電動アシスト自転車のマウンテンバイク版《e-MTB》は一般的なMTBに乗っている人たちの間で議論を醸し出しています。ズルをしている、手抜きだと考える人たちがいれば、年齢や身体の問題でMTBを楽しむことができない人たちには有益だと捉えている人たちがいます。
《e-MTB》の電動アシストがヒルクライムに求められる身体エフォートを軽減するという事実を否定することは難しいですが、個人的な意見を言わせてもらえれば、《e-MTB》がライディングの大事な部分を省略することはありません。むしろ、《e-MTB》には多くのポジティブな側面があり、この新しい自転車のアドバンテージはチェックするだけの価値があると思っています。
私は、《e-MTB》を皆さんが持っている通常のマウンテンバイクの代替品としては捉えていません。ライディングを最大限楽しむためのもうひとつの方法として捉えています。そこで今回は、ライディングスキルの向上にも、時間を無駄にすることなくトレイルを楽しむのにも、仲間から引き離されず(そして疲労せずに)グループライドから無事帰宅するのにも役立つ《e-MTB》を最大限活用してもらうために、主なアドバンテージを以下に紹介します。
01
いつもとは違うアプローチでライディングに取り組める
《e-MTB》のライディングは皆さんが通常のマウンテンバイクに期待するものとは異なります。《e-MTB》は通常のMTBよりもかなり重量があるため、バイクへの入力方法を変える必要があります。ブレーキングやコーナーリングも《e-MTB》に合わせて変更する必要があります。
私は、《e-MTB》は正しいテクニックには正しく反応する一方、間違ったテクニックは厳しく罰するバイクだということに気が付きました。たとえば、コーナー進入前にブレーキングを終えて上手く進入できれば、ターン中にグリップが増して最大限のコーナーリングスピードを得ることができます。スリングショットに弾かれたパチンコ玉のような勢いのあるコーナーリングが楽しめるのです。
一方で、コーナー進入後もブレーキを操作していたり、進入に失敗したりすれば、《e-MTB》はコーナーの途中でライダーの言うことを聞かなくなり、挙動が不安定になります。《e-MTB》に間違ったテクニックを厳しく咎められれば、頭を抱えてしまうでしょう。
《e-MTB》のライディングは通常のMTBのライディングに大いに活かすことができます
《e-MTB》は、サスペンションも時間を費やして正しく調整すれば、相応の見返りが得られます。《e-MTB》は揺れすぎないように調整する必要がありますが、サスペンションの設定が緩すぎるとブレーキング時に前のめりになってしまいます。また、スピードが高くなるにつれ、かなりの重量を上手くコントロールする必要が高まります。ですので、時間をかけてサスペンションのサグとリバウンドを調整してみましょう。
結論から言えば、《e-MTB》のライディングは通常のMTBのライディングに大いに活かすことができます。コーナー時のグリップとラフな地形でのトラクションが高まるため、テクニカルなセクションでのハイスピードライディングを快適に楽しめるようになります。また、通常のMTBを敏捷で軽量に感じられるようになります。
02
フレッシュなルートを走れる
通常のMTBでのライディングは、ループを繰り返すか、なだらかな緊急車両用トレイルを使って頂上へ戻ってからシングルトラックでダウンヒルを楽しむかのいずれかになります。
《e-MTB》のライディングはそのようなライディングとは完全に異なるものになり得ます。ヒルクライムがダウンヒルと同じくらい楽しくてチャレンジングになるのです。モーターがペダリングをアシストしてくれるので、急峻でテクニカルなヒルクライムが難なくこなせるようになり、楽しみながらヒルクライムのスキルを身に付けられます。
モーターがペダリングをアシストしてくれるので、急峻でテクニカルなヒルクライムが難なくこなせるようになり、楽しみながらヒルクライムのスキルを身に付けられます
モーターサイクルのトライアルバイクと同じで、正しいモード・ギア・テクニックを組み合わせれば驚くほど簡単に難しい地形をクリアできます。このようなライディングができるようになれば、ライディングが新鮮に感じられるばかりか、最適なトラクションを見つけられるテクニックも身につくので、ヒルクライム中にフロントホイールが浮いてしまうトラブルを回避できるようになります。 がむしゃらにペダリングするのが常に正解ではないのです。
但し、テクニカルなヒルクライムセクションが楽しめるからといって、あらゆるダウンヒルトラックを闇雲に駆け登るのは避けてください。人気のダウンヒルトラックを《e-MTB》が駆け登ってくるのを見れば、そこを下ろうとしている誰もが不愉快に思ったり、恐怖を感じたりするはずです。常識をわきまえましょう。
03
同じラインを楽しく繰り返せるようになる
最高のテクニカルセクションなのにライディングセッションでたった1回しか通らないときがあります。素晴らしいセクションが含まれているループコースもありますが、急峻なヒルクライムをクリアしなければそこに辿り着けないときがありますし、ループゆえにあらかじめどこに何が位置しているのかが分かってしまうので、繰り返し走る価値がないと思いがちです。
《e-MTB》はこの問題を解決してくれます。突如として1回しか走ったことがないテクニカルセクションへのアクセスが向上し、そこを繰り返し走りたいと思うようになるのです。こうなれば、ライディング中の笑顔の回数が増え、さらにはテクニカルセクションでのテクニックとスキルを磨くこともできます。
トリッキーなコーナーは、走り込まれていないがゆえにそう評価されているときが少なくありません。走り込んで精査すれば、正しいラインが見えてくるはずです。トラックを学び、セクションを繰り返し走るのはテクニックとライディングの向上に最適です。
04
複数のモードを楽しめる
《e-MTB》購入直後は、アシストモードを “ターボ / TURBO” に設定してライディングを楽しむことになるでしょう。大きな笑みを顔に浮かべ、モーターサイクルのエンジン音を口まねしながら、あまりにも簡単にヒルクライムができてしまうことに驚くはずです(もしかしたら私だけなのかもしれませんが)。
ですが、《e-MTB》に慣れていくと、“ターボ / TURBO” モード以外にも様々なモードがあり、それぞれを組み合わせることでさらに多くの楽しみが得られることに気付けます。
まず、“トレイル / TRAIL” や “ツアー / TOUR” モードに切り替えれば、アシストが適度に抑えられ、ヒルクライムでそれなりに心拍数を高められるので、フィットネスを鍛えられます。また、非常に急峻なヒルクライムでは、“ターボ / TURBO” ではアシストが強すぎてリアホイールが空転してしまい、逆に苦しむ可能性がありますが、そのようなセクションでこのいずれかのモードに切り替えれば、リアホイールが正しいトラクションを得やすくなります。
《e-MTB》のモードはダウンヒルにも大きく関わってきます。たとえば、コーナー出口を低速に抑えなければならないタイトなダウンヒルトラックでは、バイクをひたすら前進させようとする “ターボ / TURBO” は理想的とは言えません。
《e-MTB》ではギアの選択もライディングに大きな影響を与えます。軽いギアでペダリングの回数を増やせば、バイクのパワーとアシストが大きくなります。ですので、通常のMTBのライディングと比較すると、より細かいバイクコントロールが必要になるでしょう(この問題はモデルによっては “e-MTBモード” で解決できます)。
そして最後が “エコ / ECO” モードです。軽視されがちなモードですが、バッテリーを持続させるだけではなく、通常のMTBに近い滑らかなライディングが楽しめるようになるので、ダウンヒル向きです。複数のモードを切り替えながら、《e-MTB》の特長を理解していきましょう。
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