2025シーズンのF1は、ルーキーシーズンを迎えた才能ある若手ドライバーたちが花盛りだ。アイザック・ハジャー、キミ・アントネッリ、オリバー・ベアマン、ガブリエル・ボルトレートが揃ってデビューし、さらにはジャック・ドゥーハンとフランコ・コラピントが同じシートを巡って争っている。
各F1チームは次世代の有望株を見つけ出すために、フィーダーシリーズを勝ち上がってくるヤングドライバーたちに目を光らせている。では、レーシングブルズでのF1デビューに向けてしのぎを削っているレッドブル・ジュニアチーム所属ドライバーたちを紹介しよう。
01
アービッド・リンドブラッド
- 生年月日:2007年8月8日
- 国籍:英国
- 所属チーム:カンポス・レーシング
- 参戦シリーズ:F2
F2歴代最年少優勝記録を誇るアービッド・リンドブラッドは、特別な才能の持ち主だ。弱冠17歳の英国 / スウェーデンの二重国籍を持つこのドライバーは過去数年のタイトルを総なめにしている。2021年にレッドブル・ジュニアチームに加わったリンドブラッドは、すでにレーシングブルズでF1テストドライブも経験している。
リンドブラッドは2024シーズンにF3デビュー戦で勝利すると、母国シルバーストンでは2連勝を記録して総合4位でフィニッシュした。F2でのルーキーシーズンに先立ち、フォーミュラ・リージョナル・オセアニア選手権でタイトルを獲得したリンドブラッドは、F2デビュー戦サウジアラビアGPも優勝した。リンドブラッドはレースクラフトの巧みさが特長で、タイヤを管理しながら自在に素晴らしいペースを発揮できる能力を備えている。
「下位カテゴリーを短期間で駆け上がってきたので、全然経験が足りません。F2は大きなステップアップですので、自分だけに集中して、スピードに慣れるよう努力しています」
「優勝争いや表彰台争いに絡むことが目標です。レッドブルは本当に素晴らしいサポートを提供してくれますし、カンポスもとても良いチームです。本当に素晴らしい人々が周囲にいて自分を助けてくれていますし、良い仕事ができる自信があります」
02
ぺぺ・マルティ
- 生年月日:2005年6月13日
- 国籍:スペイン
- 所属チーム:カンポス・レーシング
- 参戦シリーズ:F2
リンドブラッドよりレッドブル・ジュニアチーム在籍歴が1年長いぺぺ・マルティがレースキャリアを開始したのは比較的遅く、母親がカートを勧めたのがきっかけだった。
「初めての国際レースは13歳でした。ジュニアレベルではかなり遅い年齢でのデビューで、カート経験はほとんどありませんでした」
「かなり急速に学ぶ必要がありましたが、3年でリージョナルレベルのドライバーからワールドクラスのカートドライバーまで成長し、2019シーズンのカート世界選手権では予選2番手からスタートして4位でフィニッシュしました」
彼は失われた時間を十分以上に取り戻しており、フィーダーシリーズを勝ち抜くと、2024シーズン末のアブダビでのスプリントレースでF2初勝利を飾ると、今シーズンのバーレーンでのスプリントレースで2度目の優勝を手にした。ジェッダではわずかなミスでチームメイトに惜敗したが、スペイン出身のマルティは成熟度と安定性を示している。
03
オリバー・ゲーテ
- 生年月日:2004年10月14日
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:MPモータースポーツ
- 参戦シリーズ:F2
さらにパドックを進んでいくと、MPモータースポーツに所属し、ドイツ / デンマークの二重国籍を持つオリバー・ゲーテがいる。ゲーテのパフォーマンスが脚光を浴びたのは2022シーズンのユーロフォーミュラ・オープン選手権で、全戦をトップ3圏内でフィニッシュしたゲーテは、表彰台17回・11勝をマークした。
ウェットコンディションとなったシルバーストンでのフィーチャーレースで劇的なFIA F3初勝利を挙げたゲーテは、昨シーズンはカンポスに移籍するとイモラで注目に値する2連続表彰台を記録。現在、彼は初のF2フルシーズンを迎えている。
父ロアルドと兄ベンジャミンもレーシングドライバーで、2人は2022シーズンのドバイ24時間でクラス優勝を果たしている。尚、ご察しの通り、ゲーテは18世紀ドイツの詩人にして政治家・哲学者でもあったヨハン・ウォルフガング・ゲーテの末裔にあたる。かつてゲーテは「ひとつも間違いを犯さない人々がいる。なぜなら、価値のあることに挑戦することを望まないからだ」という言葉を残したが、これはチームガレージの壁に書き記すのに相応しいモチベーションをかき立てるメッセージだ。
04
ティム・トラムニッツ
- 生年月日:2004年11月16日
- 国籍:ドイツ
- 所属チーム:MPモータースポーツ
- 参戦シリーズ:F3
F3ルーキーシーズンでの成功を経て、ティム・トラムニッツはMPモータースポーツでチャンピオンを本気で狙っている。大半のドライバーと同様、このドイツ人ドライバーにとってもF3へのステップアップはチャレンジとなった。
開幕4戦で表彰台3回を記録して素晴らしいシーズンの立ち上がりを見せたものの、予選に向けた最善のセットアップを中々見出せず、ポイントの上乗せに苦戦した。しかし、結果的にこの努力は身を結び、モンツァで行われたシーズン最後のスプリントレースで勝利を収めた。
「表彰台の頂点に立つのは素晴らしい気分でした。チーム一丸となってレースを上手く管理できたのはとても良かったです。ルーキーシーズンで優勝できたので、かなり安心できました」
トラムニッツはキャリアの各ステージで好印象を残しており、2021シーズンのADAC F4およびイタリアF4選手権でそれぞれ総合2位に入ると、ステップアップしたフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権でも総合3位の成績を残している。
05
ニコラ・ツォロフ
- 生年月日:2006年12月21日
- 国籍:ブルガリア
- 所属チーム:カンポス・レーシング
- 参戦シリーズ:F3
カート界のスター、ニコラ・ツォロフは、2022シーズンにスペインF4でルーキーながら21戦13勝を挙げるという圧倒的なパフォーマンスを見せて、一躍注目を集める存在となった。ブルガリア出身のツォロフはすぐF3へ進級したが、これほどの才能を持つドライバーでもF3は大きなステップアップとなり、フォームを掴むのに苦戦した。
昨シーズン末、ツォロフはレッドブル・ジュニアチームに加入し、スペイン時代を共に過ごしたカンポスへ移籍すると、これが功を奏しバーレーンとモナコですぐさま勝利を挙げた。
「さらに多くの経験を積むチャンスがありますので、F3進級時と同じようなミスはもう犯しません」とツォロフは語り、さらに続ける。
「経験を積んで、チャンピオン争いに加わる必要があります。そのあと2026シーズンのF2を目指したいです。これが私にとって最良の道筋です」
では、フィーダーシリーズとはどのようなカテゴリーなのだろう? ヤングドライバーたちがF1デビューの資格を得るまでのルートを簡単に見ていこう。
06
F1を目指す道のり
世界のモータースポーツを統括する組織FIAは、カート界のトップドライバーたちをF1まで導く “グローバルパスウェイ” を定めた。このグローバルパスウェイでカートドライバーたちはレース経験を積み、チームと効果的に連携しながらシーズンを勝利し、上位カテゴリーに進むためのスポンサーを集める方法を学んでいく。
FIA F3選手権およびFIA F2選手権は、F1のサポートレースとして開催される国際シリーズだ。ここでドライバーたちはF1関係者やグローバルスポンサーたちの前でスキルを示し、たった20しかないF1シートのひとつの獲得を目指していく。
ほんの数人のドライバーはこれらのプロセスをスキップできる。最も印象的だったのは、6連勝をマークして1シーズンでF3を卒業し、そのままF1へ昇格したマックス・フェルスタッペンだろう。
ステージ
シリーズ
ステージ1:
F4
ステージ2:
フォーミュラ・リージョナル | 国内F3
ステージ3:
FIA F3選手権
ステージ4:
FIA F2選手権
07
スーパーライセンスとは?
FIAが発給するスーパーライセンスは、そのドライバーがF1に出走できるだけの経験を備えていることを証明するものだ。この資格を得るには、18歳以上のドライバーであり、過去3シーズンの特定の選手権で最低40ポイントのスーパーライセンスポイントを獲得している必要がある。
08
ステージ1:F4
F4はカート卒業後のオープンホイールレース最初のステージになるため、ドライバーがスキルを磨き、ともにキャリアを歩んでいくスポンサーを集めることができる国内 / リージョナルシリーズが数多く存在する。
そのようなF4シリーズの中でも最も注目を集めているのが、唯一の女性レーサー用国際オープンホイール選手権F1 Academyだ。F1 Academy はF1のレースウィークエンドに開催されており、女性ドライバーとチームスタッフに貴重な露出機会を提供している。
09
ステージ2:フォーミュラ・リージョナル | 国内F3
フォーミュラ・リージョナルは、アジア、北米大陸、ヨーロッパ、日本、中東、オセアニアで開催される選手権の集合体で、F4から国際F3へ進む足掛かりとして機能している。ドライバーたちは様々な国内F3シリーズへの同時参戦が可能なため、選択肢は無数にある。このステージで使用されるのは旧仕様のF3マシンで、高速だが車重が重いため強いフィジカルが求められる。
プッシュ・トゥ・パスなどの要素が加わっているため、レースはより複雑になっている。今シーズンにレッドブル・ジュニアチームは興味深い一歩を踏み出しており、レッドブル・ジュニアチームのドライバー3人全員(エンツォ・タルンヴァニッチクル、エルネスト・リベラ、ジュール・カランタ)が、スペインで新たに開催されるユーロカップ3シリーズに揃って参戦している。
このシリーズではスーパーライセンスポイントは獲得できないが、カンポス・レーシングとの提携で継続性は確保されている。
10
ステージ3:FIA F3選手権
F3唯一の国際選手権であるFIA F3はリージョナルF3からの大きなステップアップで、パワーとサイズが大きくて技術的に複雑なマシンとハイレベルなドライバーたちを擁している。ドライバーたちには、メカニックたちと協働しながら最善の空力セットアップを見出しながら、ピレリタイヤやDRSの活用方法を学ぶことが求められる。
F3では接戦となるレースが多いが、プラクティスに割ける周回は3〜4周しかないため、最初のセットアップをパーフェクトにまとめることが非常に重要だ。セットアップを間違ってしまえば、コース上で苦戦するだけではなく、F1関係者たちに失態を晒すことにもなる。
「FIA F3は、非常に競争力の高いドライバーたちと競い合いましたので、おそらく最も多くを学べたシーズンのひとつだったと思います」とトラムニッツは語る。
「DRSを駆使した競り合い、レースや予選でのタイヤマネージメント、レースクラフトなどはそれまで自分が慣れ親しんでいたものとは完全に異なっていました」
11
ステージ4:FIA F2選手権
F1直下のFIA F2では次世代ドライバーたちがトップの座を賭けて争うが、当然その競争は最も熾烈だ。
ドライバーたちはF1チームの首脳陣にアピールしながら、同世代のライバルたちに先んじてシートを確保するためにドライブしなければならない。ドライバーたちはF2でピットストップを習得し、レース戦略に新たな武器を加えることになる。FIA F2で成功すれば、F1シート獲得のチャンスが見えてくる。
12
レッドブル・ジュニアチームとは?
レッドブル・ジュニアチーム設立以来、レッドブル・レーシングとレーシング・ブルズの歴代ドライバーたちは2名を除く全員がレッドブル・ジュニアチームで腕を磨いてきた。また、グリッド上にはレッドブル・ジュニアチーム出身ドライバーたちが他にも数多く存在する。
レッドブル・ジュニアチーム設立以前、若手ドライバーへの組織的なサポートはほとんど存在しなかったが、レッドブル・ジュニアチームは若手ドライバーたちをカートからF1グリッドまで導く包括的なパッケージを構築した。
13
レッドブル・ジュニアチームのプログラム内容
レッドブル・レーシングのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコ博士がジュニアチームのスカウトシステムを統率しており、ドライバー育成はかつてレッドブル・レーシングでセバスチャン・ベッテルのレースエンジニアを務めた “ロッキー” ことギヨーム・ロケリンが監督している。
ジュニアドライバーたちはパーソナルトレーニング、栄養学、開発、専門家やプロフェッショナルによるメンターシップなど、一流のアスリートになるために必要なあらゆるガイダンスを受ける。
「トレーニングだけではありません。私たちのドライバーには宿題を出しています」と、冗談まじりに自らを “校長” と呼ぶロッキーは語る。
「モータースポーツの歴史、技術面、セットアップ、栄養学などについて誰が理解できているのか、私たちは判断することができます。オールラウンドなアスリートになるために学ぶべきトピックは多岐に渡ります」
「若いドライバーたちをシミュレーターに座らせれば、ラップタイムだけではなく、反応、セットアップへの理解、ラップごとに変化する感触など様々な数値を測定して、各ドライバーを評価できます」
ロッキー率いるチームは、ニコラ・ツォロフがレッドブル・ジュニアチーム加入前に陥ったような落とし穴にはまらないようにドライバーたちをサポートしている。2024シーズン、ツォロフとリンドブラッドはF4からF3へステップアップしたが、リンドブラッドが上位争いに加わりシーズン4勝を挙げたのに対し、ツォロフはシーズン3勝を挙げたがシーズン全体では苦戦した。
「アービッドは入念な準備をしていたので、それが大きな助けになったと思います。F3デビュー直後から活躍できるように彼は相当な準備を重ねていました。これまでの彼の努力のすべてが今の地位に役立っています」とツォロフは語る。
さらにこの点を強調するかのように、昨冬、リンドブラッドはフォーミュラ・リージョナル・オセアニア選手権参戦のためにニュージーランドへ派遣されたが、この選手権でタイトルを獲得すればスーパーライセンスを取得できるため、この派遣は賢明な判断となった。リンドブラッドは次のように語る。
「詳しい事情は分からないですが、“ニュージーランドへ行ってF1シーズン開幕前にスーパーライセンスを取得してもらいたい” と言われました」
14
レッドブル・ジュニアチームに加入する方法とは?
マルコ博士とロッキーが率いるレッドブル・ジュニアチームは、マックス・フェルスタッペン、セバスチャン・ベッテル、ダニエル・リカルドを含むレッドブル・レーシングで優勝経験を持つドライバーたちと同じ気質とスピードを備えたドライバーを探している。
レッドブル・ジュニアチーム所属ドライバーの大半には、レッドブル・ジュニアチーム加入を助けたマネージメントチームがついている。
リンドブラッドはフォーミュラEドライバーのオリバー・ローランドの愛弟子で、ツォロフはフェルナンド・アロンソが設立したA14がマネージメントを担当している。また、オリバー・ゲーテはフランコ・コラピントと同じマーネジメント会社が担当しており、ペペ・マルティはアロンソの元コーチ、ヘニス・マルコの指導を受けている。
昨年8月、レッドブル・ジュニアチームはドライバーサーチを開催し、13歳から16歳までのヤングドライバー11人をスペイン・ヘレスに集めてF4およびGP3マシンでテストを行った。
結果、エンツォ・タルンヴァニッチクル、エルネスト・リベラ、ジュール・カランタ(以上3名はユーロカップ3参戦中)、ニクラス・シャウフラー、フィン・マクラフリン、クリストファー・エルファガリ(以上3名はF4参戦中)の6名と、ロッコ・コロネルとスコット・キン・リンドブロム(ともにカート)がレッドブル・ジュニアチームに新加入した。
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