今後レッドブル・アスリートの一員として"裾野の拡大"にも取り組んでいく。

◆ストリーマーを文化に昇華させるための"起爆装置"として

果たして、江尻氏率いるDeToNatorが今後挑戦していきたい取り組みとは――。
その最たるひとつが、ストリーミング文化の裾野を広げていくこと。すなわち、新たな若き視聴者層のさらなる獲得や、若きストリーマーの発掘だ。
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「ストリーマーという存在をもっともっと認知してもらい、文化として定着させていくためには、やはり若い世代に向けて裾野を広げていくことが必要不可欠だと思います。
若い方により魅力的に感じてもらえるように、ストリーマーたちのことをさらに理解してもらえるような施策であったり、イベントであったりをレッドブルさんといっしょに企画している段階です」(江尻)
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"Red Bull x DeToNator"のコラボレーションによる、新たな挑戦がいま始まる。
"Red Bull x DeToNator"のコラボレーションによる、新たな挑戦がいま始まる。
先ほども触れたように、現在DeToNatorストリーマー部門のメンバーたちは競技シーンでの現役生活を終えた元選手たちで構成されている。
だが江尻氏に言わせれば、そうした彼らの経歴は「あくまでストリーマーになる方法のひとつのパターンに過ぎない」とのこと。
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「我々のストリーミング部門のメンバーのような経歴でストリーマーになるというのは、ストリーマーになろうとする中でのいちシチュエーションにしか過ぎません。
僕は、"プロ選手からストリーマーになりました"という人もいれば、"そうでない人"でも活躍できる場になってほしいと思うし、既存の流れや形に固執したくはないと思っています。
安易に"ストリーマーになろうよ"と誘うつもりはないのですが、まだ見ぬ新たな可能性という部分はつねに目を向けていたいですし、そうした自分たちのやりかたに賛同してもらえる方が日本にどれだけいるのかな、という部分を知るための試みだとも考えているんです」(江尻)
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つまり、もし「自分にはDeToNatorのストリーマーたちのような下地がないから」と怖気づいている若きストリーマー候補生がいるとすれば、それは大いなる誤解である。
――江尻氏はそんな前置きをしたうえで、さらにまだ見ぬ彼らへ向けて厳しくも温かいエールを送る。
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「これはストリーミングを新たに始めた現役選手たちなどにもよく言っていることなのですが、ストリーミングというのは一朝一夕でどうこうなる世界ではなくて、継続して積み重ねていくことが大事なんです。
だれでも最初は大きな数字(視聴者数)が欲しくなるものですが、その人その人でステップアップにかかるペースは違ってきますので、重要なのはいまある数字を大切にすること。
10人の視聴者がいるならば、いまいる10人を目一杯楽しませなさい、10人を楽しませられないのなら、その先の20人、30人はないよ、と。そうやって楽しませることができた10人が、そのストリーマーにとっては真の価値ある数字に繋がっていくわけですから」(江尻)
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インタビューの最後に、「周りを、日本をどうしたいではなく、我々のこうした動きが結果として何かのきっかけや新たなご縁に繋がれば」と意気込みを語った江尻氏。
今回の挑戦もストリーマー文化の発展、ひいてはそこに根ざしたストリーマーたちによりよい環境を作るための試みであり、すべてはシーンに携わる"人"へのリスペクトに端を発するものであることが窺えた。
そんな飾らない質実剛健な運営方針のもと、一念通天の想いでプレイヤーファーストの斬新な施策を次々と打ち出していく姿勢こそ、我々ゲームファンがDeToNatorというチームに心惹かれてしまう理由なのかもしれない。
そんな日本が世界に誇る"起爆装置"が、此度(こたび)ゲーミングシーンにどんな翼をさずけることになるのだろうか。
ぜひ、レッドブル・アスリートの一員となった、DeToNatorの今後の動向に注目してほしい。
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