The Dota Auto Chess Loading screen
© Drodo Studio
eスポーツ

開発側が明かす『Dota Auto Chess』の魅力と未来

突如としてリリースされ、今や全世界500万人以上がプレイする『Dota 2』の最新カスタムゲームの開発チームが、開発経緯や今後の展開について語った。
Written by Mike Stubbs
読み終わるまで:8分Published on
2019年1月初め、ホリデーシーズンを終えた西洋諸国が徐々に日常に戻ろうとしていたタイミングで、我々を含む『Dota 2』シーンのファンたちが『Dota Auto Chess』と呼ばれるカスタムゲームの話をするようになった。
我々がその実態を掴む前から中国で大人気を獲得していたこのカスタムゲームは、今や何万人ものプレイヤーがランキング上位を目指して常にバトルを繰り返している。そして、2019年3月現在『Dota 2』史上最高人気を誇るカスタムゲームとなっている。

オリジナル缶

レッドブル エナジードリンク

Red Bull Energy Drink
Team Secretのマネージャー、Matthew “Cyborgmatt” Baileyが2019年1月初めに『Dota Auto Chess』についてTwitterへ投稿したこと(下参照)がきっかけで、西洋諸国の多くの『Dota 2』ファンがこのカスタムゲームの存在を知ることになった。
この時点での『Dota Auto Chess』の同時接続プレイヤー数は10万人で、サブスクライブプレイヤー数も67万2,000人を超えていたが、この投稿がきっかけでその数字はさらに爆発的に増えることになった。
しかし、このような数字について、いくつかのメディアはバグなのではないかと疑問視していた。カスタムゲーム、特に今作のように突然姿を現したカスタムゲームで、ここまで高い数字を残せていた例は存在しなかったからだ。
しかし、それから数ヶ月が経過した今、『Dota Auto Chess』のサブスクライブプレイヤー数は500万人を超えており、同時接続プレイヤー数も、通常は『GTA V』や『レインボーシックスシージ』のようなメジャータイトルを上回っている。
『Dota Auto Chess』は、文句なしの成功を収めており、すでに世界的に有名なトーナメントオーガナイザーたちによってトーナメントが企画されている他、ストリーマーたちも多くの視聴者を引きつけているのだ。
しかし、このような大成功を収めているにも関わらず、『Dota Auto Chess』を開発したDrodo Studioのメンバー5人は、このカスタムゲームを開発した理由や、ここ最近で最も大きな成功を収めたゲームのひとつを生み出したあとの展開などについてほとんど語ってこなかった。
しかし、今回、その沈黙が破られた。
Drodo Studioのデベロッパーのひとり、Toto(本名は非公開)は次のように話を始める。
「年を重ねていくうちに、『Dota 2』をプレイするのが難しくなっていったんです。ですので、難しい操作を省いて、年配のプレイヤーでも『Dota』コミュニティに入れるゲームを作ろうという話になったんです」
これは、開発理由としてはかなり意外な回答だが、落ち着いて考えてみると納得できる。
『Dota 2』は、低レベルでも、スピーディに考え、スピーディに決断を下すことが求められ、1分間に何百回もボタンを押す必要がある。その難しさは異常ではないが、ストレスと疲労が溜まる時がある。
一方、『Dota Auto Chess』は、『Dota 2』のクールな特徴の多くを引き継ぎつつも、1分間にマウスを数回クリックするだけでプレイできるゲームだ。『Dota 2』のハイテンションなゲームプレイと比較すると、『Dota Auto Chess』のそれは、ビーチでのゴロ寝に等しい。
『Dota Auto Chess』がどんなゲームなのかをヴィジュアル抜きで説明するのは難しい(チェスほどシンプルなゲームではない)が、あえてしてみると、シンプルなステージでプレイヤー8人1on1で複数のラウンドをプレイするゲームだ。
プレイヤーはバトルで入手できるゴールドを使って新しいヒーローを購入したあと、マッチ開始前にそれを盤上に配置し、バトルがスタートしたあとは自分のヒーローたちが自動で対戦相手のヒーローと戦うのを見守る。
相手が強ければ、ヒーローの体力が徐々に減り、体力がゼロになった時点で敗戦となる。最後までヒーローが残っているプレイヤーが勝利を手にする。
このように、『Dota Auto Chess』のアイディア自体は比較的シンプルなのだが、『Dota 2』と同じで、高いスキルが求められる非常に複雑な要素が多数含まれている。
世界最強のプレイヤーたちは、ヒーローのパーフェクトコンビネーションを理解しており、各ラウンドで盤上のどこに誰を配置したら良いのかを正確に理解しているが、このゲームの面白さは、各ラウンドが始まれば、プレイヤーは何もできなくなるところにある。
プレイヤーはそれまでの準備がパーフェクトであることを祈ることしかできない。この特徴が、接戦で大きな緊張感を生み出すことになる。
高い緊張感が味わえる『Dota Auto Chess』

高い緊張感が味わえる『Dota Auto Chess』

© Drodo Studio/Valve/Red Bull

『Dota Auto Chess』は奥深いゲームのため、開発に大量の時間と労力が割かれたのは明らかだ。
『Dota 2』のカスタムゲームなので、当然ながらゲームエンジンやアートのアセットはすでに揃っており、自由に使えるようになっていたが、それらをまたひとつの別のゲームにまとめ、しかもランキングシステムやコスメティックアイテムなどが用意された完成品にほぼ近い状態に仕上げたのは、ひとつの大きな功績と言える。
Totoが話を続ける。
「5人で約2年をかけて開発しましたが、私たちが開発する3タイトル目でしたので、技術的にはそこまで難しくなかったですね」
「スタジオには5人しかいないので、スタンドアロンゲームを開発するのは難しいですが、『Dota 2』のカスタムゲームなら、モードやヒーロースキル、マーケティングなどを考える必要がありません」
2年間の開発期間の中で、彼らが『Dota Auto Chess』が成功しないのではないか、ただの時間の無駄になってしまうのではないかと不安に思った瞬間は確かにあったが、逆にここまで大きな成功を収めることをイメージできていたメンバーもいなかった。
500万人以上のプレイヤー数というのは異常と言える数字で、AAAシリーズでさえも容易には到達できない数字だ。
Totoがさらに続ける。
「この『Dota 2』のコミュニティ内では人気を獲得することは予想していましたが、今ほどの人気を獲得するとは予想していませんでした」
「このゲームは、私たちの情熱から生まれたので、正直に言えば、マーケティングや広告の予算はゼロです。ですので、今はこの成功を心の底から楽しんでいます。唯一の問題は、これまで以上にハードワークをしなければならなくなったことですね!」
今回の成功によって、開発チームは『Dota Auto Chess』を通じて収益を上げられるようになっている。ゲーム内に、キャラクターのルックスを変えるコスメティックアイテム(『Dota 2』にすでに用意されているスキン)をアンロックするのに使用できる通貨 “candy” が組み込まれているからだ。
しかし、本原稿執筆時点では、“candy” は外部オークションサイトでしか購入できない。
マイクロトランザクション機能を備えているカスタムゲームもあるが、『Dota Auto Chess』に関しては、大きな成功を収めているにも関わらず、大元のValveから、『Dota 2』クライアント内で “candy” を販売する許可が下りていないのだ。
開発チームは近日中にその許可が下りることに期待しているが、現時点で彼らができることはない。
すでに想像している人もいるはずだが、多くのプレイヤーを抱え、(ゲーム内通貨の売買には面倒なステップを踏むことが必要なものの)多少の利益も生み出している『Dota Auto Chess』シーンの周辺には、大手企業の姿が確認できるようになっている。
Valveが開発チームを本社に引き抜こうとしているという噂が流れている他、テンセントが『Dota Auto Chess』のクローン製品に興味があるかどうかについてユーザー対象の調査を行ったという報告もある。さらには、複数の中国企業が『Dota Auto Chess』の商標を獲得しようとしているという話もある。
しかし、開発チームはこのような噂や報告に一切振り回されていない。彼らは、大手企業が実際にアプローチしてきた時に取る態度をすでに決めている。
Totoは「正直『Dota Auto Chess』は売りません。大手と組む可能性はありますが、開発にはずっと関わっていきます」とコメントしている。
この回答は、彼らがValveに吸収される可能性は残している。実際、Valveは、MOD開発チームを引き抜いてValve社内で開発を続けさせた実績を持っている。ここで『Counter-Strike』や『Dota 2』が頭に思い浮かんだ人もいるはずだ。
しかし、いずれにせよ、開発チームには、このカスタムゲームを完全に手放す予定はなく、代わりに、スタンドアロン版の開発を含む今後の計画があることと、まだしばらく開発を続けていくことを明らかにしている。
『Dota Auto Chess』がただの一発屋ではないことはすでに証明されているが、今後も開発を続けていく予定の開発チームと、すでにトーナメントシーンを形成しているコミュニティがいることを踏まえると、今の人気が年単位で続く可能性は極めて高い。今後の動向に注目しよう。
Twitterアカウント@RedBullGamingJPFacebookページをフォローして、ビデオゲームやesportsの最新情報をゲットしよう!