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DJ HarveyがDJカルチャーにもたらした5つの変革

© Carlo Cruz/Red Bull Content Pool
Written by Manu Ekanayake公開日:
独自の方法論を貫き、唯一無二の存在となったDJ HarveyがDJカルチャーにもたらした変革を振り返ろう。
近い将来にHarvey BassettことDJ Harveyの人生をテーマに扱った書籍が書かれたとしても、もはや我々は決して驚かないだろう。ダンスミュージック界きってのディスコプレイボーイである彼は、あらゆる功績を成し遂げてきた。90年代中盤にはビッグクラブMinistry Of SoundでレジデントDJを務め、朝10時まで続くロングパーティを展開したかと思えば、コヴェントガーデンのMoistなどでより小規模で濃密なパーティを手がけ、その少し後にはクラブ不毛地帯と言われた当時のショーディッチでNew Hard Leftを開催した。
2014年ロサンゼルスでのDJ Harvey
2014年ロサンゼルスでのDJ Harvey
そして、9.11後にニューヨークへと渡った彼は、米国でも「あの伝説のDJ」という枕詞と共に名を馳せることとなる。彼はビザの問題から2002年から2012年にかけて米国国外へ渡航することが叶わなかったが、ビザ問題が解決した後はインターナショナルシーンへ復帰し、そのエディットやミックス、米国でほとんど寓話的に語られる彼の奇行と共にその評価は爆発的に拡大した。
きたる10月29日、Harveyは約20年ぶりとなるリーズでのプレイを披露する予定となっており、彼はLeon Vynehall、Job Jobse、Palms Traxらと共にDiscopolisのヘッドライナーを飾る(チケット購入はこちら)。20年ぶりの伝説のDJの帰還を祝し、彼がDJカルチャーというゲームを変えた5つのポイントについて振り返ってみよう。
1.DJは、クラウドを楽しませるための存在
DJとは自分のマニアックなレコードコレクションを自慢するためのものではない。Harveyは常にダンサーたちのために音楽をプレイしてきた。
「俺は、みんなが求める音楽をプレイするようにしている ― みんなに対して上から何かを押し付けるなんてことは俺の柄じゃない。『俺のサウンドを世界中に届けてやるぜ』なんて思わないね。俺はどこでプレイしようと、その場にいるみんなが求めるものをプレイする。俺がひとりのDJとして感じているのは、DJとはあくまでエンターテイナーであって、自分の目の前にいるクラウドの大多数をハッピーにさせることが仕事だってこと。たまに『Harvey、お前は自分の好きな音楽をプレイできてラッキーだよな』なんて言われることがあるけど、俺はこう答える。『いや、俺は君が望むものなら何でもプレイする。君は自分自身が望んでいる音楽がどんなものか分かっていないかも知れない。だが、俺は君が求めているであろう音楽を想像してプレイする。それを君は今聴いているのさ』ってね」
DJとはあくまでエンターテイナーであって、自分の目の前にいるクラウドの大多数をハッピーにさせることが仕事だ
DJ Harvey
2. 既存のジャンルにとらわれない
とはいえ、彼はこれまでいくつかのジャンルをリバイバルさせた功績もある。たとえば、彼が2001年に発表した『Sarcastic Study Masters Vol 2』はコズミックディスコを再活性化させた重要作として高く評価されている。
「もともと、『Sarcastic Study Masters Volume 2』というミックスはSarcasticが販売したTシャツに付属していたプロモーショナルCDだったんだ。あれは俺がエモーショナルな時期を過ごしていた頃に作られたもので、そうした感情があのミックスには込められている。単なる戯れで作ったものではない、心の琴線に触れるミックスさ。俺に言えるのは、あのミックスはThorens製のベルドドライブ・ターンテーブルとBozak製のミキサーを使ってテープに録音されたものだってことかな。DJ本来のアートフォームに戻ろうっていう意図さ。あのミックスに収められていた選曲や特定のテンポは、やがて自然な形でコズミックディスコを更新することになった。当時の俺は、5年先を行ってたんだ」
「俺はみんなが求めている音楽をプレイする」
「俺はみんなが求めている音楽をプレイする」
3. リエディットの世界に新たな命を吹き込む
元来、リエディットとはRon HardyやLarry Levanといったディスコレジェンドたちによって編み出された手法であり、既存の楽曲を引き延ばしてダンスフロアをじらし、よりミニマル的な絶頂へ導くために生まれたものだ。だが、90年代初頭にHarveyとGerry RooneyがBlack Cock Recordsを立ち上げた当時、リエディットという手法はほとんどの人々の記憶の彼方に忘れ去られていた。Black Cockは70年代のディスコのフレーバーを全面に押し出し、映画『ブギーナイツ』さながらの酩酊的なドラムロールやミニマルなギターリフをそのままに蘇らせた。Black Cockは生演奏を主体としており、そこにシンセなどの電子楽器はほとんど存在しなかった。そして、彼らが発表したリエディットはそうした生々しい演奏のグルーヴ感を主体にした原曲たちのインパクトを更に拡大してダンスフロアに提示してみせた。
「70年代から80年代にかけてのDJたちは、リエディットという作業も仕事のうちだったと思うし、当時のミックスの大半にはそうしたエディット手法が用いられている。だが、90年代初頭にはそういうアートはやや失われつつあった。当時の俺らはまだアナログテープでエディットしていたけど、そのあとはハードディスクを使ったエディットが可能になった。それが契機となって00年代初頭のエディットブーム再燃に繋がったんだろうな」
DJ HarveyによるRBMAレクチャーは以下の映像をチェック:
「スキルの低い連中は、リエディットはレコードを作る簡単な方法だと考えているが、俺は簡単な方法だとは思わないね。リエディットは原曲の良さをさらに引き出すことができる一方で、その良さを台無しにしてしまう可能性も秘めている。だからこそ、リエディットではシリアスな思考を巡らせる必要があるのさ。『これ良い曲だな、じゃあリエディットして自分のものにしちまおう』なんて簡単な話じゃない。原曲の良さを活かすも殺すもリエディット次第なのさ。原曲の扱い方を間違えれば、原曲のグルーヴや勢いが失われる」
Harveyはクラウドが望むものを与えるDJである
Harveyはクラウドが望むものを与えるDJである
4. 流行ではなく、自分のハートに正直に
「XOYOでレジデントを務めていた頃、俺がプレイしていたのは当時のロンドンでいうところのレアグルーヴだった。たとえば、James Brown『Give It Up Or Turnit A Loose』さ。今20代ぐらいのキッズは、こういう曲をクラブで聴いて踊ることはないはずさ。あいつらはエレクトロニック・ミュージックにすっかり耳が慣れちまっているから、 “オーガニックな” 音楽を聴くと、まあ、これは必ずしも流行に沿ったディスコである必要はないが、とにかく、生々しいパワーに溢れたファンクを聴くと、大いに心に響くのさ。ファンクは、今もなお強大なエナジーを秘めたダンスミュージックだ。ただ、ディスコやハウス、テクノじゃないってだけさ」
オールナイトのロングセットをすることで、たくさんのレコードをプレイすることができる。俺はたくさんのレコードを持ってるしさ!
DJ Harvey
5. ロングセットの伝統を現代に蘇らせる
かつてLarry LevanやDavid MancusoといったDJたちは一晩通してずっとひとりでプレイしていた。Harveyの復活は、こうしたロングセットスタイルの復権をシーンにもたらした。
「オールナイトのロングセットは、たくさんのレコードをプレイすることができる。俺はたくさんのレコードを持ってるしさ! だが、ロングセットの良いところはそれだけじゃない。より長い時間軸でストーリーを構築することができるし、たった90分かそこらのセットにすべてのヒットを詰め込む必要もない。一晩のストーリーを伝えながら、波の満ち引きのようにサウンドを抜き差しして、ウォームアップとピークタイムを作り出し、高い場所からの着地までをスムーズに繫げるんだ。まさしく一晩の “フライト” を演出するような感覚さ。ロングセットでは、ほとんどどんなことでも可能になるんだ」
10月29日、DJ HarveyはRBMA UKツアーの一環としてリーズのCanal Millsで開催されるDiscopolisのヘッドライナーを務める。チケット購入は こちら
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